相変わらず好調のIPO銘柄だが?

IPO銘柄(新規公開銘柄)は相変わらず好調のようです。IPO銘柄の初値が公開価格を超えるケースが、40銘柄以上続いています。

確かに、公開価格でIPO株を取得できた投資家は、初値で売るだけで大きな利益を手に入れることができる可能性が高いわけですから非常によい相場環境といえるでしょう。

でも、簡単に利益を得られる可能性が高いわけですから、当然たくさんの投資家がIPO株を欲しがります。そのためIPO株を公開時に手に入れることは非常に困難と言わざるを得ません。

公開時に手に入れられなかった投資家がIPO株を手に入れるには、新規上場後にセカンダリーマーケットで買い付けるほかありません。

セカンダリーマーケットとは、「すでに発行されている株式などの有価証券を取引する市場」のことで、私たち個人投資家が普段証券取引所を通じて株式を売買している株式市場を指します。

IPO株の場合は、当選すれば上場前に発行される新株を買うことができ、こうした「新たに発行される株式等を投資家が購入する市場」のことを「プライマリーマーケット」と呼びます。これと区別するためにあえて「セカンダリーマーケット」という言葉を使うことがあります。

セカンダリーマーケットは明らかに過熱化

ここ最近は、初値が公開価格の3倍、4倍に達するという銘柄が続出しています。つまり、セカンダリーマーケットでIPO株を手に入れるには、公開価格の何倍もの高い価格でないといけない状況にあります。

さらには、業種・業態としてあまり高い成長は見込みにくい銘柄であっても公開価格の数倍の初値をつけるものも目立ってきています。

そもそも公開価格は適当に決められているのではなく、その銘柄の成長性や類似業種の株価水準などをもとに、妥当な価格が付けられている「はず」です。

その価格から3倍、4倍の株価を初値でいきなりつけるのは、やはり「過熱」「買われ過ぎ」と言わざるを得ません。

直近のIPO銘柄は「初値天井」?

そしてさすがに最近の株式市場も、この異様な過熱感に対する警戒が起きてきたように思います。

それが株価の推移に表れている例として、11月19日に新規上場したANAP(3189)が挙げられます。

ANAPは上場初日の19日には値がつかず、翌20日に公開価格1,000円の5.1倍の水準である5,100円で初値をつけました。しかし、直後に5,360円の高値を付けた後は一転して急落、ストップ安の4,100円で終えました。

その後も株価は弱含みで推移し、11月29日の終値は2,573円でした。初値で買った投資家は、わずか10日足らずで約50%もの含み損を抱えてしまったことになります。

11月20日に新規上昇したM&Aキャピタルパートナーズ(6080)も同じような状況です。
21日に公開価格の3.3倍の10,000円で初値をつけましたが、同日の10,900円を高値に下落を続け、29日は6,170円で終えています。初値からの下落率は40%近くに達しています。

このように、IPO株は、「公開価格で手に入ればまだまだ魅力的だが、公開後のセカンダリーマーケットでは初値近辺が天井になりやすい」という傾向が見えてきたように思えます。

ただ、「初値天井」の傾向が続けば、IPO銘柄ならば何でも買いを入れてきた投資家が慎重な姿勢を見せ、初値の水準が抑えられることにつながるはずです。そうなれば、過熱感も解消され、今よりも安心してセカンダリーマーケットでIPO株を買えることになるわけですから、良い方向に進みつつあるとプラスにとらえるべきでしょう。

数多くの新規公開銘柄から「キラリと光る」ものを探し出せるか

株式市場に新規に上場する銘柄は、どれもそれなりに業績が伸びています。とはいえ、新規公開銘柄であれば何でも株価が上昇するわけではありません。

さらに、上述のようにセカンダリーマーケットで割高な株価形成がなされることも多く、安易に買えば、その後の下落で大きな含み損を抱えることにもなりかねません。

それでも、今までにないユニークな業態を持ち、業績の大きな伸びが期待できる銘柄を探し出せば、初値からさらに大きく株価上昇することもあります。

たとえば、N・フィールド(6077)は、「訪問看護」という新たなジャンルで業績を伸ばしています。この銘柄は機関投資家も高い関心を集めており、フィデリティ投信やJPモルガン・アセットマネジメントなどが投資しています。

N・フィールドは3,100円の初値をつけた後も上昇を続け、11月5日には15,220円と初値の約5倍にまで値上がりしました。

機関投資家や外国人投資家までもが注目するような「キラリと光る」銘柄を探し出すことができれば、セカンダリーマーケットで新規買いしても、良い投資成果が期待できるのです。

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