米国経済は期待を裏切ることになる!?

現在、サブプライム自動車・学生・住宅ローン市場で静かに市場の崩壊が始まっている。しかし、これらはまだ市場の水面下での動きであり、市場では無視されている。経済指標で注目されているのは米国の失業率で、運用者の間では「失業率の低い時に株は下がらない」と見方が多い。しかし、失業率(オバマケアの影響やベビーブーマーの対処クラッシュで失業率は上昇しにくい傾向にある)はすでに完全雇用の水準に達しており、今がピークの可能性が高い。

米国の失業率(1948年~2017年) もう、これ以上下がらない?

(出所:石原順)

不況先行指標となっている「全業種のパートタイマーの失業率」
(このデータが上昇すると米景気は不況になる。グレーの部分は不況の期間です)

(出所:セントルイス連銀)

サブプライム自動車ローン
「サブプライム自動車ローンABS(資産担保証券)で信用力が著しく低い<ディープサブプライム層>向けローンの占める割合が、5.1%から32.5%に増加している」

(出所:マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート The Gloom, Boom & Doom Report・国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載)

グリーンストリート商業用不動産価格指数(2001年~2016年)
「金融危機前の2007年の不動産価格のピークを越えている不動産市場だが、現在の価格は正当で持続可能だという楽観論で泡立っている」

(出所:マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート The Gloom, Boom & Doom Report・国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載)

米国人の退職貯蓄パターン 米国人の3人に1人が退職時の貯蓄ゼロ

(出所:マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート The Gloom, Boom & Doom Report・国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載)

8月相場に要注意!

筆者はラジオやレポートなどで6月9日にFANGやMANTと呼ばれる人気株が急落したものの、6月から7月はまだ<うだうだとしたリスクオン相場>が続くと申し上げてきた。まだ7の年の循環相場が続いているからだ。米国の長短スプレッドの縮小は、本来は株安を促すが、現在の相場はその逆の動きとなっている。

長短スプレッドの縮小をみて、株価指数の売りを持っていたファンド筋は損切りに追い込まれたようだが、この能天気な相場をみて「次は相場に大きな修正が入る局面がくる」と、ほくそ笑んでいるようだ。今週、ファンド運用者とミーティングをしたが、ある株式運用者は、「FRB利上げと資産売却に債券市場は反応していない。イエレンFRBの政策は間違っていると思っているのだ。FRBは金融引き締めの影響を甘く見ているのではないか?」という感想を語っていた。市場とFRBの認識ギャップが拡大すると、歴史的に市場では金融危機が発生し暴力的に動くことになる。

テスラ(週足)
上段:ボリンジャーバンド(21)・パラボリックS&R
中段:標準偏差(26)・ADX2LINES
下段:新値3本足

(出所:石原順)

テスラ(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)・パラボリックS&R
中段:標準偏差(26)・ADX2LINES
下段:新値3本足

(出所:石原順)

米国債の長短スプレッド(10年国債金利-2年国債金利)とNYダウの推移
近い将来相場の転機がくる?

(出所:石原順)

米国経済の先行き見通しの暗さから、株式市場と違ってロジカルに動く債券市場では米国債の長短スプレッドは縮小している。これは株安要因だが今の市場では無視されて、すごく居心地の良い相場に見えている。しかし、こうした動きは長くは続かない。「ゴルディロックスと3匹のくま」(Goldilocks and the Three Bears)は、イギリスの有名な童話である。ゴルディロックスは今の「程良い状況が続く適温相場」の例えによく用いられる言葉だが、ゴルディロックスの童話の本質は、「そういう状況は長くは続かない」ということなのである。総楽観相場だが、ここから1~2月の相場は相場の転換点となる可能性がある。特に8月相場には注意したい。

NYダウCFD(日足) 調整相場
上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ=赤のバンド
中段:標準偏差ボラティリティ(26)
下段:新値3本足の売買シグナル

(出所:MT4 テンプレート 『DVD相場で道をひらく7つの戦略「トレード戦略編」 石原順』)

日経平均CFD(日足) 調整相場
上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ=赤のバンド
中段:標準偏差ボラティリティ(26)
下段:新値3本足の売買シグナル

(出所:MT4 テンプレート 『DVD相場で道をひらく7つの戦略「トレード戦略編」 石原順』)

米国株市場はたった5銘柄の成績?夏相場と市場の脆弱性に注意が必要

レポートで何度も紹介してきた大統領選挙翌年の平均サイクルではこの6月でNYダウの買いの賞味期限は終わりである。また、<7の年>の平均サイクルも、買いの賞味期限は7月までだ。もちろん、このようなアノマリー的な予測は必ず当たるわけではないが、7の年の金融危機10年周期説から市場では警戒する声も増えている。

当り屋と呼ばれる新債券の帝王ジェフリー・ガンドラックは「夏相場が危ないので株は売っておいた方がいい」と述べている。陰鬱博士と呼ばれるマーク・ファーバーは「この相場は一発屋の芸能人(ビック5:アップル・マイクロソフト・アマゾン・グーグル・フェイスブック)で盛り上がっているようにみえる。投資家は少数の銘柄が指数を高値に押し上げているのを懸念すべきである」と警鐘を鳴らしている。

NYダウ<7の年>の平均サイクルと大統領選挙翌年の平均サイクル

(出所:「ラリー・ウィリアムズのフォーキャスト2017」 ラリー・ウィリアムズおよび国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載)

