先週は想定より早く8,135~8,300円台へ向かう動きへ

先週は、ここからは3カ月のスパンで考えると、現在は底値圏の可能性が高く、6月17日のギリシャ再選挙まではユーロ圏離脱の不安が世界の株価の上値を押さえる形となり、昨年のザラ場での最安値8,135~8,300円台を試す可能性があるとしました。

先週始めは薄商いの中個別材料株物色が中心でしたが、29日(火)は中国が景気刺激策を強化するとの思惑で上海市場が急騰したのを受け、日経平均は△63の8,657円と4日続伸となりました。その後は、中国の刺激策は中国政府より否定されたことや欧州債務懸念でユーロ安が進行し、週末にかけて下げ幅を広げ6月1日(金)は▼102の8,440円と終値で8,500円を割って引けました。週足では先週も陰線となり、9週連続で下落率は16.2%となり、1992年以来20年ぶりの記録となります。週末の下げは、対ユーロで円が急騰し、1ユーロ=97円を突破して11年ぶりの高値となり、輸出関連株中心の全面安となったことによります。

週末のアメリカ市場では、注目の5月雇用統計が予想を大きく下回り、中国の5月製造業PMIが年初来の低水準となり、またユーロ圏失業率が11%と1999年ユーロ導入後の最悪を記録したことで、NYダウは▼274の12,118ドルとなりました。シカゴCMEは8,255円と8,200円台をつけていました。

催促相場に突入。何らかの政策出現のタイミング待ち

催促相場とは、現在の分かっている問題に対して政府が対応しなければ株価を下げることによって対策を要求する動きとなることをいいます。基本的に需給関係によって動きますので、政府の対応が遅いとみると、ヘッジファンド等の売りが膨らんでいきます。そうなると、テクニカル的な下値抵抗ラインを次々と突破していく現象が起こります。下げ過ぎたところで何らかの対策が出ると売り方の買い戻しもあって急反発となるのが普通です。

現状での催促要因は欧州問題(ギリシャのユーロ離脱とスペインの金融システム不安)からのユーロの暴落に対する政治的対応、中国・米国の経済悪化に対する金融緩和策というようなものであり、それらが出るタイミングを待つことになります。政治的な対応ですので、政治家の危機感の程度によって出るタイミングが変わりますので、安くなるところを少しずつ買っていくことになると思われます。本日は、アメリカ株式の急落と円高を嫌気して寄付き後に8,238円の安値をつけたあと、膠着状態となって大引けは▼144の8,295円となりました。先週想定した8,135~8,300円台を早くも試してきました。行き過ぎはありますが、8,000円を大きく割る動きには現時点ではならないと考えています。

世界は金融緩和の流れへ

先週3カ月のスパンでみると、底値圏といったのは再び世界的な金融緩和の流れになっているからです。イギリスはすでに景気後退局面に入っており、ユーロ圏も経済悪化の方向となっていますので、欧州中央銀行は金融緩和策を持ち出すことになります。インドも中国も景気が悪化しており、金融緩和策が必要となります。アメリカも雇用統計関係の改善が後退していますので、QE3が再び検討されることになります。そうなると、日米金利差縮小から、ドル売り・円買いとなってくると考えられますので、日銀も金融緩和策を取らざるを得なくなると思われます。つまり、世界が金融緩和の流れとなっていきますので、株価にとっては上昇要因となると考えられます。

日本株式の2月からの急上昇は円安が背景でしたが、今月になるとユーロに対する円高進行によって上昇分を全て吐き出してしまっています。ということは、ユーロは売られ過ぎていますので、どこかで反発(例えばギリシャのユーロ離脱の可能性がほとんどなくなった場合)すると、日経平均もそれに連動して反発することになると思われます。電機関連の輸出株は業績的に厳しいですので、トヨタ等自動車株のリバウンドが狙い目となるかもしれません。

(指標)日経平均

先週はギリシャ問題に加え、スペインの財政不安からの割安感からの戻りがあっても上値は限定的であるとし、上昇要因としては、週末の雇用統計が改善されていれば、1月16日の安値8,378円のサポート要因になるとしました。週初めは、ギリシャのユーロ圏に残留する期待や中国の景気刺激策強化への期待から戻りを試す動きとなり、29日(火)は△63の8,657円と4日続伸しました。しかし、その後はギリシャの政局混乱やスペインの金融システム不安からユーロの下落が続き、円高を嫌気して3日続落となって▼102の8,440円で引けました。

先週末6月1日(金)は5月米雇用統計が予想を大きく下回り、ユーロも急落したことでNYダウは▼274の12,118ドルの大幅下落となりました。円は対ユーロで2000年12月以来約11年ぶりの96円台となり、対ドルでも3カ月半ぶりの77円台をつけていますので、今週の日経平均は昨年11月25日の安値8,135円を試す動きになりそうです。欧州問題とアメリカ・中国の景気悪化懸念への対策を求める催促相場となっており、そのタイミングにきているものと思われます。チャートからは8,735円が抵抗ラインとなります。政治が動くのが遅くなると8,000円水準を試すことも考えられますが、底値圏での最終的な動きになっていると想定します。結局、5月23日の8,556円でのろく売が一段安の形となって、やや深い押し目買いの形となりそうです。本日は、先週末のNYダウの急落と円高を嫌気し、8,278円で寄り付いて8,238円まで下げたあとは膠着状態となって▼144の8,295円で引けました。下値ポイントは昨年11月25日の8,135円となります。大底圏でのもみあいとなってキッカケ待ちとなる可能性が高いと思われます。

日経平均

(指標)NYダウ

先週はギリシャ問題に加え、スペインの金融システム不安が高まり、欧州債務懸念が再燃する可能性があるため不安定な展開を想定しました。6月1日(金)の5月米雇用統計次第では、5月23日の安値12,311ドルを切ると12,000ドル台を試す動きとなる可能性があるとしました。連休明け29日(火)は、中国政府の景気刺激策への期待から△125の12,580ドルと反発しましたが、その後は欧州債務懸念を嫌気して3日続落となり、週末6月1日(金)は雇用統計が予想を大きく下回ったことも加わって、5月23日の安値12,311ドルを切って▼274の12,118ドルと12,000ドル台で引けました。

先週の終値は12,118ドルと昨年10月4日の10,404ドルの安値から今年5月11日の13,338ドルまでの上昇幅の1/2押し(12,371ドル)を切って12,000ドル水準の抵抗ゾーンに到達してきましたので、NYダウも目先反発してもいいところへきていると思われます。アメリカの景気悪化に対する何らかの材料が出ると、反発のキッカケとなることが考えられます。

NYダウ

(指標)ドル/円

先週の予測では、78~80円の中で78.5~80円を中心にもみあいを想定しましたが、ギリシャ問題に加え、スペインの金融システム不安が高まって欧州債務懸念が再燃し、ユーロが急落して円高が一気に進み、つれて米経済指標の悪化からドルが売られ、ドルに対しても円高が進行しました。特に、先週末の米雇用統計が予想を大きく下回り、1-3月期GDP改定値が下方修正されたことで、ドルが売られて3カ月半ぶりに78円を切って77.620円までの円高となり、引けは78.069円でした。

今週は引き続いて欧州債務問題や米経済指標の悪化を考えると円高要因であるものの、急激なユーロ安からの反動や政府・日銀による円売り介入の警戒感もあり、乱高下する可能性があります。77.5~79円が基本レンジとなりそうです。

ドル/円