今回は今後の円安・円高シナリオ(特にドル円)についてお話したいと思います。
円安シナリオ
円安に動く要因としては、ドル高要因と円安要因がありますが、
ドル高要因
- 米国の景気が、FRBの楽観的な見通し通り緩やかに回復(寒波は一時的要因)。
- ゼロ金利は当面維持するが、米国景気回復期待と、それに伴う利上げ期待が年後半から浮上し、米長期金利が上昇し、ドル買いに。
- 米国株は、米景気回復とゼロ金利当面維持の両面から支えられ、緩やかに上昇。株上昇による資産効果は、米消費の下支えに。
- イラク、ウクライナ情勢などの地政学リスクの高まりは、原油価格の上昇を誘引し、あるいは上昇しなくとも高止まり要因に。原油価格上昇によるコスト高からインフレ要因となり、イエレンFRB議長の指摘するノイズではなく、物価上昇の恒常的要因に。物価上昇によって利上げ期待が高まりドル高要因に。
円安要因
- 黒田日銀総裁の景気、物価強気見通しが腰折れし、日銀の追加緩和期待が高まる。
- 地政学リスクの高まりによって原油価格が上昇し、日本のエネルギーコスト増大により貿易赤字が拡大。
このように、米国景気回復→米長期金利上昇→ゼロ金利解除時期前倒し期待(米金利要因)と、日銀の追加緩和期待が大きな円安要因と考えられます。
円高シナリオ
一方、円高シナリオとしては上記の円安シナリオ通りにいかないことが考えられます。
- 米国景気は住宅の低迷、賃金の伸び悩み、外需低迷から思っていたほど回復せず。
- 米長期金利は上昇せず、ゼロ金利解除時期は後倒し観測が主流に。
- 世界景気の低迷が長引く。欧州は景気低迷。日本は腰折れ。中国も鈍化、他の新興国も低迷。世界のどの地域も景気が低迷するのは世界が直面する初めての経験。それまでは、どこかの地域の景気が活況となり、他の地域の低迷を補ったり、引っ張っていったりしていた。リーマンショックの時も、中国を先頭とした新興国はサブプライムローン被害の軽症のため立ち直りが早く、世界経済を引っ張った。
- 米景気回復という経済実体が伴わなければ、高水準の米株の調整が起こる。株下落による資産効果のマイナス効果から消費が委縮し、景気に悪影響を及ぼす
- 世界的に景気が低迷し、各国の長期金利が低下。欧州長期金利は、ECBの金融緩和政策によって低下しているが、低下余地が乏しいことから欧州マネーは、割安感のある米国債に流入。米長期金利の低下要因となり、ドル円にとってはドル売り要因に。
- 日本の景気も腰折れし、物価も再び低下傾向に。日銀の追加緩和期待から円売りが誘発されようとするが、景気腰折れの中では追加緩和だけでは株価は踊らず、円売りも限定的となる。むしろ、物価の再下落によるデフレ懸念が芽生え円高要因に。地政学リスクによる原油上昇は、景気低迷による需要減退から貿易赤字拡大までに至らず、また物価押し上げ要因とならず。
まとめますと、米国景気低迷のみならず世界景気も低迷。米長期金利は上昇せず、更に安全資産として割安感のある米債人気が高まり金利が低下しドル安要因に。日銀の追加緩和で日本株は踊らず、景気も物価も再び下落に。
とまあ、このように屁理屈のようなシナリオが考えられます。もちろん、これ以外の見方もあり、賛同できない部分もあるとは思いますが、ひとつの考え方として、頭の整理のための材料として見て頂ければいいと思います。
2011年、2012年の10円台の値幅の後、2013年は一気に18.88円の値幅となりました。86円台から105円台の一本調子の円安相場となりました。アベノミクスによる黒田節に
酔い踊った動きではありますが、その前2年の低迷相場でエネルギーを溜めていたことが、相場を大きく動かしたものと思われます。今年は低迷相場が続くのか、あるいは溜まっていたエネルギーが噴出し、相場が大きく動き始めるかもしれません。動かないからといっても、やはり相場からは目が離せません。