以前の「財務相、中央銀行要人発言」の回でG7、G20の話に触れましたが、これら重要な国際会議は為替相場を動かす要因として注目する必要があります。また、相場を予想する上で会議の内容や、参加者の発言は参考になります。まずは、年間の重要な国際会議の日程を押さえておく必要があります。財務省のホームページでは、一年間の財務省関連の主要国際会議の日程が下表のとおり発表されています。金融・為替市場にとって重要な会議ということになります。

財務省関連 主要国際会議日程(平成27年1月~平成27年12月)

会議名 開催地
2月 9~10日 G20財務大臣・中央銀行総裁会議 イスタンブール
(トルコ)
3月 26~29日 第56回 IDB(米州開発銀行)年次総会 釜山(韓国)
4月 未定 G20財務大臣・中央銀行総裁会議 ワシントンD.C.
(アメリカ)
17~18日 第31回 国際通貨金融委員会(IMFC)
18日 第91回 世銀・IMF合同開発委員会
5月 未定 日中韓財務大臣・中央銀行総裁会議 バクー
(アゼルバイジャン)
3日 第18回 ASEAN+3財務大臣・中央銀行 総裁会議
4~5日 第48回 ADB(アジア開発銀行)年次総会
14~15日 第24回 EBRD(欧州復興開発銀行)年次総会 トビリシ(グルジア)
25~29日 第50回 AfDB(アフリカ開発銀行)年次総会 アビジャン
(コートジボワール)
27~29日 G7財務大臣・中央銀行総裁会議 ドレスデン(ドイツ)
6月 7~8日 G7エルマウ城・サミット エルマウ城(ドイツ)
9月 10~11日 第22回APEC財務大臣会合 セブ(フィリピン)
10月 9~11日 第70回世銀・IMF年次総会 リマ(ペルー)
11月 15~16日 G20アンタルヤ・サミット アンタルヤ(トルコ)
未定 G20財務大臣・中央銀行総裁会議 未定(トルコ)
G20財務大臣・中央銀行総裁会議 未定
第5回日中財務対話 未定
第6回日韓財務対話  

G7会議とG20会議

表の通り多くの会議が開催されますが、最も注目すべきはG7会議とG20会議です。2015年は、6月にドイツでG7サミット(先進国首脳会議)が開催され、11月にトルコでG20サミット(首脳会議)が開催されます。そしてその事前打ち合わせ会合としてG7財務大臣・中央銀行総裁会議とG20財務大臣・中央銀行総裁会議が開催されます。この財務大臣・中央銀行総裁会議は、金融市場が急変した時や、世界経済情勢が急変した時は臨時に開催されることがあります。

G7(ジ―・セブンは"Group of Seven")の略で、G20は"Group of Twenty"の略です。このG~という会議は、1975年、仏ジスカールデスタン大統領が先進5カ国の米国・イギリス・ドイツ・フランス・日本による首脳国会議の開催を提唱したことが始まりです。その後イタリア、カナダが参加しG7になりました。そしてEUが地域代表として加わり、冷戦終結後、ロシアが参加したことによってG8と呼ばれました。しかし、現在ロシアは、ウクライナ問題を背景とする経済制裁対象国のため招待されていないことからG7会議ということになります。

そして、このG8に新興国11か国(中国・インド・ブラジル・メキシコ・南アフリカ・オーストラリア・韓国・インドネシア・サウジアラビア・トルコ・アルゼンチン)が参加するのがG20会議です。

G20の20カ国+地域(EU加盟国を含む)のGDPを合計すると、世界のGDPの80%程を占め、貿易総額は世界の80%となります。また加盟国の総人口は世界の3分の2程になるため、世界経済を左右する非常に重要な会議ということがわかります。

G5米国・イギリス・ドイツ・フランス・日本、

G7米国・イギリス・ドイツ・フランス・日本、イタリア、カナダ + EU

G8米国・イギリス・ドイツ・フランス・日本、イタリア、カナダ + EU、ロシア

G20米国・イギリス・ドイツ・フランス・日本、イタリア、カナダ + EU、ロシア
新興国11か国(中国・インド・ブラジル・メキシコ・南アフリカ・オーストラリア・
韓国・インドネシア・サウジアラビア・トルコ・アルゼンチン)

G20の占有率世界のGDPの80%
貿易総額は世界の80%
総人口は世界の3分の2

通常は、巨大な金融・証券市場があるG7会議の動向や声明文、前後の要人発言がマーケットで注目されますが、2008年のリーマンショック以降は、G20の会議も注目されています。G20財務大臣・中央銀行総裁会議は1999年から開催されていましたが、リーマンショックの直後からG20サミット(首脳会議)も開催されるようになりました。その背景は、リーマンショックによって日米欧は一斉に経済が減速しましたが、新興国はほとんど被害を受けていなかったことや、上述のように経済が拡大期にあったため、世界景気の牽引車としてG20で注目されるようになってきたのです

重要な国際会議の1~2週間前からマーケットはその会議に注目するようになってきます。特に相場を変動させる要因が生じていた時は、事前にそのことに対する発言が出てくることがあります。そして会議ではその対策が主要議題になるのではないかとの思惑が大きくなり、相場はその発言や思惑によって動くことがあります。ノートやカレンダーに日程をメモしておき、絶えずチェックしておくことは、思わぬ変動を避ける手段のひとつとなります。

また、重要な国際会議の年間の日程、日米欧の中央銀行政策委員会の開催日、GDPや雇用統計、物価の経済指標の発表日を押さえておくと、相場予想の土台となる一年間の大きな枠組みを作ることが出来ます。例えば、どの、いつの経済指標が米国の金融政策の決定に影響してくるか、そしてその決定によって市場が大きく変動すると、期近の国際会議でその対策が議論されるのではないか、などと大きな相場の流れを読む参考情報として役立てることが出来ます。