2014年、譲渡益課税が本則の20%に戻る

本コラムが掲載される日には、2013年の軽減税率での売却期限は終了していることと思います(25日までに売却すれば年内に受け渡しされ、約10%の軽減税率でよい)。前回のコラムでは、年内の売却と「その後」の投資についていくつかのパターンを紹介しましたが、利益確定をしたら達成感が生じてしまい投資をやめてしまうことのないよう、2014年以降も投資の世界にとどまりチャレンジを続けてほしいと思います。

さて、あえて譲渡所得の税率が上がった2014年以降も投資を続けるということは、「なんとなく投資」ではなく、意識と意図をもって投資を行わなくてはなりません。つまり、投資のステップアップを意識せざるをえないということでもあります。今回はまだ投資ビギナーの読者が戦略的に2014年以降の投資をどう考えていくかまとめてみたいと思います。

2014年以降の投資は「売らない」「部分的に売る」する投資を考えてみたい

2014年以降の投資が、2013年までの投資と変えるべき戦略があるか、といえば投資の考え方そのものに決定的違いが出るわけではありません。しかし、ひとつ言えることは「売るたびに高い税率になる」ことへの戦術レベルでの対策が必要になるということです。

同じ利益確定であっても、今までより税率が高くなるわけですから、手元に残る資金は少なくなります。となれば、ひとつは「できるだけ売らない」戦略をとることが考えられます。
どんな高い譲渡益課税であっても、売らなければ課税されることはありません。頻繁な売買を伴う投資手法では、約20%への引き上げは大きなダメージですが、年に資金が一回転もしないようなスローペースで資産形成をすれば、こうした課税チャンスを逃れることができ、複利効果も高まります。

「売らない」は投資戦略だとみなさない人が多いと思いますが、実は立派な投資方法のひとつだと思います。

また「部分的に売る」という戦略もあります。私たちは投資というものは「全額売り」「全額買い」というように激しく売り買いするものだと考えていますが、そのようなルールはどこにもありません。「ETFで300万円投資したら350万円に値上がりしたので50万円分利益確定」というようなアプローチで投資したってかまわないわけです。

ただしこの場合は、単位株の問題で「全部売る」しか選択できないという問題もあります。投資信託やETFを使う場合は、任意の金額で売却がしやすいので「部分的に売る」が行いやすい投資方法の代表格です。

売却を控えつつもリスクを管理ていく投資アプローチを考える

資金ニーズが遠いものについて、リスクをとって投資を行う場合、リバランスの問題が常に出てきます。本来取るべきリスクウエイトを逸脱した場合にこれを調整するもので、「含み益が出た資産の一部を利益確定する」「値下がりしている資産を買い増す」が考えられます。「なんとなく投資」から卒業するために意識して欲しい投資行動のひとつです。

このとき「売却によるポジション修正」が前提だと思いがちなのですが、「新規拠出のセーブ/追加によるポジション修正」も考えてみると、「売る」という行動を減らしてリバランスが可能になります。

仮に「投資5:預貯金5」のリスクウエイトを方針としたいたところ、株価の上昇に支えられ「投資6:預貯金4」のウエイトに偏ったとします。リバランスの発想なら1割相当のリスク資産を売り「5:5」のポジションに戻すべきでしょうが、20%課税を通り抜けなければなりません。もちろん売却手数料も生じます。

個人投資家においてはもっと融通を利かせてもいいわけです。つまり、しばらく投資はお休みして「5:5」になるまで預貯金を積み増す、という方法が考えられます。あるいは、株式の購入は控え債券投信の追加購入をするような形で投資割合を調整します。これならリバランスを実行しつつ、売却はまったく行わずにすみます。

企業年金運用などでは「ニューマネー」「オールドマネー」という整理をすることがあります(ちょっと古い概念ですが)。ニューマネーとは追加掛金で、オールドマネーというのはすでに積み立てている資産です。公的年金もそうですが、機関投資家は売買だけで資産を増やすのではなく、新しい掛金や保険料の追加投入もリスク管理において大きな役割を持っています。その際、新しい追加投入資金でどのように投資を行うか常に注意を払っています。

私たちの個人投資においてもそろそろ「すでにある資産の売買のみで増やす」というアプローチから、「売買と新規資金投入のバランスで増やす」に変えていく時期ではないかと思います。

ただし難点は、調整に時間を要することです。直接売買を伴うリバランスは一瞬にしてポジション調整が完了しますが、毎月のお金の追加で行う調整には時間がかかります。また、調整状況を適宜ウォッチし、実行する面倒が生じるのも悩ましいところです。

もしかすると10年後には新たなる譲渡益課税の軽減措置がある?

証券税制は見直しの繰り返しです。購入時期や保有期間で譲渡益の税率を考えてみたり、確定拠出年金のように投資目的によって税制優遇に差をつけてみたりします。恒久化されるものもあれば、時限措置として導入されるものもあります。筆者がFPの資格試験を受けたとき、株式の譲渡益の計算方法はかなり面倒でしたが、今では歴史を語る以外に何の役にも立ちません。

これは逆にいえば、「譲渡益課税が有利になるときまで、利益確定は待つ」くらいで考えてみてもいいということです。2014年が約20%の本則課税に戻ったとしても、もしかすると2017年か2018年には約10%に戻るかもしれません。あるいは長期保有した投資について優遇税制を設ける改正が実現するかもしれません。

理想としては、「資金ニーズの有無」だけを売却理由に据え、税率など気にせず悠々と必要な金額を売却したいところです。若干の損失が出ていようが、あるいは含み益が相当あろうが、「必要だから必要な額を売る」となれば、これは売却タイミングを考えるよりよほど意味がある行動になります。なんとなく投資ではなく、中長期的な投資が実行できれば、そうした売却も実行可能であるはずです。

もちろんNISAも検討してみたい

もちろんのことですが、2014年の投資にNISAを活用することは税率を考えれば合理的な行動です。譲渡益が引き上げどころか、かからなくなるわけですから、取り入るリスクの範囲内で活用してみるといいでしょう。

先ほどの指摘の「売らない」戦略は、NISAにおいても有効です。むしろ、利益確定をすれば税制優遇も終了するNISAのほうが「売らない」戦略が重要になってきます。2014年以降の投資戦略は「売らない」をキーワードにしてみてはどうでしょうか。

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