第2回「商品先物取引のメリット①」で、レバレッジについて触れた際、レバレッジは総代金を証拠金の額で除して計算する旨、お伝えしました。

総代金を構成する“対象銘柄の価格”と“倍率” (総代金=対象銘柄の価格×倍率)と、それを除す“証拠金の額”の3つが、レバレッジを構成する要素ということになります。(保有枚数を1枚とした場合)

この3つの中の“倍率”については、取引所が定める値である(第5回「倍率と取引単位」を参照)ため、倍率に関するルールが変更にならない限り、倍率がレバレッジを変動させる要素にはなりません。

「レバレッジを変動させる」としましたが、レバレッジは多くの場合、対象銘柄の価格が動くことで(総代金が変化することで)変化していると考えられますが、対象銘柄の価格と倍率以外の“証拠金”もまた、レバレッジを変化させる要因となります。

対象銘柄の価格が動かなかったとして、仮に証拠金の額が増額されれば、レバレッジを計算する際、総代金を除す値が大きくなるため(分母大)レバレッジは下がり、逆に証拠金の額が減額されれば、総代金を除す値が小さくなるため(分母小)レバレッジは上がります。

図:レバレッジの計算の仕方 (保有枚数が1枚の場合)

出所:筆者作成

それでは、どのような時に証拠金の額が変更になるのでしょうか?

証拠金の額は、取引所ではなく、国内商品先物取引における清算機関である「株式会社日本商品清算機構(以下JCCH)」が、国際的な証拠金の計算基準とされる「SPAN」にもとづいた計算によって算出し、公表しています。

その額の見直しには、原則月2回見直しが行われる「定期見直し」と、市場の急変の折、JCCHが必要と認めた際に行われる「臨時見直し」の2種類があります。

「定期見直し」は、ひとつの月を上期と下期の2つに分け、それぞれの期に適用する各銘柄の証拠金の額を、その期がはじまる数営業日前に公表しています。具体的な期の分け方と、各期に適用される証拠金の額の公表タイミングは以下のとおりです。

  • 期の分け方
    上期・・・毎月第1営業日から15日まで (15日が営業日でない場合は前営業日)
    下期・・・16日から月末営業日まで (16日が営業日でない場合は翌営業日)
  • 各期に適用される証拠金の額の公表タイミング
    各期が始まる5営業日前。各期の開始日の6営業日前を基準日として証拠金の額の算出が行われ、翌営業日に公表。

図:2017年上期と下期の当社取扱商品の証拠金の額

出所:当社のウェブサイトより抜粋

上図の2017年5月上期と下期で変化があったのは、パラジウム(100,000円→105,000円)、ゴム(95,000円→90,000円)、そしてとうもろこし(40,000円→35,000円)の3銘柄でした。

「臨時見直し」は、市場が急変してリスクが高まった際、JCCHが必要と認めた際に、臨時に行われる見直しです。

以下は直近で臨時見直しが行われた例です。東京ガソリンにおいて2016年12月1日(木)に起きた市場の急変(この場合は大幅上昇)によって臨時見直しが行われ、12月5日(月)から同銘柄の証拠金が変更になりました。(125,000円→190,000円)

図:東京ガソリン日足 単位:円/キロリットル

出所:商品先物取引ツール「マーケット・スピードCX」より筆者作成

臨時見直しの解除は、該当期間の期(上期もしくは下期)の終了までとされています。

こうした「定期」「臨時」の証拠金の額の見直しによって、証拠金の額が変化することがあります。

証拠金の額の変化は、新たに建玉を保有する、もしくは既存の建玉を維持する際に必要な資金の額が変化するということであり、かつ、冒頭に戻れば、レバレッジを変化させる対象銘柄の価格以外のもう一つの要因ということになります。

ご参考までに、本文内で述べた「定期見直し」「臨時見直し」におきまして、各見直しにおける具体的な銘柄の証拠金の額の変化が、(対象銘柄の価格が変わらなかったとして)どれくらいレバレッジの変化に影響したのかを以下のとおり計算しております。

図:上記「定期見直し」「臨時見直し」における具体的な銘柄の証拠金の額、およびレバレッジの変化 (価格は一定と仮定、倍率は取引所の定めで一定、保有枚数は1枚とする)

出所:筆者作成

次回もどうぞよろしくお願いいたします。