相続対策として加入するならどのタイプの生命保険にすべき?
「生命保険は相続対策に有効」、こんなことを耳にしたことのある方は多いと思います。でも、具体的にどんな保険に入ればよいのか、受取人は誰にしておけばよいのかなど、よくよく考えるとどうしたらよいか分からない、という方も少なくないのではないでしょうか。
そこで、まずは「生命保険」の種類について簡単にご説明しておきます。生命保険には、実は以下の3種類しかありません。
- 養老保険:保険期間中に死亡したら保険金が受け取れ、満期が来ても同額の返戻金が受け取れる
- 定期保険:保険期間中に死亡したら保険金が受け取れる
- 終身保険:いつでも死亡したら保険金が受け取れる
このうち相続対策に有効なのは、被相続人が亡くなったとき、必要なお金が確実に入ってくる③終身保険です。
①養老保険や②定期保険は保険期間が10年とか15年と決まっているため、保険期間が終了後、存命であれば改めて保険に加入しなおさなければなりません。しかし、高齢になると保険料がかなり高額になってしまいますし、病気などの理由により保険に入りなおすことが難しくなってしまう場合もあります。その結果、亡くなったときに保険金が受け取れなくなってしまう恐れがあるのです。
一方、③終身保険であれば、死亡保障が一生涯続きますので、そのような心配はありません。したがって、相続対策として生命保険に加入するならば、「終身保険」に加入するのが無難です。
税務上は「契約者」ではなく「保険料負担者」が誰かにより課税関係が決まる
通常、生命保険契約に登場する人物は「契約者」・「被保険者」・「受取人」です。しかし、税務の世界では、「契約者」ではなく「保険料負担者」が誰か、というのが重要となります。
相続対策として生命保険に加入する際に最も一般的なのは、次のような形のものです。
- 契約者=保険料負担者:被相続人
- 被保険者:被相続人
- 受取人:相続人
このような形態であれば、被相続人が亡くなったときに相続人に死亡保険金が支払われ、その保険金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。
これ以外の形態、例えば保険料負担者が被相続人ではなく相続人の場合は、被相続人の死亡により受け取る保険金は、相続人の一時所得として所得税の課税対象となります。別の機会に詳しく説明しますが、相続財産が多額の場合、あえて相続税の課税対象ではなく所得税の課税対象とするようにして、トータルの税金を抑えるというプランもあります。
他にも保険料負担者・被保険者・受取人の組み合わせにより課税関係が異なりますが、ひとまずは通常であれば「保険料負担者:被相続人、被保険者:被相続人、受取人:相続人」の組み合わせで生命保険に加入しておけば問題ありません。
生命保険の相続税非課税枠の計算方法とは?
保険料負担者が被相続人、被保険者が被相続人、そして受取人が相続人という生命保険契約につき、被相続人の相続発生に伴って死亡保険金が保険会社から支払われた際、以下の金額が相続税の課税財産から除かれます(=非課税となります)。
非課税限度額=500万円×法定相続人の人数
例えば、相続人が受け取った死亡保険金が5,000万円、法定相続人が4人のケースでは、相続財産として課税される金額は、5,000万円-500万円×4人=3,000万円となり、2,000万円が非課税となります。
非課税枠を活用した相続税対策として最も即効性があるのが、「一時払い終身保険」への加入です。昨今の低金利の影響で、支払う保険料と受け取る保険金があまり変わらない、という状況にはなっていますが、相続税の軽減という面から考えればそれでも明らかにメリットがあります。
一時払い終身保険への加入は、「預金」を「生命保険」に移しただけ、とイメージしていただければ結構です。法定相続人が4人のケースで考えると、預金のままで2,000万円を持っていればそれに丸々相続税が課税される一方、一時払い終身保険に2,000万円加入しておけば、500万円×4人=2,000万円が相続税非課税となります。仮に相続税の税率が50%だとしたら、2,000万円の預金を使って一時払い終身保険に加入するだけで、2,000万円×50%=1,000万円の相続税を軽減することができるのです。
非課税枠の計算方法・こんな点には注意!
上記のように「500万円×法定相続人の数」だけ非課税枠が使えるのが生命保険のメリットの1つですが、これには要件があります。
それは、生命保険金の受取人が「相続人」でなければいけないという点です。相続を放棄した人や相続権を失った人、孫など相続人でない人が保険金を受け取った場合、非課税枠を使うことはできません。
なお、上記計算式の「法定相続人の数」とは、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。また法定相続人の中に養子がいる場合、法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなります。
念のため申し上げますが、相続を放棄した人や相続人以外の人が保険金を受け取ること自体は可能です。相続税計算上の非課税枠が使えないというだけです。ですから、相続を放棄する予定の人にも財産を渡したいようなときには、生命保険は有効な手段となります。
生命保険は相続税の面で有利、というわけではなく、「納税資金対策」と「遺産分割対策」の面からも活用ができます。次回はそうした切り口からの生命保険の活用法について見ていきたいと思います。
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