高成長が期待されながら高値から株価が3分の1になったリブセンス株

高成長が期待される銘柄としてマーケットでの注目も高かったリブセンス(6054)。上場から1年半で株価は10倍以上になりましたが、昨年7月をピークに株価は下落、4月11日には1,030円まで下がりました。昨年7月の高値3,255円から9カ月で3分の1以下になってしまったことになります。

リブセンス(6054)日足チャート

リブセンス(6054)日足チャート

実はこのリブセンス株の株価大幅下落から、色々と見えてくることがあります。そこで今回と次回の2回にわたり「事例研究」シリーズとして、リブセンス株の下落を通じて学ぶべきことをお話ししていきたいと思います。

なお、筆者は本コラムでの事例研究の材料としてリブセンス株を取り上げただけであり、リブセンス株の売買の推奨をするわけではございません。投資判断は自己責任で行うようお願い申し上げます。

高成長銘柄の成長が鈍化すると株価は大きく下がる

なぜリブセンス株がここまで大きく下落したのでしょうか?真っ先に考えられるのは「成長の鈍化懸念」です。

高成長が期待される銘柄は、PERやPBRといった指標が、軒並み割高になっています。銘柄によっては、PERが50倍、100倍というケースも決して珍しくありません。

でも、PER100倍であっても、3年後に利益が今の10倍になる、と市場参加者が予想しているなら、彼らの頭の中では実質的にはPER10倍なのです。となると、表面上PER100倍の銘柄の株価がまだまだ割安だ、となり、さらに買われていくことになります。

しかし、ひとたび高成長に陰りがみえはじめると状況は一変します。業績面でのピークが早晩訪れると市場参加者が予想すれば、買い需要は減り、逆に利食い売りが増加して株価は下落に転じます。

そして、成長の鈍化が続き、例えば成長率が年間40%から10%に下がるようなことになると、「高成長」というプレミアが株価から剥がれ落ち、PERでみて10~15倍の水準にまで株価は下がってしまうのです。

リブセンスの場合、平成24年12月期の当期純利益は前期比118.3%増益、25年12月期は64.6%の増益です。平成26年12月期の業績予想は24%の増益とまだまだ高成長の見込みであるため、現在の株価でみたPERは30倍近くと高水準を保っています。それでも増益率は大きく低下していることから、PERも株価のピーク時と比べてかなり低下しています。

株価にとって増収増益の「額」ではなく「率」の方がはるかに重要

注意しなければならないのが、いくら毎年増収増益が続いていても、株価が上昇を続けるわけではない、という点です。

例えば、当期純利益が一昨年3,000、昨年4,000、今年5,000、来年予想6,000という銘柄を考えてみます。

利益の「増加額」だけみれば、毎年1,000ずつ増加しており、高水準の成長が続いていると判断できます。

しかし、「増加率」をみると、昨年は前年比で33%のプラスですが、今年はプラス25%、来年予想はプラス20%となり、利益の伸び率が年々小さくなっていることがわかります。

もちろん、毎年売上や利益の倍々ゲームが続くことは不可能ですから、何年か経てば増益率もピーク時より落ちてくるのは当たり前です。でも、40~50%の増益を続けていた銘柄が、増益率20%、10%というレベルにまで落ち込んできた場合、成長率鈍化を嫌気した株価の大きな下落に十分な注意が必要です。

実績と比較されるのは「会社発表の業績予想」ではなく「プロの業績予想」

さらに、株価を動かす要因は、「会社発表の業績予想と実績の差」ではなく、「プロの業績予想と実績の差」によるところが大きい点にも注意が必要です。

上の例で、今年の利益の実績5,000が、会社予想通りであったとしても、それと株価の動きにはあまり関係がありません。

もし今年の利益をプロが4,000と予想していたところ、会社予想通りの5,000という結果が出れば、株価にはプラスのインパクトがあります。決算発表シーズンには、前期比減益の決算を発表した銘柄の株価が、プロの予想より減益幅が小さかったという理由で大きく上昇する、ということもよく見られます。

逆に、プロが今年の利益を6,000と予想していたところ、会社予想通りの5,000という結果であれば、失望売りにより株価は大きく下落してしまうのです。リブセンスが2月14日に発表した平成25年12月期の決算はほぼ予想通りの着地でしたが、決算発表後株価が大きく下落したところをみると、多くの投資家は会社予想よりもかなり大きい利益が発表される、と予想していたのでしょう。

個人投資家のファンダメンタル分析はどうしても精度が低くなる

このように、いくら業績が絶好調で、実際の業績が会社予想を大きく超えていても、プロの予想より低ければ株価が大きく下落することだってあるのです。

でも、残念ながら個人投資家レベルでは、プロの投資家のコンセンサスとして、業績予想を会社発表数値よりどの程度上、もしくは下に見ているかを正確に知ることはできません。

もちろん、個人投資家がプロの投資家のコンセンサスを知ることができなくても、個人投資家にプロなみの分析能力や情報収集力、知識が備わっていれば、プロと同様の判断により、売買の投資判断ができます。でも実際には無理な話です。

言い換えれば、個人投資家が行うファンダメンタル分析は、プロの投資家が行うものより精度がどうしても低くなってしまうのです。そのため、売買の判断もプロより遅れてしまいがちですし、誤った判断をしてしまう恐れもあります。

個人投資家がファンダメンタルのみで投資判断をしてもなかなかうまく行かないことが多いのは、こうした理由があるためなのです。

よく、個人投資家からの相談に対して「保有株を売却するかどうかは、買った時のファンダメンタル面の前提条件が崩れたかどうかで判断すべき」と回答する専門家がいますが、筆者に言わせれば明らかにナンセンスです。

次回は、個人投資家がリブセンス株を売却するのはどの時点が適切だったのか、そして、それを判断するためには何を見ればよいのかをご説明したいと思います。