今日のまとめ
- 薬品株は景気後退局面に強い
- パテント切れで薬価が急落するリスクがある
- M&Aにより製薬会社とバイオテクノロジー企業の境界がぼやけてきている
薬品セクターの概観
今日は薬品セクターの大型株を中心に紹介します。
一般に製薬会社の株はディフェンシブな性格を持っていると言われます。それは景気後退局面に強いという意味です。
普通、製薬大手はたくさんの種類の薬を販売しており、売上は安定しています。従って四半期決算におけるサプライズも少ないです。
しかし薬のパテントが切れると、ライバルのゾロ品(ジェネリック)が登場するため、薬価が急落します。
このため大ヒットした大型薬がパテント切れを迎える前後は、株価も神経質な動きになります。
製薬会社は、研究開発により新薬を出すことで成長を維持するのが理想です。しかしブロックバスターと呼ばれるような大ヒットは、だんだん出にくくなっています。
これは従来の低分子化合物のノウハウに基づく創薬手法が限界に達したことが関係しています。そこで近年ではバイオテクノロジー(生物学的製剤)が利用されるようになってきています。
バイオテクノロジーとは、遺伝子工学の切り貼り技術を駆使することで病原菌を大量生産し、ピンポイントで病気の原因を突き止め、その原因に直接働きかける薬を創薬しようとする試みを指します。
自社で創薬できない場合、ライバル企業を買収する方法で成長を確保します。その場合のターゲット企業は、製薬会社である場合もあるし、バイオテクノロジー会社の場合もあります。近年では製薬会社とバイオテクノロジー会社の境界が、ぼやけてきています。
大手製薬会社の多くは、パテント切れによる成長鈍化の問題に直面しています。その半面、財務的にはしっかりした企業が多く、高配当を維持している企業も散見されます。
| 銘柄 | ティッカー | PER | 配当利回り | 主力薬 |
|---|---|---|---|---|
| ブリストル・マイヤーズ | BMY | 26.1 | 3.08% | 2Plavix, Erbitux, Taxol |
| グラクソ・スミスクライン | GSK | 16.55 | 4.47% | Wellbutrin, Advair |
| イーライ・リリー | LLY | 13.19 | 3.80% | Cymbalta, Alimta |
| メルク | MRK | 14.07 | 3.54% | Singulair, Zetia |
| ノバルティス | NVS | 18.41 | 3.35% | Diovan, Lotrel |
| ノボ・ノルディスク | NVO | 22.71 | 1.88% | Victoza |
| ファイザー | PFE | 18.00 | 3.33% | Lipitor, Enbrel |
- 【注釈】
- ※ PER(株価収益率)は2013年のEPS(一株当り利益)に基づく
- ※ 配当利回りは2013年の予想DPS(一株当り配当)に基づく
- (予想はバリューラインより、株価は7月12日引値を使用)
ブリストル・マイヤーズ
ブリストル・マイヤーズは1858年に創業された歴史のある会社です。同社は癌、肝炎、感染症などの分野で事業を展開しています。主な薬にはスプリセル錠、タキソール注射液、レイアタッツ・カプセルがあります。
最近、同社株は人気化しています。その理由は非小細胞肺がん、腎細胞がん、進行性悪性黒色腫(メラノーマ)に関し、米国食品薬品局(FDA)がNivolumabをファスト・トラックに指定したからです。Nivolumabは現在、フェイズII試験中であり、PD-1とよばれるたんぱく質が作られるのを制限することにより人体の免疫システムが癌細胞を攻撃するのを助ける、いわゆる免疫療法(immunotherapy)と呼ばれるアプローチです。
これはユニークな手法であることから投資コミュニティにはこれが癌進行阻止の決定打になるのではないかという期待が広がっています。
しかし、過去にも大きなブレイクスルーが期待されて、実際にはそれほど効果が大きくなかったケースもあります。またそれ以外の新薬のラインナップは、平凡だと言えます。業績面でも、あまりパッとしません。