NYダウ・日経平均 月別騰落率(過去20年)
歴史的に5月・9月・10月はボラティリティが上がるが、近年の相場は8月が危ない

(出所:石原順)

6月12日のブルームバーグの『1999年のようなパーティー、米国株市場で終わりに近い-バロンズ Joe Deaux』という記事をみると、総楽観相場のなかで、名うてのファンドマネージャーやアナリストは現在の相場に警戒しているのがよくわかる。

「著名投資家の一部が米国株市場に懐疑的な目を向けている。米紙バロンズが年央のラウンドテーブル討議の一部として報じたところによると、ジェフリ-・ガンドラック氏やメリル・ウィトマー氏、アビー・ジョゼフ・コーエン氏らは米国株を完全に見限る準備はないものの、今年の上昇分はほとんど達成済みの公算が大きいとみている。S&P500種株価指数は年初来で8.6%高。現政権下でまだ実行されていない政策が既に織り込まれていると警告する彼らは、トランプ米大統領が議会の賛同を得て法人税改革やインフラ投資を実施する能力を疑問視している。今年上期の株価上昇を正しく予想したビセンダ・アセット・マネジメントのフェリックス・ツラウフ最高投資責任者(CIO)は、「まるで1999年の終わりごろのようだ」と語り、中国を中心とする世界経済減速によって7月か8月に「株式は重要なピーク」を迎えるとみている。ゴールドマン・サックスのシニア投資ストラテジストのコーエン氏は、米国株のバリュエーションは妥当に見えるものの、国内政策をめぐる懸念でリスクは「非対称に」下向きだと指摘する。世界市場の中で同社のアナリストらは、バリュエーションが比較的良好な欧州に投資チャンスを見いだし、日本について引き続き「熱狂的」スタンスという」(『1999年のようなパーティー、米国株市場で終わりに近い-バロンズ』 Joe Deaux 2017年6月12日 ブルームバーグ)

S&P495とビッグ5(2013年~2017年)(ビック5:アップル・マイクロソフト・アマゾン・グーグル・フェイスブック)
「S&P500は2013年中旬以降、年率わずか6.1%に過ぎない。一方、ビッグ5指数は同期間に57.3%とべらぼうに高い評価をされている」

(出所:マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート The Gloom, Boom & Doom Report・国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載)

S&P495とビッグ5(年初来)(ビック5:アップル・マイクロソフト・アマゾン・グーグル・フェイスブック)

(出所:マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート The Gloom, Boom & Doom Report・国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載)

アマゾンに1,000ドル投資すると・・(1997年~2017年)
「2016年6月時点でアマゾン株は新規公開から3万8,882%上昇している。つまり、19997年に10万ドルを投資していれば、現在は3900万ドル近い資産になっている」

(出所:マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート The Gloom, Boom & Doom Report・国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載)

為替市場はポンド/円・ユーロ/円・豪ドル/円に注目!

さて、為替市場では久しぶりに日足でポンド/円・ユーロ/円・豪ドル/円といった通貨ペアにトレンドが発生している。日足でトレンドが発生している。7月に向けての目先最後のリスクオン相場かもしれない。

標準偏差ボラティリティトレード(サンプル:ドル/円4時間足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ=赤のバンド
下段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
エントリー(新規建玉)ポイント=赤の矢印

トレードにエントリーするうえで重要なのは、ADX(8)、ADX(14)、標準偏差ボラティリティ(26)の3本のラインが一緒に上がっている局面(丸で囲った黄色い部分)を狙うことだ。3本のラインが一緒に上がっている局面はトレンドが大きくなる可能性を秘めている。

(出所:MT4 テンプレート 『DVD相場で道をひらく7つの戦略「トレード戦略編」 石原順』)

ポンド/円(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ=赤のバンド
中段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
下段:新値3本足

(出所:MT4 テンプレート 『DVD相場で道をひらく7つの戦略「トレード戦略編」 石原順』)

ポンド/円(4時間足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ=赤のバンド
中段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
下段:新値3本足

(出所:MT4 テンプレート 『DVD相場で道をひらく7つの戦略「トレード戦略編」 石原順』)

ユーロ/円(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ=赤のバンド
中段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
下段:新値3本足

(出所:MT4 テンプレート 『DVD相場で道をひらく7つの戦略「トレード戦略編」 石原順』)

ユーロ/円(4時間足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ=赤のバンド
中段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
下段:新値3本足

(出所:MT4 テンプレート 『DVD相場で道をひらく7つの戦略「トレード戦略編」 石原順』)

豪ドル/円(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ=赤のバンド
中段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
下段:新値3本足

(出所:MT4 テンプレート 『DVD相場で道をひらく7つの戦略「トレード戦略編」 石原順』)

豪ドル/円(4時間足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ=赤のバンド
中段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
下段:新値3本足

(出所:MT4 テンプレート 『DVD相場で道をひらく7つの戦略「トレード戦略編」 石原順』)

7月22日(土曜日)の「楽天証券サービス開始18周年記念投資セミナー」の楽天FXブースで「年後半の相場見通し」のミニセミナーをやります。

8月2日(水曜日)に東証ホールで行われる「株価指数先物実践セミナー」(楽天証券・JPX共催)にも出演します。

ぜひ、ご参加ください。

新しいDVD『相場で道をひらく7つの戦略-トレード戦略編』(石原順) が楽天ブックスで好評発売中です。

日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。