今日のまとめ

  1. 飲料セクターはディフェンシブな性格を持っている
  2. 特にソフトドリンクは景気に左右されにくい
  3. 最近、このセクターにはM&Aが多い
  4. 新興国の成長には陰りが見える
  5. 炭酸飲料の人気が落ちてきている

飲料セクターの概観

飲料セクターはディフェンシブな性格を持っています。ディフェンシブとは「景気後退局面に強い」という意味です。

飲料セクターの中でもソフトドリンクはとりわけ景気に左右されにくい事で知られています。その半面、高価な洋酒やワインは多少景気に左右されます。

このところ飲料セクターでは相次いでM&A(買収合併)が起こっています。アンハイザー・ブッシュ・インベブがメキシコのグルーポ・モデロを買収したほか、サントリーが米国のビームを買収しました。

多くの飲料メーカーのブランドは国際的にも有名です。このため新興国におけるミドルクラス(中流)の出現は新しいビジネス・チャンスの出現を意味します。ただ、最近、新興国での需要成長には若干陰りが見えています。

その他のトレンドとして、先進国における消費者の嗜好が多様化していることが挙げられます。有名なビールのブランドが「クラフト・ビール」と呼ばれるニッチ・ブランドにマーケットシェアを奪われています。

高級洋酒は新興国の裕福層からの強い需要を背景に長期的な成長分野になりつつあります。サントリーがビームを買収したのも、このトレンドに着目したからです。

飲料セクターには下の表のような銘柄群があります。

銘柄名 コード 主な業務内容
アンハイザー・ブッシュ・インベブ BUD ビール
コカ・コーラ KO ソフトドリンク
コンステレーション・ブランズ STZ ワイン、ビール
ディアジオ DEO ウイスキー、ウォッカ
ドクター・ペッパー・スナップル DPS ソフトドリンク
モンスター・ビバレッジ MNST 代替飲料
ペプシコ PEP ソフトドリンク、食品

アンハイザー・ブッシュ・インベブ

アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ティッカーシンボル:BUD)は米国の有名ビール・ブランド『バドワイザー』の会社です。その他、有名なブランドとして『ベックス』、『スコール』、『ブラマ』、『コロナ』などを持っています。

同社の時価総額は2月7日現在1,562億ドルで、コカ・コーラに次ぐ大型株です。

同社は新興国への進出に力を入れています。『コロナ』を持つメキシコのグループ・モデロを買収したのも、そのようなグローバル戦略の一環でした。

2013年第3四半期の決算では全社売上高は+3%成長したのに対し、数量ベースでは-1%でした。特に北米での出荷量は-1.9%で、これは業界全体(-1%)より悪かったです。その原因は「クラフト・ビール」にマーケットシェアを奪われた(-80bp)ことにあります。

新興国ではブラジルが天候不順、競争激化などの原因で、数量ベースで-5%を記録しました。

このように足下の業績はいまひとつですが、定評のある経営陣のこと、いずれ体制を立て直すと予想されます。

また同社は配当利回りが3.1%あり、インカム収入狙いの投資家には魅力です。

【略号の説明】

  • DPS一株当り配当
  • EPS一株当り利益
  • CFPS一株当りキャッシュフロー
  • SPS一株当り売上高

コカ・コーラ

コカ・コーラ(ティッカーシンボル:KO)は世界最大の飲料会社です。同社は『コカ・コーラ』の他、『スプライト』、『ファンタ』、『パワーエイド』、『ミニット・メイド』などのブランドを展開しています。売上高の約60%が海外です。

2014年2月7日現在の時価総額は1,676億ドルです。

同社の数量ベースの成長率は+2%程度、EPS成長率は+7%程度です。

同社は過去51年連続して増配を発表してきました。今年も問題なく増配できると思います。配当性向は既に50%を超えています。このためEPSの成長率以上の高い成長率で配当が引き上げられることは考えにくいです。現在の配当利回りは2.95%です。

同社はウォーレン・バフェットの投資会社、バークシャー・ハサウェイが大株主であることでも知られており、発行済み株式数の9%を支配しています。

コンステレーション・ブランズ

コンステレーション・ブランズ(ティッカーシンボル:STZ)はワインの『ロバート・モンダビ』、ウォッカの『ズヴェードッカ』などを展開しています。

同社はこれらの事業に加えて『コロナ』などのブランドを持つメキシコのグルーポ・モデロの北米の事業を最近、継承しました。グルーポ・モデロはアンハイザー・ブッシュ・インベブに買収されたのですが、北米での事業は独禁法の見地から分離することが義務付けられ、コンステレーション・ブランズがこれを獲得したのです。今回のディールにはグルーポ・モデロのメキシコにある工場も含まれており、同社にとって極めて有利なディールとなっています。

