楽天証券経済研究所所属のアナリスト今中能夫による今週1週間の国内株式市場の情報がつまった週刊レポートです。
今後の相場の見通し、決算発表情報、個別銘柄の短期株価見通しなどを分かりやすく解説しています。
マーケットコメント
強い相場が続く
2013年5月13日の週の株式市場も引き続き強い相場となりました。前週末のアメリカの経済指標が良好だったことを受けて、13日月曜日から日経平均は上値を追う展開となり、15日に1万5,000円台に入りました。17日金曜日は100.88円高の15,138.12円で引けました。
為替レートも、今週に入ってから対ドルでは1ドル=102円台に入りました。対ユーロでは前週末から1ユーロ=132円台に入りましたが、足元では131円台になっています。
個別銘柄を見ると、輸出・グローバル関連株と新興市場株が値を飛ばす展開となりました。トヨタ自動車が10日終値で6,050円と6,000円台に入りましたが、13日以降も続伸し、17日にはザラ場で一時6,500円台を付けました。5月に入って株価が急伸している富士重工業は、良好な決算を発表した5月8日以降も続伸し、5月10日に2,000円台に入った後、5月17日にはザラ場高値2,444円を付けました。本田技研工業、日産自動車、マツダも同様に株価が上昇しています。また乗用車メーカーだけでなく、商用車メーカーの日野自動車、いすゞ自動車も好調な決算を反映して株価が上昇しています。
自動車各社の2014年3月期業績予想における為替想定レートは、1ドル=90~95円、1ユーロ=120~125円と足元の為替レートに比較して控えめですが、アメリカ、アジアでの自動車販売好調と、為替の両方の要因による業績上乗せ期待がもてます。自動車セクターの株価上昇は持続的なものになる可能性があります。
ソニーも10日終値1,787円から5月15日にはザラ場高値2,146円を付けました。その後調整していますが、15日の日経新聞1面で報じられた、NTTドコモがソニーの「エクスペリア」とサムスンの「ギャラクシー」の2シリーズに販促費を集中するという記事が好感されています。今年の夏から約1万円でソニー製スマートフォンが購入できることになりそうですが、スマートフォンやタブレットPCで音楽を聴いたり映画やテレビ番組を見ることが、アメリカだけでなく日本でも一般的になり始めています。ソニーの低価格スマートフォンとソニーの音楽、映画、ゲーム事業は相性がよく、相乗効果が見込めそうです。
一方、不動産株、J-REIT株は、金利上昇が重石になって株価はパッとしない展開でした。株価の好調と景気回復(期待)によって国債利回りが上昇していますが(グラフ10)、このためJ-REITの分配金利回りと国債利回りとの格差が縮小しており、これがJ-REIT株の下落に繋がっています。J-REITの株価下落は物件取得のための資金調達力に影響しますので、J-REITは物件取得増加→地価上昇を引き起こす大手プレーヤーであるという構図に変化が生じることになります。このため、J-REITの株価変調が不動産株にも波及したと思われます。
新興市場は調整か
新興市場でも週前半に値を飛ばすものが多くなりました。前週に好調な決算と株式分割を発表したガンホー・オンライン・エンターテイメントは10日終値104万2,000円から大幅高して14日ザラ場高値163万3,000円まで上昇しましたが、さすがに急騰の反動がでており、一時110万円台まで急落しました。17日は126万円で引けました。
安倍政権の3本の矢(成長戦略)の焦点になっているバイオ関連では、iPS関連のタカラバイオは5月9日ザラ場高値4,295円が17日終値3,280円になっています。ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングも5月8日ザラ場高値88万7,000円が同じく65万1,000円になっています。
このように、新興市場が全般的に調整しています。これが、単なるスピード調整なのか、あるいは、株価が過大に評価された反動がでているのか、現時点はまだわかりません。ただし、後者であれば新興市場の調整は長引く可能性があります。
なお、17日のマーケットを見ると、新興市場、不動産関連株ともに、これまで調整していたセクター、銘柄が反発しています。自動車、電機中心に輸出グローバル関連は持続的な株価上昇が期待できそうですが、新興市場、不動産関連株の反発が持続的なのかどうかが、20日の週の相場の一つのポイントとなりそうです。
株式市場の外部環境は改善中
もっとも、アメリカ経済の回復、アジアの成長持続に、日本の景気回復(1-3月期実質GDPは個人消費と輸出がけん引し、前期比年率換算3.5%増)が加わっており、株式市場を取り巻く経済環境はよくなっています。当面は日経平均15,000円台を固めた後、16,000円を目指すことになると思われます。
ちなみに、15,000~16,000円のレンジで、月足で見た下方傾向線と日経平均が接触すると思われます(グラフ2)。この下方傾向線を突破してなお上昇が続けば、大勢下落から大勢上昇へ相場が転換することになります。この数週間は注目点の多い相場になりそうです。
表1:楽天証券投資WEEKLY
グラフ2 日経平均株価:月足
グラフ3 信用取引評価損益率と日経平均株価
グラフ4 ドル/円レート:日足
グラフ5 ユーロ/円レート:日足
マーケットスケジュール
2013年5月20日の週の日本での注目点は、21、22日の日銀金融政策決定会合と、22日の4月の貿易統計です。
アメリカは、22日の4月の中古住宅販売件数、23日の4月の新築住宅販売件数、24日の4月の耐久財受注です。
20日の週も、株価、為替、金利に影響を与えるイベントが多くなりそうです