【略号の説明】
- DPS 一株当り配当
- EPS 一株当り利益
- CFPS 一株当りキャッシュフロー
- SPS 一株当り売上高
同社の場合、株価評価はNivolumabに対する期待から、かなり割高となっています。

グラクソ・スミスクライン
グラクソ・スミスクラインは英国のグラクソ・ウエルカムと米国を中心としたスミスクライン・ビーチャムが2000年に合併して出来た製薬会社です。うつ病、喘息/COPD治療薬、抗菌薬、抗インフルエンザウイルス薬など幅広い分野で事業展開しています。主な薬はパキシル、ラミクタール、アドエア、オーグメンチン、リレンザです。
喘息/COPD治療薬の分野は同社が得意とする分野ですが、若し米国のバイオテクノロジー企業、リジェネロン(ティッカー:REGN)がサノフィ(ティッカー:SNF)と開発中のDupilumabが承認された場合、防衛的見地からリジェネロンを買収することも考えられます。その場合の問題点としてはグラクソ・スミスクラインが既に305億ドルの負債を抱えている点です。

業績的には足踏み状態が続いています。現在の配当利回りは4.47%と魅力的ですが、若干ムリして配当を支払っている観もあります。

イーライ・リリー
イーライ・リリーは1876年にインディアナポリスで創業された製薬会社で、中枢神経系、内分泌・糖尿病の病気、骨粗しょう症、癌の分野に注力しています。おもな製品にはサインバルタ、アリムタ、ジプレキサなどがあります。
このうちジプレキサは既にパテント切れになっているため、売上高は急減しています。また現在、同社で最も大きな薬(全社売上高の25%)であるサインバルタも今年12月でパテントが切れる予定です。

同社株はパテント切れリスクを反映して軟調に推移しています。

メルク
メルクはドイツのE. Merckの子会社として1891年にニューヨークに設立されました。同社は呼吸器系疾患、循環器系疾患、糖尿病、皮膚疾患など幅広い分野に事業展開しています。主な薬としては、シングレア、ジャヌビアなどがあります。
主力薬シングレアは2012年第3四半期にパテント切れを迎えて以降、苦戦しています。ジャヌビアは海外市場では成長していますが、米国市場では競争激化のため頭打ちになっています。

同社の配当は安全です。主に配当利回り目当ての投資家に買われるべき株だと思います。

ノバルティス
ノバルティスはスイスのバーゼルに本社を置く製薬会社で、チバガイギーとサンドが1996年に合併して出来た会社です。同社は医薬品(66%)、ジェネリック(19%)、OTC医薬品(10%)などの事業部を持っています。医薬品では癌、循環器系、呼吸器系、中枢神経領域、臓器移植の際の免疫抑制剤、加齢黄斑変性治療薬などを展開しています。ディオバン、ラミシール、グリベック、ゾメタなどの薬を販売しています。
同社は比較的パテント切れリスクが小さく、新薬のパイプラインも充実しているし、財務的にも安定しています。

配当は安全です。

ノボ・ノルディスク
ノボ・ノルディスクは1923年にデンマークで創業された製薬会社です。創業当初からインスリンのリーディング・カンパニーを目指し、糖尿病(売上高の79%)の分野では世界最高水準の技術を持っています。同社はインスリンのグローバルなマーケットシェアで46%(数量ベース)を占めています。このほか成長ホルモン治療、血友病などの分野でも実績があります。
売り上げ構成は北米が45%、欧州が24%、その他が31%となっています。世界の糖尿病の市場は年率10%で成長しており、ノボ・ノルディスクは2004年以降、売上高ベースで常にトップを走っています。

同社の配当利回り(1.88%)は他社より低いですが、それは成長が十分あるので、配当で投資家を呼び込まなくても良いためです。

ファイザー
ファイザーは時価総額で世界最大の製薬会社です。ほぼ全ての疾患の分野で事業展開しています。リピトール、エンブレル、リリカ、プレベナーなどの薬があります。
同社の業績は主力薬リピトールがパテント切れとなったため足踏み状態にあります。

同社のバランスシートは強固です。ただそれ以外には見るべきものはありません。























































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