コンステレーション・ブランズはこれまでワイン主体の会社だったのですが、ワインは比較的景気に左右されやすく、事業ポートフォリオのバランスを取る意味で、ビール事業への進出は良い展開だと言えます。

下の業績のグラフで売上高が急激に伸びているのは買収効果です。

同社はバランスシート上に71億ドルの負債があり、これは自己資本の60%に相当します。インタレスト・カバレッジ・レシオは3.9倍です。これはまずまずといったところでしょう。但し投資元本の安全を最優先する投資家には向きません。

ディアジオ

ディアジオ(ティッカーシンボル:DEO)はウイスキーの『ジョニー・ウォーカー』、テキーラの『クエルボ』、ラムの『キャプテン・モルガン』、ウォッカの『スミノフ』、ビールの『ギネス』などのブランドを展開しています。

同社は商品のポートフォリオも充実しているし、地域的にも幅広く展開しています。また最近市場のパイそのものが拡大しているウイスキーなどに強い基盤を持っています。これえらの事から普通にやっていれば他社より速く成長できる立場にあります。

最近、経営陣が刷新され、経営姿勢は積極的になっています。

同社のバランスシートには153億ドルの負債があり、これは自己資本の54%です。インタレスト・カバレッジ・レシオは5.8倍なので、この程度の負担は問題にならないと思います。

ドクター・ペッパー・スナップル

ドクター・ペッパー・スナップル(ティッカーシンボル:DPS)は『ドクター・ペッパー』、『スナップル』、『シュウェップス』などを展開しています。

同社の売上高の89%は米国内であり、飲料セクターの会社としては国際展開が遅れています。その米国では消費者の炭酸飲料離れが進んでおり、それが同社の業績に影を落としています。

同社は配当利回りが3.35%あり、その点では魅力があります。配当性向は既に50%近くに達しているので一株当り利益の伸び以上の配当の伸びは期待薄です。その半面、現在の配当の水準は比較的安全だと考えられます。

バランスシート上の負債は25億ドルです。これは自己資本の52%に相当します。インタレスト・カバレッジ・レシオは4.7倍です。ちょっと負担が重い気もしますが、危険な水準ではありません。

モンスター・ビバレッジ

モンスター・ビバレッジ(ティッカーシンボル:MNST)は『モンスター・エナジー』などのエナジー・ドリンクの会社です。

同社は2012年10月にメリーランド州で同社のエナジー・ドリンクを飲んだ十四歳の少女が死亡したことで、遺族が同社を提訴する事件に遭いました。24時間の間に2回『モンスター・エナジー』を飲んだのが死因だと遺族は主張しましたが、同ドリンクと死亡の因果関係は証明されませんでした。

また2013年5月にはサンフランシスコ市弁護士、デニス・ヘレラが同社に対し、カリフォルニア州の規則に反して子供に高いカフェインを含んだ飲料を売ったという理由で同社を提訴しました。

これらの裁判は係争中ですが、エナジー・ドリンクには安全性の面での問題は無いという最近の研究結果の発表もあり、同社に対する投資家のセンチメントは幾分改善しています。

最近の消費者のトレンドとして炭酸飲料を避ける動きがあり、同社の製品群もこの影響を受けています。

モンスター・ビバレッジは非炭酸飲料の商品の取り揃えを強化することでこれに対応しています。

ペプシコ

ペプシコ(ティッカーシンボル:PEP)は『フリトレー』、『ペプシ』、『クウェーカー・オーツ』などを展開しています。

同社のビジネスは食品と飲料がちょうど半々であり、先進国が売上高の65%、新興国が35%を占めています。

ポテトチップなどのスナックの事業部は穀物の価格に利幅が左右されます。最近のマージン(18%)は少し圧迫され気味です。

同社の業績は安定しており、収益見通しは立てやすいです。その反面、成長という点では他の企業より見劣りします。

バランスシート上の負債は295億ドルで、これは自己資本の50%です。インタレスト・カバレッジ・レシオは22倍で利払いには全く問題ありません。

配当利回りは2.8%で、配当は安全です。