結婚するとき、資産運用の問題を隠してはいけない

6月なので「結婚と資産運用」について考えてみたいと思います。2回に分けて「結婚前に資産運用についてどう話し合うか」と「結婚後の資産運用はどう考えるべきか」を整理してみたいと思います。証券会社の提供する読み物で、結婚が資産運用に及ぼす影響を投資経験者向けに論じたものはあまりないでしょうから、今年結婚する読者はぜひ参考にしてみてください。

さて、本欄の読者の多くは、証券口座を有しており、リスク資産の運用経験のある人たちだと思います。ネット証券の口座保有者は若年層も多いですから、独身者も少なからずいると思います。特に今年の上昇相場で投資デビューした人には多いかもしれません。

そういう人で、もし今年や来年に結婚を考えているとすれば、ひとつの問題が生じます。つまり「株や投信の運用について、夫婦でどこまで共有するか」という問題です(以下、読者を男性と仮定してコラムを書いていますが、他意はないので適宜読み替えてください)。

まず、「隠し通す」というのがあまりベターな選択肢でないことは独身者にも想像できると思います。隠し通したウソが露見したとき、痛くもない腹を探られるような事態は回避すべきですが、そもそも資産運用をしていることを隠し通す必要はありませんし、問題になるような運用をすべきではありません。運用に失敗する可能性があることと、その程度についても情報共有しておくべきです。

しかし、「オレ、実は株やっているんだ」という話題はうまく切り出さなければややこしい事態になることも考えられます。投資に否定的な女性であれば、バクチをやっているかのような目であなたを見ることでしょう。さすがに投資をしていたことで破談になっては困ります。ここをいかに乗り越えるかが、個人投資家が結婚する際に乗り越えるべきハードルかもしれません。

配偶者を説得できない運用計画は問題がある

これから結婚する相手は、あなたの資産運用のありかたについて、一番話さなければならない相手です。これからの長い人生において、資産運用の成果を共に用いることになるからです。投資資金の一部については彼女の稼ぎから捻出されるかもしれません(仮に彼女は安全資産しか保有しなくても、家庭という統合ポートフォリオにおいて、あなたのリスク資産の選択肢を広げてくれます)。

家庭という共同事業のパートナーに、資産管理状況の納得を得ないということはありえないといえます。結婚前にそれぞれが蓄えていた資産の運用と、結婚後に蓄えることになる資産の運用、いずれにしても無断でリスク運用する状態は好ましくありません。そこで、以下のようなポイントを説明してみるといいでしょう。

  1. どのような目的のため運用をしているのか(余裕資金の投機ではなく、具体的な生活設計を設定していること)
  2. どのような対象で資産運用をしているのか(現物株か投資信託か、為替なのか)
  3. どれくらいの収益を想定して運用をしているのか(現下の相場のような過剰な利回りを設定しないこと)
  4. どれくらいの損失が生じる可能性がある運用なのか(損失可能性をどう見積もり、どうリスクを抑えているのか)
  5. 資産運用はどれくらいの負担であり、日常生活や仕事には影響がないのか(為替レートを日々チェックするため、夫婦の会話する時間がとれなかったりしないか)

これ以外にも「いくらぐらい投資をしているのか」「どれくらいの金額をゴール設定しているのか、またゴールはいつ頃なのか」「追加拠出としてどれくらいの積立を考えているのか(考えていないのか)」なども説明していけば、これは立派な運用計画のプレゼンテーションになってきます。

もし、彼女を説得できない運用計画であったら、それは「なんとなく」の域を脱していないということです。もしかすると、自分自身の中でも、投資の計画が整理されていなかったものを、明確にするチャンスかもしれません。

自分の中で運用計画が未整理であったとしたら「なんとなく投資」だったということです。このチャンスに一度整理し、誰か(これから結婚する相手)に話して、納得を得られる状態にしてみてください。

それでも運用を嫌がられたら?

問題は、それでも運用を嫌がられた場合です。「だまってオレについてこい」的なアプローチが2010年代に向いているとは思えませんので、声を荒げるのではなく、理性と理屈できちんと説明をしていくべきです。

おそらく、投資についてネガティブな人は、投資についてネガティブな偏見がある人でしょう。1つは、投資はズルイことだとか、投資でお金を儲けるのは人のお金をかすめ取るような行為だ、といった誤解です。

なんとなく投資を脱却して、運用計画をプレゼンテーションできた人は、おそらく中長期の運用計画を提案していると思います。であれば、投資というのは投資家、企業、そして社会が共に成長の果実を分け合えるWin-Winな仕組みであることも説明可能であるはずです。中長期の投資は、経済を成長させる資金の担い手であり、ズルいどころか社会に貢献する意味合いもあります。ぜひ理解してもらいたいところです。

あるいは、投資は一瞬にしてお金が紙くずになる世界だという誤解によりネガティブなイメージを持っている人もいます。

現物株式や投資信託において、運用資金を短期でゼロにしてしまうことはほとんど困難です。中長期で投資をする計画を説明する人はレバレッジをかけたり信用取引をしたりオプションの売買はしないでしょうから、なおさら短期的にゼロになることはないでしょう。

あるいは複数のアセットクラスに対して資産配分を検討すれば、特定のアセットクラスの下落に資産全体を巻き込まれることはありません。きちんと分散したポートフォリオであれば、年率にしてマイナス15%程度の損失ですむはずです。リスクを抑える仕組みについてもきちんと説明ができれば、投資に対する信認は得られるのではないでしょうか(なお、結婚後の資産形成においてもFXやデイトレードを中心に行う人は、これらの説明は利用できません。自分なりの説得ロジックを探してみてください)。

リスク資産の運用を、夫婦の資産形成に組み入れることは、これからの若い世代にとっては必須のテーマだと思います。少なくとも夫婦のどちらかが運用の理解を深め、実行できる状態は欲しいところです。

ぜひ、幸せな結婚生活の一助として資産運用が機能するよう、うまい説明をしてみてください。

結婚するときには「運用」をカミングアウト

投資の誤解を解くのは一苦労だが努力したい