投資額は大きくはないがこれがむしろチャンス
若い人ほど投資を行わない理由として、いくつかの誤解があるように思います。よくある若い人の投資に関する誤解としては、
- 「もっと大人になってからやるもの」とか
- 「まとまったお金でやるもの」あるいは
- 「なくしてもかまわないお金ができたらやるもの」
というものがあるようです。しかし、いずれも根拠のない投資ルールです。
まず投資に年齢は関係ないことは投資経験者なら誰でも分かることでしょう。成人である必要すらありません。しかし、投資未経験者はそれを知らないまま、親の年齢ぐらいになってやるものと思っていたりします。残念ながらこういう人は40代になっても投資をスタートしないものです。
「まとまったお金が投資には必要」というのも全くの誤解です。預かり資産残高を増やしたい金融機関職員だけが得をする投資ルールでしかありません。あるいは投資をしたことがないFPの無意味なコメントだと思うべきです。
個別株式であろうと数万円で買える銘柄はたくさんありますし、投資信託であれば1万円前後で一口が買えます(投資信託の場合、1円単位で買えるものも多いので、「1万円で買える」というフレーズを見直してもいいくらいです。)。
むしろ、少額で投資をするほうが、若い人にとってはメリットが大きいくらいといえます。少額の投資なら損失も少額になるからで、マーケットの仕組みや株価形成の不条理を理解する前に投資をするなら、少額でスタートすることが役立つというわけです。
(勉強し尽くしてから投資をすると、何年もムダに時間を使ってしまいます)
例えば、1万円投資したとすれば、リーマンショックが来ても損失は2,500円くらいですむでしょう。2,500円の損なら、服の買い物の失敗のほうがダメージが大きいはずです。つまらない飲み会1回分だと気を取り直すこともできます。
しかし、投資の実体験を得たという「経験」は金額が少なくても残ります。致命的な損失額は生じずに済み、マーケットの騰落という貴重な経験を将来の肥やしにすることができます。
それに、マーケットには初心者優遇レートもないですから、若い人の投資ほど、失敗に備える意識が重要といえます。
新卒向けの資産運用の方法について
新社会人の場合、「投資の経験」が最重要ポイントですから、「証券会社選び」や「運用方法の選定」についてはほとんど自由でもかまいません。唯一条件をあげるとすれば「少額であれば」ということにつきます。
楽天証券掲載のコラムでこういうのもおかしな話ですが、「最初の投資経験はどこの証券会社でもいい」と思います。むしろ開設までのステップを乗り越えることが最大の課題です。投資に慣れてくると機能や商品性を理由に証券会社の選択ができるようになりますし、そこまでのレベルになると証券口座開設を苦労と思わなくなりますから、それほどの問題ではありません(経験を積むほど楽天証券の開設を検討するはずです、と言ったらヨイショが過ぎるでしょうか?)。
あえて証券口座選びにアドバイスをするなら、銀行ではなく証券会社で開設するほうがいいでしょう。商品数の違いや商品選択の違いを考えれば、証券会社が勝ります。ただし投資信託の取り扱いが少ない証券会社より、本数の多いところを選ぶといいでしょう。いきなりNISAでもかまわないと思います(NISA口座は単体では作れず、証券口座を同時開設することになります)。
投資商品については、「ベターな投資手法」をアドバイスするならインデックス型の投資信託ということになりますが、20代前半で投資経験を積むという目的を考えれば、いろいろ首を突っ込んでみるくらいの好奇心があってもいいでしょう。株式投資と債券投資の経験を積んでおくこと、外国にも投資範囲を広げてみることが理想ですが、少額のうちにいろいろやってみるのも経験として役立ちます。アクティブファンドもありですし、FXも少しやってみていいでしょう。少額で試してやはりうまくいかないかと撤退するくらいでもいいのです。
何度も繰り返しますが「少額」がポイントです。いろいろチャレンジして「投資で儲かった経験」と「投資で損した経験」を得ておくことが20代前半の投資課題といえます。実際に売り買いをすると、マーケットの情報も熱心に収集するようになりますし、売買ツールの使いこなしにも習熟することができます。教科書を何度も読むより、一度の実戦、というわけです。
そして、生きた投資というのは「楽しい」ということも経験してほしいと思います。自分の投資対象が見込みがあたって、ぐんぐん値上がりしたときの喜びは、筆舌に尽くしがたい感動があります。世の中の動きが自分の資産価値の変動につながることも、会社員だけでは味わえない経験です。楽しみあっての投資という部分も、やはり実戦でなければ分かりませんし、少額でも十分に醍醐味を味わうことはできるはずです。
20代の後半あるいは30代以降に、投資金額が増えてきたところで、冷静な投資判断、合理的な投資選択ができれば、20代の数万円の負けはいくらでも取り返すことができることでしょう。(最初から負ける話ばかりで恐縮ですが、実力もない投資初心者に必勝を約束するほど筆者は厚顔無恥ではありません)