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今中能夫「楽天証券投資Weekly」
今中 能夫
楽天証券投資weekly セクター・投資テーマ編
毎週金曜日夕方掲載。楽天証券経済研究所アナリスト 今中能夫の、今週1週間の国内株式市場の情報がつまった週刊レポートです。注目セクターと投資テーマに重点を置いて、相場と銘柄を分かり…

今中能夫「楽天証券投資Weekly」

2013/3/1
今週から「楽天証券投資Weekly」を発行します。従来お送りしてきた「信用取引評価損益率コメント」「決算発表銘柄コメント」を発展的に統合したものです。
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楽天証券経済研究所所属のアナリスト今中能夫による今週1週間の国内株式市場の情報がつまった週刊レポートです。
今後の相場の見通し、決算発表情報、個別銘柄の短期株価見通しなどを分かりやすく解説しています。

マーケットコメント

強い相場が続く

2013年2月25日の週の株式市場は、高値波乱の展開となりました。前週末の日米首脳会談で日本がTPP交渉に参加することが決まったこと、25日月曜日の日経新聞が、日銀新総裁候補として、財務省OBで金融緩和論者といわれる黒田アジア開銀総裁を起用する方針と報じたことを材料に、日経平均は大きく上昇しました。25日終値は前日比276.58円高の11,662.52円となり、2008年9月振りに11,600円台に乗せました。

その後は、イタリア総選挙の結果、安定政権が困難になり、緊縮財政が転換せざるを得なくなることがわかると、日経平均は急落、26、27日と大幅下落し、27日は前日比144.84円安の11,253.97円で引けました。

しかし、27日の日経夕刊でアメリカFRBのバーナンキ議長が、日本の金融緩和政策は為替目的ではないと発言したことが伝わり、また、27日のNYダウが前日比175.24ドル高と大幅高になると、28日の東京市場はほぼ全面高となり、日経平均は前日比305.39円高の11,559.36円で引けました。3月1日も堅調で、11,600円台で引けました。

このように、悪材料が出て株価が下がっても、すぐに良い材料がでて、マーケットがそれを評価して再び高くなる相場が続いています。週によって高値持ち合いや高値波乱もありますが、この中で小刻みに調整が行われていると思われます。前回までに本欄で指摘したある程度の下落幅と期間を伴う株価の調整は当面起こらないかもしれません。2月4日の週からの高値持ち合い相場で調整は一応終わったと考えても良いように思われます。

2013年3月期3Q決算はすでに終了しましたが、株式市場ではその中身の消化が進んでいるところです。これまで本欄で指摘したように良いものも悪いものもある決算でしたが、今の株式市場は3Qの結果と、来期2014年3月期業績予想を株価に織り込む動きを見せています。

足元の株式市場では、特に輸出関連銘柄で日によって大幅高する銘柄がでています。円安メリットを加味した来期の業績変化率を株価に織り込み始めていると思われます。ここで重要になるのが、表2のような企業別の為替感応度と業績に対するインパクトです。表2は限定的ではありますが、円安メリットが大きく、業績に対するインパクトが大きい銘柄を並べています。詳しくは今回の特集で述べます。

来期業績を織り込みに行く輸出株中心の相場は今後も続く可能性があります。特に円安メリットの大きい自動車(トヨタ自動車、本田技研工業、富士重工業、マツダ、デンソーなど)、建設機械(小松製作所など)、電機の中で大手電子部品(村田製作所など)に注目したいと思います。また、鉄鉱石市況が上昇していること、TPP交渉参加によって、日本の農業がある程度自由化される可能性があること、米国産シェールガスの対日輸出が解禁される可能性があることから、総合商社(三菱商事、三井物産、丸紅など)にも注目したいと思います。IHI、三菱重工業などのプラント株も、シェールガスの輸入に伴うLNGプラントの新増設、日本の老朽火力発電所の更新、今後予想される防衛予算増加などで注目されます。

表1:楽天証券投資WEEKLY

グラフ1 日経平均株価:日足

グラフ2 日経平均株価:月足

グラフ3 信用取引評価損益率と日経平均株価

マーケットスケジュール

2013年3月4日の週のマーケットスケジュールを概観します。

日本では、3月6、7日に日銀政策決定会合が開催されます。8日には、景気ウォッチャー調査が公表されます。

アメリカでは、6日に1月の製造業新規受注が公表されます。同日にベージュブック(アメリカ地区連銀経済報告)も公表されます。7日は、1月の貿易収支が公表されます。8日は2月の雇用統計が公表されます。

日本の日銀政策決定会合と景気ウォッチャー調査、アメリカのベージュブックと雇用統計に注目したいと思います。アメリカ景気の回復が確認されると円安が進む可能性があります。

特集:2013年3月期3Q決算のまとめ

アベノミクス

今回の特集は2013年3月期3Q決算のまとめです(これは2月27日開催のネットセミナー「2013年3月期3Q決算を読み解く-転換期を迎えた日本企業のファンダメンタルズ」をもとにしていますので、そちらもご覧ください)。

