今日のまとめ

  1. パッケージド・グッズのメーカーはマージンが高く、業績も安定している
  2. これらの企業の業績は景気に左右されにくい
  3. 難点は比較的低成長であるということ
  4. 業績、株価が安定的に推移するため、初心者にも好適な投資対象だといえる

食品セクターの概観

食品のグループに含まれる企業は、穀物の取引をする商社、バナナやフルーツのマーケティング・缶詰業者、食肉加工業者、パッケージド・グッズ(加工食品)のメーカーなどです。

このうち穀物商社、フルーツのマーケティング・缶詰業者、食肉加工業者はマージンが薄く、業績も市況に大きく左右されます。

これとは対照的にパッケージド・グッズのメーカーは比較的マージンが高く、業績も安定しています。

そこで今日はパッケージド・グッズの銘柄を紹介したいと思います。

パッケージド・グッズ企業の財務的特徴

シリアル、缶入りスープ、チョコレートに代表される御菓子、調味料などはパッケージド・グッズに分類されます。

一般にパッケージド・グッズ企業のマージンは他の食品株に比べて大きいです。下は代表的企業の営業マージンです。

営業マージン(%、2012年実績、バリューライン)

穀物商社は4%、フルーツのマーケティング・缶詰業者は6%、食肉加工業者は11%前後の営業マージンであることを考えると、パッケージド・グッズの営業マージンがいかに大きいか分かります。

パッケージド・グッズ各社は株主資本利益率の観点からも優等生が多いです。

株主資本利益率(%、2012年、バリューライン)

これらの企業の業績は景気に左右されにくい、いわゆるディフェンシブな性格を帯びています。

このセクターには自社株の買い戻しや配当を通じて株主への利益還元に積極的な企業が多いです。

これらのことから株式市場における同セクターの評判は安定しており、市場平均並みか、それよりも少し高い株価収益率で取引されている企業が多いです。

株価収益率(PER)(倍、2013年のEPSに基づいて、予想はバリューライン)

同セクターの難点を言えば、比較的低成長である点です。食品の市場は人口の増加や可処分所得の伸びによって決定される部分が大きいです。各社の過去5年の年率平均キャッシュフロー成長率は次のグラフのようになっています。

過去5年間のキャッシュフロー成長率(年率%、バリューライン)

パッケージド・グッズの株は値動きが比較的安定しているので、投資を始めて間もない投資家にも好適です。

キャンベルスープ

キャンベルスープ(ティッカー・シンボル:CPB)は世界最大の缶スープのメーカーです。同社のブランドとしては「キャンベルズ」の他に「スワンソン」、「ペッパリッジ・ファーム」(クッキー)、「V8」(トマトジュース)などがあります。同社の売上高のうち海外は3割です。

同社の中核事業は北米のスープ事業で、この部門は売上高の35%、利益の49%を稼ぎ出しています。次に重要な部門は「ペパリッジ・ファーム」に代表されるクッキーやスナックのビジネスで、売上高の29%、利益の24%を占めています。

さらに同社は去年ボルトハウス・ファームズを買収し、プレミアム・フレッシュジュースに進出しました。

キャンベルスープの業績は安定的に推移しています。

キャンベルスープの業績(ドル、2013年以降は予想、バリューライン)

【略号の説明】

  • DPS 一株当り配当
  • EPS 一株当り利益
  • CFPS 一株当りキャッシュフロー
  • SPS 一株当り売上高

キャンベルスープは42億ドルの負債を抱えており、これは自己資本の72%に相当します。インタレスト・カバレッジは10倍で、バランスシートはまずまずです。

株価も安定的に推移しています。配当利回りは約2.5%です。

キャンベルスープ(CPB、データ出典:キャピタルIQ)

ゼネラル・ミルズ

ゼネラル・ミルズ(ティッカーシンボル:GIS)は「チェリオ」、「チェックス」、「ベティ・クロッカー」、「ビスクイック」、「ヨープレイト」、「プログレッソ」、「ナチュラル・バレー」、「ピルズベリー」などのブランドを展開しています。売上高に占める海外比率は29%です。

同社はシリアルで2位、ヨーグルトで2位、冷凍ピザで3位、穀物スナック・バーで1位というポジションにつけています。

去年はシリアル部門で原料の高騰から価格を引き上げたことがボリューム減につながり、全体として低調な業績となりました。今年は原料価格が安定しているため製品価格は据え置かれる見通しで、それがボリューム成長につながると期待されています。

同社の収益の安定性には定評があります。

ゼネラル・ミルズの業績(ドル、2013年以降は予想、バリューライン)

同社の負債総額は80億ドルで、負債比率は自己資本の47%、インタレスト・カバレッジ比率は8.9倍です。

同社の株価も安定的に推移しています。配当利回りは約3%です。

ゼネラル・ミルズ(GIS、データ出典:キャピタルIQ)

ハーシー

ハーシー(ティッカーシンボル:HSY)は米国最大のチョコレートのメーカーです。同社の主なブランドは「ハーシーズ」、「リーセズ」、「キッセズ」、「キットカット」、「トウィズラーズ」、「アイスブレーカーズ」などです。海外売上比率は16%です。

北米の御菓子市場における同社の市場占有率は約30%です。マーケットシェアは着実に上昇しており、過去5年間に2パーセンテージ・ポイントの上昇を見ました。

同社の収益は極めて安定しています。

ハーシーの業績(ドル、2013年以降は予想、バリューライン)

負債総額は18.9億ドルでこれは自己資本の58%に相当します。インタレスト・カバレッジ・レシオは13倍で、利払いには全く問題ありません。

株価の方も安定しています。配当利回りは約1.9%です。

ハーシー(HSY、データ出典:キャピタルIQ)

ケロッグ

ケロッグ(ティッカーシンボル:K)は世界最大のシリアルのメーカーです。主なブランドは「フロステッド・フレークス」、「フルート・ループス」、「レーズン・ブラン」、「ポップタルト」などです。海外売上比率は37%です。

同社の場合もゼネラル・ミルズ同様、去年の穀物価格の高騰に伴う原料費の高騰に悩まされました。仕入れコストを製品価格の値上げにより顧客に転嫁しようとしたところ、これがボリューム減を招きました。

今年はそのようなコスト・プッシュ要因が無いため、安定した業績が見込まれています。

同社は去年の5月にポテトチップの「プリングルズ」を買収しました。このブランドは特に海外市場で普及する可能性を持っています。

同社の場合も収益は安定しています。

ケロッグの業績(ドル、2013年以降は予想、バリューライン)

同社の負債は75億ドルで自己資本の71%に相当します。インタレスト・カバレッジ・レシオは8.7倍です。

株価も安定的に推移しています。配当利回りは約2.7%です。

ケロッグ(K、データ出典:キャピタルIQ)

マコーミック

マコーミック(ティッカーシンボル:MKC)は北米のスパイス市場で45%のマーケットシェアを誇るリーディング企業です。同社の売上高のうち41%は北米の消費者向け市場から上がっています。次に大きなセグメントは業者向け市場で、売上高の28%を占めています。

同社の業績は安定的に推移しています。

マコーミックの業績(ドル、2013年以降は予想、バリューライン)

同社の負債は13億ドルで、これは自己資本の31%に過ぎません。インタレスト・カバレッジ・レシオは10倍で申し分ありません。

同社の株価も安定的に推移しています。配当利回りは2.0%です。

マコーミック(MKC、データ出典:キャピタルIQ)