世界がやや落ち着かない時期に来ている
掲載時点ではまた状況が変化することになるでしょうが、どうも世界はちょっと落ち着かない状況にあるようです。
テロは引き続き世界各地で引き起こされていますし、戦争の一歩手前での国家間の駆け引きもあまり愉快な状況にはありません。
何も起こらなければいいのですが、もし今以上の深刻な状況に事態が進んできたとき、為替は荒れ、株価は大きく下落することになるでしょう。
このとき、個人投資家はどう動くべきか少しだけアドバイスをしておきたいと思います。
戦争、災害、テロ……有事のあとに慌てて売るな
まず原則をいえば、一時的に下がった株価は回復します。実態としての経済は一時的に損なわれてもゼロになるわけではないからです。被害を取り戻すための回復もまた経済活動です。9.11あるいは3.11のあともしばらく下がり続けた株価はきちんと回復に転じました。時間はかかるとしても下がり続ける、ということはありません。
特に有事に避けたいのは2つのケースです。
狼狽売り、パニック売り
焦ってあわてて売る、という投資行動が有事の後には必ず生じます。それが何日連続になるかは分かりませんが、大きく下げることは避けられません。
このままずっと下げ続けるのでは、という恐怖は、リスク資産投資を始めて最初に訪れた有事に誰もがおびえるものです。しかし、焦って売りに出る投資行動はたいていの場合は裏目に出ます。
3日連続で下がろうとも5日連続で下がろうともそこで焦って売らないでください。数カ月、あるいは半年以上待つくらいのかまえでまずは様子をみてください。
少なくとも、一番下がったときに売る、という愚かな投資行動だけは取らないようにしましょう。
iDeCo投資(確定拠出年金投資)
もうひとつ避けてほしいのは、iDeCoや企業型の確定拠出年金で資産運用をしているケースです。
狼狽売りになる恐れがある、というのが第一の利用ですが、iDeCoではさらにその狼狽売りが失敗する可能性が高まります。iDeCo内での投資は投資信託をベースに行われますが、一日一価格(基準価額の見直し)であり、実際の売買が翌日ないし翌々日に行われることを考えれば、荒れた相場での売買は失敗する可能性が高まります。
投資信託を売って投資信託を買うような注文を出すと、買い注文は4~5営業日後(あるいはそれ以上)になることもあり、ますます売買は不透明になります。
確定拠出年金の資産は、どうせ60歳まで下ろすことのできないお金です。「60歳までには株価は戻るだろう」と思えるのなら、有事には慌てず何もしないほうがいいでしょう。
あえて売ってもいい2つのパターン
有事において、慌てて売らなくてもいいと強調してはみたものの、あえて売ってもいいと考えられるパターンを2つほどあげてみます。
十分な利益が確保されている
20~30%の下落があっても収益を確保できる状態にあって、かつリスク資産を保有し続けることが許容しづらいのであれば、売ってしまうことも選択肢です。
それでもなお、一週間を待つ余裕があるのであれば、有事の直後に売るのではなく少しだけ様子を見て欲しいと思います。1~3日くらいが連続して下がり、そこから一定割合は戻る可能性があるからです。
現金保有が少なく、手持ちキャッシュを確保したい
有事に際して、自身の資産に占める投資ウエートが高すぎ、現金をある程度保有しておくことに合理性があるなら、これは資産の一部を売却することも選択肢になります。
本来であれば、投資のウエートが高すぎ適切なポートフォリオではなかった、ということですから、今後に向けて反省する必要がありますが、必要なキャッシュを生活に支障がないよう確保しておくことは優先的課題です。こういう場合は利益が出るか損失が生じるかは気にせずためらわずリスク資産を売ってしまえばいいのです。
マーケットが開いている限り、有価証券はいつでも現金化が可能です。数日かかるものの現金を手にすることができるわけですから、キャッシング等で一時しのぎをせずキャッシュを確保してください。
「あえて買う」もアリだが蛮勇を試す必要はない
ところで、有事の際にはスムーズな経済の稼働に疑問が生じているため、株価が大きく下がる可能性があります。このとき、中長期的視点で考えれば、「あえて買う」も選択肢です。
あなたが市場の急落を何度か経験しているベテラン投資家であって、かつ資金的な余裕があるのならば、こうした荒れた相場にチャレンジするのもいいでしょう。
しかし投資初心者が無理をして手を出す必要はありません。特に「初めての市場急落体験」となった場合、自分の心理をコントロールできなくなるまでリスク資金を追加するべきではありません。仮に出すとしても下がりきった相場が回復に転じてからで十分です。
――有事など起こらなければいいに決まっています。しかしリスク資産で投資を行う個人は有事への備え方も少し考えておくべきでしょう。
かといって、「全額引き上げる」というようなスタンスではなく、市場とつきあいつつ有事を乗り越える術を学んでいただければと思います。