まず、「アベノミクス」とは何かというテーマで、日本経済を概観してみたいと思います。日本の実質GDPは低成長が続いており、四半期ベースでみるとプラスとマイナスの間を往復しており、安定していません。このように低成長が続いているのは、日本の物価水準が趨勢的に低下し続ける「デフレーション」が起きているからであり、日本銀行がこれまで有効な施策を採ってこなかったからであると「アベノミクス」では考えます。

そこで、大幅な金融緩和でデフレーションを止めて物価水準を上げようとします。物価が下落から上昇に転じれば、消費者は物の価格が上がる前に物を買おうとします。企業は原材料が安いときに物を作って高く売ろうとします。また、より多くの製品を作ろうと設備投資を増やそうとします。こうして、景気が良くなるという理屈です。

物価水準を上げるために、大幅な金融緩和をします。金融緩和で金利が低下すれば、預金よりも物を買うことを選択する消費者がふえるというわけです。また、金融緩和は円安になりますから輸入物価の上昇を通じて国内物価が押し上げられる効果が期待できます。さらに、金利が下がれば、株、土地の価値も上がりますから、資産効果が景気を刺激します。

今の日本の物価水準を見たものがグラフ5、6です。グラフ5は、企業間取引の物価を調べたもので、輸入物価、輸出物価、国内企業物価の3つがあります。輸入物価は上昇していますが、昨年11月からのドル円レートの下落率は19%ですので、まだまだ上昇する余地は大きいと思われます。また、輸入物価の上昇は国内物価を押し上げることが期待されます。すでに、我々の足元で、食品、日用品、外食費、理容美容、高級ブランド品、灯油、ガソリン、電気代(原料費の調整分)などが円安のために値上げされています。加えて、7月には電力料金が値上げされます。家庭用は10~15%、企業向けは15%以上の値上げになりそうです。

従って、これから夏にかけて各種の物価が急速に値上げされていくと思われます。値上げが続けば、コンセンサスよりもかなり早く今年夏にも消費者物価上昇率がゼロ近辺に戻る可能性があります。

日銀新総裁が大幅金融緩和を実施すれば、金利水準がさらに下がり、物価が上昇する結果、実質金利(名目金利-期待インフレ率、ここでは消費者物価指数の前年比)が低下すると思われます。実質金利の低下は株価と地価の上昇要因ですが、アメリカの実質金利が株高と景気回復で上昇が始まっているため、ドル高円安要因でもあります。

このようにアベノミクスが成功すれば、実質金利の低下(ゼロ~マイナス)、円安、デフレからの脱却、株価と地価の上昇、景気回復という連鎖が実現できるでしょう。

もちろん、アベノミクスには問題もあります。物価水準が急速に上昇して、早期に1~2%、あるいは2~3%になった時に給料が上がっていなければ、所得が目減りして国民生活はその分苦しくなるでしょう。

また、実質金利をゼロ~マイナスの状態に長く置くとバブルが発生し、その後崩壊してしまうので、物価上昇率が日銀目標の2%に達した時点で、通常の金利に戻す必要があります。要するに物価上昇率が2%になれば、遠くない時期に長期金利が今の1%弱の状態から2~3%に、1~2%分上昇することになります。

しかし、日本は今年度末で約800兆円の国債発行残高を抱えており、年間約170兆円の国債を発行していますので、金利上昇による利払い増加は、いずれ国家予算(来年度予算で92兆円)にとって負担となってくると思われます。

また、今以上の円安になれば、貿易摩擦、通貨摩擦など外国との摩擦を増やすことになります日本は中国との間で場合によっては戦争になるかもしれない厳しい問題を抱えています。国際政治上の争いは注意しなければならない問題です。

アベノミクスでは、既に円安による輸出企業の競争力向上と株高、資産効果による特に高額商品の消費増加という成果が表れています。ここからは大幅金融緩和が実際に発動されるとすると、更なる円安と物価上昇をもたらす可能性があります。しかし、上述のような問題点と、それらが引き起こすかもしれない円レートの歯止めがかからない下落あるいは急落、国民所得の目減りによる内需減少の可能性にも気をつける必要があります。

3Q決算の中味

決算動向を見ると、良いものもあり悪いものもありました。今後の投資戦略を考えると、アベノミクスが成功しても失敗しても、現在の円安が維持されるか、一層円安になる可能性があります。また、失敗した場合は、日本以外で利益を出しているセクターを選ぶ必要があります。内需系よりも輸出系、特に自動車セクターに注目したいと思います。

自動車

良い決算の筆頭は自動車セクターです。トヨタ、富士重工業、マツダ、日野、スズキ、ダイハツなどが通期業績見通しを上方修正しました。理由は円安、アメリカ、アセアンでの販売好調、日本での堅調などです。ただし、上方修正しなかった会社、3Q業績が悪化していた会社もありました。本田技研工業は、中国、欧州の悪化と為替の予約差損のために上方修正しませんでした。日産自動車は中国の悪化が大きく響きました。

