楽天証券経済研究所所属のアナリスト今中能夫による今週1週間の国内株式市場の情報がつまった週刊レポートです。
今後の相場の見通し、決算発表情報、個別銘柄の短期株価見通しなどを分かりやすく解説しています。

マーケットコメント

相場は大荒れだが、買い直す動きも出てきた

2013年6月3日の週の株式市場は、前週に続き、大荒れの展開となりました。

日経平均は、3日月曜日にアメリカでの金融緩和からの出口論再燃を受けて前日比512.72円下落しました。4日火曜日は上昇したものの、円高進行を受けて5日、6日と大幅下落し、6日終値は12,900円台に入りました。13,000円割れは4月5日振りです。ただし、7日金曜日は一時12,500円台まで下落したものの、後場に入って13,100円台に上昇する局面がありました。結局7日は前日比26.49円安の12,877.53円で引けました。

7日金曜日の相場を見ると、これまで金利上昇を受けて下落してきた不動産株、J-REIT株が買われました。円高進行を受けて電力株も買われました。一方、自動車、電機、機械、総合商社などの輸出・グローバル関連は、一時買い直されたものの続かず、トヨタ自動車、本田技研工業などの自動車株、村田製作所、京セラなどの電子部品株などで、安く引けるものが目立ちました。また、新興市場株は一時ストップ安になる銘柄が増えました。引けにかけて買い直されましたが、ガンホー・オンライン・エンターテイメント、ユーグレナ、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングなど大幅安となるものが多くなりました。

アベノミクス相場第一波の終わりなのか、ただし、下値の目処はつき始めた

2013年昨年11月14日をアベノミクスの起点とすると、約7カ月間アベノミクス相場が続いてきたことになります。しかし、アベノミクスがうまくいかないことが少しずつわかってきました。まず、4月4日の「異次元の金融緩和」宣言以降、長期金利が上昇しています。現時点では金融緩和はうまくいっていないと考えてよいと思われます。

物価は予想外にうまく上昇しています。円安による輸入物価の上昇を小売価格に転嫁する動きが、食品、高級ブランド品、家電製品などで活発です。東京都区部の5月の生鮮食品を除く総合指数は前年同月比0.1%上昇しました。6月には言って円高になっていますので、プラスが続くか不透明ですが、円安の効果が物価にはっきりと現れることがわかりました。これは、金利の上昇要因であり、また、給料が上がらなければ国民生活が苦しくなることを意味します。そして、景気が十分回復して、金利上昇による将来の国債の利払い費増加を吸収できなければ国家財政も苦しくなることを意味します。

アベノミクスの第3の道、成長戦略の今後も不透明になってきました。足元では金利がやや下落していますが、このまま景気が回復して金利が再び上昇すれば、減税は難しいでしょう。むしろ、将来の国債利払い費増加に備えるために増税の準備が必要になります。

また、安倍政権は成長戦略を具体的に打ち出す前に、憲法改正論議を長々と行いました。安倍政権と自民党の優先順位はひょっとしたら憲法改正が先であって、アベノミクスではないのではないかという疑念をもたれても仕方がないでしょう。

最後に、6月3日の週になって急速な円高が進みました。ユーロ高ドル安が波及したものですが、円安を追い風にしていたアベノミクス相場には打撃です。

詳細な検証は今後行うつもりですが、現時点でアベノミクスはうまく行っていないと言わざるを得ないかもしれません。結局、アメリカのQE3出口論やアベノミクスの滞り、株価急騰後の調整などが複合的に作用して、5月23日からの日経平均大幅下落が進行したものと思われます。

一方で、下値の目処もつき始めてきました。

  1. 日経平均は6月5日にチャート上の節目の一つである75日移動平均線(6月7日13,130.25円)を下回りました。
  2. また、「調整」というときの一つの目安である高値(5月23日ザラ場高値15,942.60円)から20%下落した水準が12,754円。
  3. 日銀が「異次元の金融緩和」を宣言した4月4日の始値が12,188.22円、終値が12,634.54円。
  4. 昨年11月14日終値8,664.73円から5月23日ザラ場高値15,942.60円の半値押しが12,303円。
  5. チャート上確認できる重要な節目が12,000円前後にあります。

このように、12,000~12,700円あたりに株価上重要な節目がいくつもあります。当面は最悪の場合、12,000円近辺に下落する可能性もあると思われますが、ここからは、リバウンド狙いで、あるいはファンダメンタルズで、個別銘柄に注目したいと思います。例えば、リバウンド狙いと今後のブームの可能性にかけるスタンスで、三菱地所、三井不動産、住友不動産などの大手不動産株や平和不動産、東急不動産などの中堅不動産株です(7日の不動産株の物色はリバウンド狙いもあったと思われます)。また、ファンダメンタルズでは、為替レートが多くの会社の前提レートである1ドル=90~95円を割らないのであれば、自動車(トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車、富士重工業、マツダ、日野自動車、いすゞ自動車、デンソー、アイシン精機など)、電機(ソニー、村田製作所、京セラなど)、機械(小松製作所、三菱重工業、日揮など)のファンダメンタルズに注目したいと思います。

当面は、為替、金利、株価と各種統計データから目が離せません。その中で底値を探る動きが出てくると思われます。

表1:楽天証券投資WEEKLY

グラフ1 日経平均株価:日足

グラフ2 日経平均株価:月足

グラフ3 信用取引評価損益率と日経平均株価

 

グラフ5 ユーロ/円レート:日足

マーケットスケジュール

2013年6月10日の週の日本での注目点は、10~11日の日銀金融政策決定会合です。

また、10日公表の1-3月GDP第二次速報、景気ウォッチャー調査、11日公表の5月のマネーストックも注目されます。14日は、5月21日、22日分の日銀金融政策決定会合の議事要旨も公表されます。

アメリカは、14日の5月の鉱工業生産指数、5月のミシガン大学消費者信頼感指数です。10~11日の日銀金融政策決定会合に注目したいと思います。