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公的年金運用の大統一から学ぶヒント
山崎 俊輔
なんとなくから卒業!実践・資産形成術
誰にとっても重要で大切な「年金」と「老後資金準備」について、「漠然とした不安」から卒業しよう! これからの人生のマネープランを、主体的にかつ前向きに組み立てるためのヒントを、ファ…

公的年金運用の大統一から学ぶヒント

2013/8/14
今回は、国の年金運用からヒントを学ぼうと思います。国もけっこう間抜けなことをやっていたりしますし、逆にしたたかに運用をやっている部分もあります。国の場合、船頭多くして船、山に登る、という面があるのですが、これは一人の独善で運用が行われないようにするとどうしても生じる面でもあります。
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今回は、国の年金運用からヒントを学ぼうと思います。国もけっこう間抜けなことをやっていたりしますし、逆にしたたかに運用をやっている部分もあります。国の場合、船頭多くして船、山に登る、という面があるのですが、これは一人の独善で運用が行われないようにするとどうしても生じる面でもあります。

個人の資産運用においては船頭は自分ひとりですから、国の間抜けな部分はまねをせず、個人に役立つ部分を取り入れて「なんとなく投資」から卒業をしていけばいいと思います。

公的年金の運用主体ごとに運用方針を比較してみる

さて、国の年金運用について話題に取り上げるのは、共済年金と厚生年金の制度的一元化を控え、運用の方針についても基本方針の統一を図ろうという準備が行われているからです。「積立金基本指針に関する検討会」というのがそれで、厚生労働省の年金局長のもとに検討会がおかれ、議論がスタートしています。第一回は、各団体の運用方針が報告されました。

私は年金関連の検討会や審議会はよく傍聴しにいくので、今回も時間を作って出かけてきました(当日の資料はすでにWEBに開示済みです)。今回の傍聴で開示された資料を基に、各団体のポートフォリオの比較表にまとめてみたのが、以下の表です。

同じ公的年金制度ながら、国内債券へのウエートは60%~80%と差があり、ずいぶんポートフォリオが異なることがわかります。しかしいずれも国内債券のウエートが高く(制約によって国債等を一定以上保有しなければならない団体もある)、外国債券や外国株式への投資割合は20%程度にとどまります。また、厚生年金の運用を担当し報道にもよく露出するGPIFと、あまり情報開示のされていなかった地方公務員共済、私学共済が近いポートフォリオというのも興味深いところです。

加入者数と受給者数にもずいぶん違いがあることがよくわかります。現役加入者が減少(あるいは高年齢化)し、受給者が増加していく場合、年金制度としては運用のリスクが取りにくくなります。企業年金制度においては、会社ごとの会計ですから、そうしたマネジメントが必須ですが、公的年金が一元化されるのであれば、各制度ごとの成熟度は気にする必要はなく、掛金率は統一されます。運用においても日本全体での効率的なリスク管理を行うべきです。

同じ表に、2012年度の運用成績についても掲載しています。GPIFがもっとも高く、国家公務員共済がもっとも低くなっています。この2者についてはポートフォリオの違い(簡単にいえば国債保有比率)の多少が運用成績に大きく跳ね返った格好です。この期間は円安と急激な国内株価の上昇があったためです。
GPIFに近いポートフォリオの地方公務員共済と私学共済はGPIFにはパフォーマンスで及びませんでしたが、これもほとんどはポートフォリオに占める国債比率で説明できそうです。

運用方針はすりあわせるが財布は合わせないのはNG

当日の議論はスタートラインというところですが、運用方針のすりあわせを議論しつつ、資産の統合は行わない点について委員から意見が相次ぎました。それぞれの年金運用方針はそれぞれの加入者数の将来予測と保険料の徴収見込み、受給者数の将来予測と給付の増大の見込みを勘案しつつ、取り得るリスクを検討した結果です。厚生年金と共済年金が制度的に一元化するのであれば、運用も一体化すればいいのですが、どこかの権益によるものなのか、大ごと過ぎるので面倒が勝ったのか、資産管理の統合は見送られました。

個人にとっては、これは「まねすべきではないポイント」のひとつでしょう。複数のアカウントを持つ場合には、複数持つ合理的な理由が必要であり、制度上やむを得ない場合においても可能な限り少なく持つほうが効率的です。特に公的年金運用の場合は残高に比例して手数料率が低くなりますので、財布をひとつにしたほうがいいことは明白です。GPIFの投資コストは0.2%程度と思われますが、どんなインデックスファンドでもかないません。資産規模の小さい他の共済が独立運営を維持する理由が不明です。

個人の運用でいえば、中途半端な金額の投資信託を複数保有したり、保険契約をいくつも持つことがこれに似ています。たいていの場合、ETFに統合して運用手数料の引き下げを図るほうが効率的でしょう。年金運用の変なマネはしないようにしたいところです。

運用主体同士の競い合いは無意味と考える

また、検討会の質疑で、管理を分ける理由について「競い合いでもさせるのか」と委員が発言したところ(文脈から察するに競い合いをさせるなんてムダだから資産も一元化せよ、という意味と思われる)、事務局の回答は「切磋琢磨しながらそれぞれが運用管理を……」というものでした。

これはあまりよろしくない回答で、個人にとっても反面教師とすべきでしょう。それぞれが異なる条件設定のもと運用を行っている投資計画について、結果のみを取り上げて善し悪しを比較するべきではありません。また、成功報酬的なアプローチが健全な競争をもたらすと考えるのは強欲さと無垢なお人好しとが混在している発想です。残念ながら厚生労働省の担当者は金融の専門家ではないので、よくある答弁をしてしまったようです。

個人においても、複数の投資商品は金融ビジネスの世界で競い合っているはずだから、いくつももっておこうという発想はあまり役立たないと考えてみてはどうでしょうか。特に個人が投資信託を買って、ファンドマネージャーに応援の気持ちを込めたところで、資産全体からすれば0.01%くらいの受益者でしかないはずです(仮に100億円のファンドを100万円保有したとすれば、0.01%保有したことになる)。また、あなたのために便宜を図ってくれることはありえません(むしろ法令に反する)。

競い合いや応援の気持ちを、成績の比較に持ち込まず、運用評価はクールに行うことが必要です。

個人が年金運用から学べることは少なくない

今回の資料からは、各投資主体がどのような前提をおいてポートフォリオを作っているのか、アセットクラスごとの期待リターンやリスク、相関係数などを開示したわけではありませんので、ポートフォリオをまねる善し悪しについては論じていません。

しかし、「これくらいの資産配分でこれくらいのパフォーマンスは得られる(あるいはリーマンショックの年度にはこれくらい下がる)」という参考データとして公的な年金運用の情報は参考になります。少し時間がありましたら、リンク先の開示資料を読んでみるといいでしょう。

個人が参考にするなら、まずGPIF(厚生年金運用)と国家公務員共済のポートフォリオを比較して、どちらが自分のリスク許容度に近そうか考えてみるといいでしょう。個人の場合、国債保有比率の一部(ないし全部)については、個人向け国債や預貯金で置き換えてポートフォリオを考えることも一案です(国は10兆円の定期預金を組めないので、安定運用の選択は自ずと国債保有になる)。

この検討会の今後の推移や、GPIFの運用方針の検討会などはなかなかおもしろい資料が開示されます(基本的には即日開示)。投資のレベルアップの参考にしてみてください。

比べてみるとけっこう違う、公的年金運用

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