円安メリットは4Qから本格的に発生すると思われます。来期2014年3月期の自動車セクターの業績変化率はかなり大きくなると思われますが、円安メリットが業績と比較してどの程度のものかを試算したものが表2、更にトヨタを例にとって円安メリットを含む業績がどの程度拡大するのかを試算したのが表3です。自動車の為替メリット、特にトヨタのそれが他の業界に比較して大きいことがわかります。また、足元の円安が維持されれば、トヨタの業績拡大が大きくなることも予想されます。この試算では2015年3月期に過去最高営業利益2兆2,704億円(2008年3月期)を更新すると思われます。

表2:自動車、電機等の主要企業の為替感応度

表3:トヨタ自動車の業績予想(試算)

電機

一方で、電機は産業用、民生用、電子部品の各分野で問題がありました。日立製作所は中国向けの悪化などの理由で下方修正しました。民生用電機3社(ソニー、パナソニック、シャープ)は営業黒字でしたが、リストラによるものが大きく、家電販売は良くありませんでした。

特にデジタル家電の落ち込みがひどく、テレビ、デジカメ、ブルーレイディスクプレーヤーなどのデジタル家電の主要製品が軒並み前年割れでした。テレビは韓国製品のほか中国メーカーの格安製品がアメリカ市場に進出しており、赤字を最小限にしようとすると売れません。デジカメは低価格機種がスマートフォンに喰われています。ブルーレイディスクプレーヤーはHDDプレーヤーに侵食されたり、インターネットによる映像配信の普及で使わなくなっているようです。このようなデジタル家電需要の構造変化に民生用家電メーカーがどう対応するのか、解はまだありません。ただし、ソニーは映画、音楽、金融が安定した収益をあげており、ソニーはエンタテインメントと金融のコングロマリットであると再評価しても良いかもしれません。

電子部品は、村田製作所のスマートフォン向け、タブレット端末向けが好調でした。円安メリットが大きいため、来期の増益幅が大きくなる可能性があります。ただし、スマートフォンの動きには注意が必要です。量的に伸びても安いスマートフォンは安い部品を使います。

また、HDDからSSD(フラッシュメモリを使った記録媒体)への流れが強くなってきたため、HDD関連大手の日本電産(HDD用スピンドルモーター最大手)、TDK(HDD用磁気ヘッド最大手)が大幅減益となりました。この流れは変えようがないと思われます。

ゲーム・エンタテインメント

日本型ソーシャルゲームの世界で、従来のようにディー・エヌ・エーやグリーのようなプラットフォームを通さずに、直接iアプリなどを通して配信した「パズル&ドラゴン」(ガンホー・オンライン・エンターテイメント)が大ヒットしています。スマートフォン時代になると、グリー、ディー・エヌ・エーを通すと開発会社にとって余計なコスト負担が増えるため、「パズドラ」の成功に触発されて、グリー、ディー・エヌ・エーを外す動きが出てきそうです。一方、面白くて低価格で遊べるゲームの開発競争が激化しつつありますので、業界全体の利益がふえるかどうか不透明です。

任天堂のWii Uも振るいませんが、これは結局面白いソフトが出てこないからです。高性能機になるほど、ソフト開発は難しくなっています。12月にソニーが新型機を出すと言っていますが、ゲームセクターへの投資には注意が必要と思われます。

一方、伝統的な遊びの分野では元気が回復しています。音楽ではエイベックス・グループ・ホールディングスやアミューズの業績が堅調で、エイベックスは業績見通しを実質上方修正しました。CD売上高が回復していること、K-POP中心にライブ売上高が増えていることによります。

その他のセクター

建設セクターには復興予算等の予算増額という追い風が吹いていますが、問題も出てきました。人件費の上昇と、輸入資材を中心とするコストアップ要因が発生しています。大手建設(大成建設、大林組など)や専門建設(NIPPO、協和エクシオなど)はコストアップを吸収して業績を伸ばすことが出来ると思われますが、準大手、中堅建設会社にはコストアップによって業績変化率が鈍くなる会社がでてくる可能性があります。

建設機械は、地域的な需要のばらつきがあります。日本(復興需要)、北米(建設とシェールガス開発)、ロシア(資源開発)、アフリカ(資源開発)、オーストラリア(資源開発)、南米(建設と資源開発)は順調に伸びていますが、中国が春節後回復するかどうか不透明で、インドネシアの石炭鉱山向けは悪化したままです。ただし、コマツの円安メリットは自動車ほどではないにせよ大きく、来期は業績回復に向かうと思われます。

商社は、3Qは鉄鉱石価格下落の影響を受けました。ただし、10月から鉄鉱石市況が回復に向かっており、4Qはこのメリットがあると思われます。また、外貨ベースの取引には円安メリットがあります。また、海外に保有している権益に円安で含み益が生じているものがあります。加えて、5大商社はいずれも北米にシェールガス権益を持っており、シェールガスの輸入解禁が実現すれば、シェールガスの取引、LNGプラントの建設などで事業拡大が見込めると思われます。

表4:2013年3月期3Q決算-当期純利益、営業利益:1

表5:2013年3月期3Q決算-当期純利益、営業利益:2

表6:2013年3月期3Q決算-当期純利益、営業利益:3

表7:2013年3月期3Q決算-当期純利益、営業利益:4

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