「2010年ごろ」を起点に考えることが重要

 SNSはスマートフォンを介して世界的に普及しました。以下のとおり、2010年が世界のスマートフォン販売台数の本格拡大の起点になりました。

 2010年は、初めてインカメラが搭載されたiPhone4が発売された年でした。その後、iPhoneのみならずスマートフォンは、生体認証、ワイヤレス充電、耐水・防じん、デュアルSIM、5G対応、広角カメラなどの機能が豊富になり、世界に広がっていきました。

 大衆から人気を得ることを第一とし、民主主義と対極にあるとされるポピュリズムがSNSで膨れ上がりやすい性質を持っていたことに多くの人が気付いたのは、スマートフォンが世界全体にほぼ行き渡った後でした。

図:世界のスマーフォン販売台数 単位:百万台

出所:Gartnerなどのデータを基に筆者作成

 また、2010年は中国の米国債残高が減少し始めたタイミングでもあります。いわゆる「中国の米国離れの始まり」です。

 非西側の急先鋒である中国が、自由で民主的なことを正義とする西側主要国の資産の保有高を減らすことは、西側と非西側の距離が離れることと同じ意味と言えます。オレンジ色の線で示した自由民主主義指数の世界平均が、歩調を合わせるように低下し始めたことが、それを補完しています。

図:中国が保有する米国債残高と自由民主主義指数(世界平均)

出所:米国財務省およびV-Dem研究所のデータを基に筆者作成

 さらに、以下は中央銀行による金(ゴールド)の買い越し量の推移です。

図:中央銀行による金(ゴールド)買い越し量の推移 単位:トン

出所:WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)の資料を基に筆者作成

 中央銀行は「銀行の銀行」と呼ばれています。通貨を発行したり、物価と雇用を安定させるために金融政策を検討・決定したり、事態急変に備えて外貨準備高を保有したりする公的な金融機関です。例えば、日本では日本銀行が、米国ではFRB(米連邦準備制度理事会)が、EUではECB(欧州中央銀行)が、その役割を担っています。

 ウクライナ戦争が勃発したり、米国で急な利上げが行われたりした2022年に金(ゴールド)の積み上げ量(購入-売却)は、統計史上最大となりましたが、もともと、リーマンショック発生後、特に2010年ごろから増加傾向が目立っていました。

 中央銀行が外貨準備高の一部を金(ゴールド)で保有する理由は、長期的な価値保全/インフレヘッジ、危機時のパフォーマンス、効果的なポートフォリオの分散化、歴史的地位などです。このグラフは、2010年ごろ以降、中央銀行が世界の分断深化が進んでいることを敏感に察知していることを、示していると言えます。