最近増えている「なんとなく投資」のシチュエーションに、夫婦それぞれが証券口座を持って投資している状況があります。
ちょっと前なら「女性は株をやらない」で決めつけてもよかったのですが、女性もたくさんの人が投資をする時代ですし、昔のように「投資はオトコの勝負」とはいえない時代になりました。確定拠出年金の普及もその一因で、女性社員の多くが男性社員と同条件で資産運用を行っています。
行動ファイナンスの調査では男性は女性より売買回転率が高いというデータや、回転売買の比率が高い投資家が必ずしも高いリターンをあげていない、というデータもあり、夫婦が証券口座をそれぞれ有しているケースにとって気になるデータです。
さて、夫婦が証券口座をそれぞれ有しているとき、それぞれが最善の判断をしているつもりであっても、夫婦の口座をひとつのものとして捉えてみると非効率的な売買が生じている恐れがあります。
今回は「なんとなく投資」を考える切り口として「夫婦それぞれが投資をしている場合」について考えてみます。
夫婦それぞれが投資口座を持つ場合のパターン
おそらく、専業主婦である女性と正社員である男性がそれぞれ証券口座をもつことはあまりないと思います。シチュエーションとして多いのは共働きである男女がそれぞれ証券口座をもつ場合です。
男性だけが投資をしている場合であっても、入金額や投資方針、運用結果を妻に逐一報告する人はほとんどいないでしょう。投資に理解が浅い人に一時的な負けも勝ちもあまり話したくないものです。それが家族であればなおさらで、負けているときは怒らせそうですし、うまくいっているときは何か買ってくれといわれそうです。
これは夫婦ともに証券口座を持っている場合であっても、同様です。入金額や投資方針について、わざわざお互いに発表することはあまりないでしょう。また、パフォーマンスについても互いに報告し合うこともあまりないと思われます。
しかし、それはあまり効率的な運用とはいえません。極端な例をあげれば、女性は投資情報を検討し業績悪化の兆候があるS社株を売ったところ、男性はこれを悪材料出尽くしとにらんで買ったようなシチュエーションが起こりえますが、ひとつの家庭としてはまさにムダな売買です。売買手数料がムダにかかっていますし、譲渡益が出ていれば不要な課税が生じることになります。
効率的でないのはそれだけではありません。
異なるゴールを目指し、異なる運用方針をもつ非効率も注意
投資の目的やゴール時期が異なっている運用をそれぞれが勝手に行っているのも好ましい状況とはいえません。
夫婦がそれぞれどのような目標に向けて投資を行うかはお互いに話し合わなければ分かりませんが、女性は子どもが小学校のうちに高校と大学の入学金準備をしたいと考えていたところ、男性は同じことを考えていたがリスクテイクの程度がまったく違っていたり、お互いの目標額を合計しても準備額は足りないとしたらどうでしょうか。
あるいは夫が教育資金準備に投資を組み入れていることを妻は承知していながら、夫の組み入れ銘柄や売買頻度については短期的視点であることを気にしていたとしたら、これもどうでしょうか。
投資目標や運用方針のズレが、お互いの了承済みであったり納得の範囲内であれば悪いことではありませんが、互いの投資状況を知らずに投資を続けていることの危うさは認識をしておく必要があります。