いよいよ今年(2013年)をもって軽減税率が終了に!
ご存知の方も多いと思いますが、2013年末をもって、上場株式の売却益や配当金にかかる税率の軽減措置が終了します。現状の10.147%の税率が、2014年以降は20.315%(いずれも復興特別所得税を含む)になります。
軽減税率が適用されるのは、2013年中に受渡しが完了するものに限られます。したがって、売却益につき10.147%の軽減税率の適用を受けるには、年内最終売買日である12月30日を含めて4営業日前にあたる12月25日までに売却注文が約定していなければなりません。
以前のコラム(<検証>税率アップの前に保有株の益出しをすべきか?)でも申し上げたように、軽減税率が終了する前に保有株の含み益を一旦実現させて確定した方がよいのか、それともそのまま保有株を持ち続けてもよいのかは、一概には言えません。来年以降の株価がどうなるかにより損得が異なってくるからです。
しかし、日本株は中長期的な上昇トレンドにあることには間違いありません。仮に来年以降もしばらく株価の上昇基調が続くとすれば、特に保有株の含み益が多額の投資家ほど、軽減税率が適用されるうちに利益を一旦確定するメリットが大きくなります。含み益が1,000万円ある個人投資家なら、税額を約100万円も抑えることができるのです。
今回のコラムでは、本年中に保有株の含み益を実現・確定させたいとお考えの個人投資家の方に、その方法や注意点をご説明したいと思います。
特定口座の保有株の買い直しは売却の翌営業日以降に
保有株の益出しをするには、保有株を一旦売却して、その後買い直す作業が必要となります。
このとき注意したいのは、特定口座の場合、売却した日と同じ日に買付けをすると、取得価格はもともとの取得価格と新たに買いつけた価格との総平均で計算されるという点です。
これは、「もともと保有→買い増し→全て売却」という順番でも、「もともと保有→保有株全て売却→買い直し」という順番でも同じです。
例えば、A株を取得単価200円で1,000株保有しているというケースで考えてみます。この1,000株を1,000円で売却し、その後同日中に1,000円で買い直した場合、売却時の売却益は「(1,000-200)×1,000株=80万円」とはならないのです。
ではいくらになるかというと、「40万円」です。買い直しにより、A株の取得単価が、(200+1,000)÷2=600円にアップしてしまうからです。そのため、売却益は「1,000-600×1,000株=40万円」となるのです。そして、買い直したA株の取得単価も、1,000円ではなく600円となります。
つまり、特定口座を用いて同日中に売却と買い直しを行うと、保有株の含み益の全額を利益確定することができないのです。保有株の益出しを完全に行うためには、売却後の買い直しを翌営業日以降に行う必要があります。
信用取引を用いて売却時後買い直しまでの株価変動リスクを軽減
ただし、買い直しを翌営業日以降に行うと、売却時の株価と買い直しの株価が大きく異なってしまうリスクがあります。そこで考えられるのが信用取引を使った益出しの方法です。
まず、保有株を売却するとともに、同じ日に売却した保有株と同じ銘柄を同じ数量だけ信用買いします。
上記の例で考えると、もともと保有していた取得単価200円のA株1,000株を1,000円で売却し、さらにA株1,000株を1,000円で信用買いするのです。そして、信用買いした株は、翌営業日以降に現引きをして決済します。
こうすると、現物株の売却と買付けは異なる日付となりますので、含み益の80万円が実現するとともに買い直しをしたA株の取得単価は1,000円となります。
また、楽天証券など一部の証券会社では、保有株の益出しのためのクロス取引を取り扱っているところもあります。手数料は多少割高になってしまいますが、売却時の株価と買い直しの株価に差が生じるリスクを完全に回避することができます。こうしたサービスを活用するのもよいでしょう。
換金売りに過度の警戒は不要か
ところで、軽減税率終了間近になると気になるのが、個人投資家の保有株売却による株価下落の懸念です。
個人投資家の中には、保有株の益出しを実行した上で来年以降も保有を続ける、という方だけではなく、軽減税率が使える今のうちに保有株の全部や一部を売ってしまおうと考える方も少なくないからです。
結論から言えば、あまり個人投資家の換金売りによる株価下落は心配しなくてもよさそうです。
現在と似たようなケースとして参考になるのが、個人投資家の上場株式の売却益に係る源泉分離課税制度が廃止となる直前の、2002年11月~12月の個人投資家の売買動向です。この間、個人投資家は売り越しを続け、売り越し額は8,000億円に達しました。しかし、その間の日経平均株価はほぼ横ばいで、需給悪化により株価が大きく下がるということはありませんでした。
また、今年の11月第2週の投資主体別売買動向を見ますと、個人投資家がなんと1週間で1兆1,527億円も売り越している反面、外国人投資家は逆に1兆1,720億円もの買い越しとなっています。
11月第2週は、信用期日を迎えた個人投資家の決済売りが集中することによる株価下落が警戒されていたのですが、蓋を開けてみると株価は下落どころか大きく上昇しました。2002年末に生じた個人投資家の売り越し額を大きく上回る大量の個人投資家の売りを、外国人投資家の買いが全て吸収してしまったのです。
現状のような相場環境では、個人投資家の換金売りによる株価へのマイナスの影響はあまり心配しなくてよいでしょう。逆に換金売りで株価が下がるようなことがあれば、それは押し目買いのチャンスとなりえます。