今日のまとめ

  1. 世界のホテル業界はフラグメント化している
  2. アメリカは比較的チェーン化が進んでいる
  3. 最も重要な経営指標はRevPAR
  4. RevPARは上昇している
  5. 中国市場の鈍化を訴える企業が多い

ホテル・セクターの概観

世界全体のホテル産業の総売上高は3,840億ドルです。世界には15.7万社のホテル企業があり、総客室数は1,460万室です。

世界のトップ・ホテル・グループ10社のマーケットシェアは31%に過ぎず、ホテル産業が極めてフラグメント化された業界であることがわかります。

因みにアメリカではトップ10企業のマーケットシェアは58%で、世界に比べるとチェーン化が進んでいます。

2001年以降、世界のホテル業界の売上高成長率は年率+4.9%でした。

RevPARとは?

ホテル企業の経営内容は1)客室単価(Average Daily Rate)、2)稼働率、3)稼働可能客室当たり売上単価(RevPAR)によって計測されます。

客室単価は売上高÷客室数で計算されます。

稼働率は稼働客室数÷総客室数で計算されます。

稼働可能客室当たり売上単価は、売上高÷実際にお客さんを泊めることが出来る客室数で計算されます。一般にホテル業界ではRevPARが最も重要だとされています。

コンサルタント会社、STRグローバルによると過去3年の世界のホテル需要は年率+5.3%で成長してきました。一方、客室の供給は+1.6%成長にとどまりました。

このためRevPARには上昇圧力が働いています。

今後数年のホテル建設計画によると供給増は限定的です。このためRevPARは今後もじり高することが予想されます。

ホテルの客室単価は地域やセグメント(高級ホテル、バジェットホテルなど)によってかなり差があります。北米市場では過去3年間の間にRevPARは年率+6.9%で成長してきました。

関連銘柄

ホテル・セクターには下の表のような銘柄群があります。

銘柄 コード 主なブランド
ヒルトン・ワールドワイド HLT ウォルドルフ・アストリア、ダブルツリー
ハイアット・ホテルズ H パーク・ハイアット、グランド・ハイアット
マリオット・インターナショナル MAR リッツ・カールトン、コートヤード
スターウッド・ホテルズ&リゾーツ HOT セントレジス、シェラトン、ウエスティン
ウインダム・ワールドワイド WYN ラマダ、デイズイン、スーパー8

ヒルトン・ワールドワイド

ヒルトン・ワールドワイド(ティッカーシンボル:HLT)は客室数で世界最大のホテル・チェーンです。同社は1919年にコンラッド・ヒルトンによって創業された歴史のあるチェーンですが、ブラックストーン・グループにより非公開化され、去年の12月に新規株式公開(IPO)で再上場されました。

同社はマネージメント契約、自社所有、タイムシェアの三つの事業形態を取っています。

地域別では米国が利払い税金償却前利益(EBITDA)の75%を占めています。

同社のバランスシート上には147億ドルの負債が載っており、自己資本の87%に相当します。

同社の上場後初の決算発表は2月26日の予定で、コンセンサス予想はEPSが16¢、売上高が24.7億ドルです。

【略号の説明】

  • DPS一株当り配当
  • EPS一株当り利益
  • CFPS一株当りキャッシュフロー
  • SPS一株当り売上高

ハイアット・ホテルズ

ハイアット・ホテルズ(ティッカーシンボル:H)は1957年にジェイ・プリツカーにより創業されたホテル・チェーンです。1962年に新規株式公開で上場企業となったものの1979年に非公開化され、2009年に再びIPOされた経緯があります。

同社はハイアット、パーク・ハイアット、グランド・ハイアット、ハイアット・リージェンシー、アンダーズの五つのブランドを展開しています。

同社はマネージメント契約を締結し、ホテルの運営をする代わりにフィーを受け取る、アセットを持たない方式、自社で物件そのものを保有する方式、フランチャイズ方式などの様々な運営形態を展開しています。

地域別では米国が多いです。

利払い税金償却前利益(EBITDA)ベースでは自社所有物件の貢献度が高いです。

同社はアジア太平洋地域での展開に力を入れています。中国の物件は急成長してきたのですが、このところの同国の経済成長の鈍化の影響を受けて業績が低迷しています。

ハイアットのバランスシート上の負債は13億ドルで、これは自己資本の21%に過ぎません。

マリオット・インターナショナル

マリオット・インターナショナル(ティッカーシンボル:MAR)は1927年にJ.ウィラード・マリオットによって創業されました。同社はマリオットというブランドの他にリッツ・カールトン、レジデンス・イン、ルネッサンスなどのブランドを展開しています。

ホテルの軒数では北米が多いです。

最近の業績としては同社のポートフォリオの中で最高級のリッツ・カールトンならびにマリオット・ホテルズ&リゾーツのブランドのパフォーマンスが良いです。

会社側は2014年のRevPAR成長率として4~6%を見込んでいます。

地域的には他社同様、中国市場への進出に力を入れています。このところの中国経済の鈍化の影響を受けて、足下の中国のパフォーマンスは悪いです。

スターウッド・ホテルズ&リゾーツ

スターウッド・ホテルズ&リゾーツ(ティッカーシンボル:HOT)は不動産投資会社、スターウッド・ロッジングが1994年に日本の青木建設からザ・ウエスティンを買収したことからホテル業への本格参入をはじめます。ウエスティンは1930年にシアトルで創業したホテル・チェーンで、サンフランシスコのウエスティン・セントフランシス、ロスアンゼルスのウエスティン・ボナベンチャーなどが有名です。

次にスターウッドはシェラトンを1998年に買収します。シェラトンは1937年にアーネスト・ヘンダーソンとロバート・モーアによって創業されます。彼らが最初に買収したホテルに、たまたまシェラトンというネオンサインが既に出ており、それを撤去する費用が惜しかったのでシェラトンに社名変更したというエピソードが残っています。

この他、スターウッドは1904年に不動産王、ジョン・ジェイコブ・アスター四世によって建てられたセントレジスを所有しています。

同社は客室ベースで米国比率が46%と、大手ホテル・チェーンの中で最も低いです。逆に中国とラテンアメリカが多いです。

とりわけ中国市場では3万8千室と、他社を圧倒する客室数を誇っています。それは中国経済の鈍化の影響を一番受けることに他なりません。

ウインダム・ワールドワイド

ウインダム・ワールドワイド(ティッカーシンボル:WYN)はヘンリー・シルバーマンによって創設されたホスピタリティ・フランチャイズ・システムズ(HFS)がルーツとなっています。1997年にHFSがCUCインターナショナルと合併し、センダントになりますが、これが上手く行かず、ウインダムはセンダントから分離されます。

同社のビジネスはバケーション・オーナーシップ、バケーション・レンタル、ホテルの三つから構成されています。

同社のホテル・ブランドは他社とは違い、廉価カテゴリーに注力しています。

従来、バケーション・オーナーシップのビジネスは不動産物件を開発することによるキャピタルゲインに着目した経営がなされていましたが、最近はアフィリエーション・モデルといって、ブランドの管理ならびに物件のマネージメント・フィーの徴収を強調した、「不動産を持たない」経営に傾斜しています。