今日の為替ウォーキング

今日の一言

非理法権天 (「非」は理に勝たず、「理」は法に勝たず、「法」は時の権に勝たず、その「権」も天道に勝たない、天道は明にして私がない。 天道をあざむくことはできないから、天道に従って行動すべきであるという戒め。楠木正成の旗印)

Maneater

 新型コロナウイルスの世界的流行が終息したあと、先進国では「4つのインフレの波」が発生した。

 第一のインフレの波は、ロックダウンで家の中で長い時間過ごすための家電や家具の買い替えが引き起こした「需要主導型インフレ」だ。しかし、「巣ごもり需要」が一巡するとこのインフレも終了した。テレビなどの耐久財は、今や過去20年間で最悪のデフレ状況に陥っている。

 第二のインフレの波は、新型コロナによるサプライチェーンの混乱や地政学リスクによるエネルギー価格や商品価格の上昇が引き起こした「供給主導型インフレ」だ。しかし、このインフレもサプライチェーンの修復と共にディスインフレ(物価上昇率が低くなり、インフレの進行が抑えられている状態)へと移行していった。

 第三のインフレの波は、原材料費高騰などを理由に値上げをする際に自分たちの利益(マージン)もたっぷり上乗せすることによって発生する、利益主導型(マージン上乗せ型)インフレ」である。このインフレは需給の不均衡が理由で起きるものではない。欧米では下火になったようだが、日本ではまだまだ続いているようだ。

 そして現在、労働者不足による賃金コストの上昇が、第4のインフレの波を引き起している。インフレと賃金上昇のスパイラルは、ECB(欧州中央銀行)に追加利下げを慎重にさせている。FRBも利下げ直前まで賃金の高止まりを問題視していた。

 賃金コストの絶え間ない上昇にさらされる企業は、労働者繋ぎ止めのために給料を上げ続けるよりも、テクノロジーへの投資に資本を使うことを検討し始めている。これまで人手に頼ってきた作業をロボットに行わせることにより、より少ない労働者でより多くの生産を増やそうとしているのだ。

 飲食店や小売店では、人手不足解消の手段として、店に来るお客に働いてもらっている。最近の居酒屋やスーパーは、多くがセルフレジやスマホアプリを導入しているが、これは労働の観点からすれば、本来店の従業員が行うべき仕事を、客に強制ボランティアさせているのと同じだ。さらに言えば、これらの作業に必要なスマホというインフラやその通信費さえも客側の負担が当たり前となっている。このように、企業はコスト削減を図る一方で、顧客に新たな負担を強いるケースが増えている。

 中央銀行による利上げは景気を冷やし、最終的にはインフレ抑制に成功するだろう。しかしそこに至るまでの副作用も大きい。利上げという手段を使うよりも、「値上げを受動的に受け入れない」ように消費者を説得する方が害も少ないだけでなく、より効果的かもしれない。便乗値上げに対抗するためにソーシャルメディアが果たすべき役割は大きい。

今週の注目経済指標

出所:楽天証券作成

ヒートマップ分析

出所:楽天証券作成
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