スポティファイ・テクノロジー

1.音楽ストリーミングサービスで世界トップ。黒字拡大中。

 スポティファイ・テクノロジーは2006年4月設立の音楽ストリーミングの最大手です。スウェーデン企業ですが、ニューヨーク証券取引所に上場しています。音楽ストリーミングサービス「Spotify」を2008年10月に開始しました。会員数は順調に伸びています。

 特に、有料で広告なしの音楽ストリーミング配信が楽しめるプレミアム会員が順調に増えていること、過去1年間に主要国で値上げしたこと、昨年行ったリストラの効果がでていることにより、2024年12月期1Qからは黒字が定着したと思われます。これまでは長期にわたって楽曲を提供してくれるアーティストに対して支払う印税が負担となっていました。

 レコード会社から見て音楽ストリーミングサービスは、今や音楽をリスナーに届けるための最も大きなルートになっており、レコード会社の音楽ストリーミングサービス向け売上高は伸び続けています(グラフ3)。

 この結果、ストリーミングサービス会社の売上高も右肩上がりで伸びています(グラフ4)。スポティファイはそのトップに位置しています(表8)。

グラフ3 世界レコード産業収入

単位:億ドル、出所:国際レコード産業連盟

グラフ4 世界の音楽ストリーミング収入

単位:億ドル、出所:Business of Apps 2024年9月11日より楽天証券作成。元出所は各社資料、RIAAなど

表8 音楽ストリーミングの世界市場シェア

出所:Business of Apps 2024年9月11日より楽天証券作成。元出所はRIAA。

2.2024年12月期2Qは、19.8%増収、営業利益黒字転換

 スポティファイ・テクノロジー(以下スポティファイ)の2024年12月期2Q(2024年4-6月期、以下今2Q)は、売上高38.07億ユーロ(前年比19.8%増)、営業利益2.66億ユーロ(前年同期は2.47億ユーロの赤字)となりました。今1Qから従来よりも大きな四半期当たり1億ユーロ以上の営業黒字が出ています。

 今2Qをセグメント別に見ると、広告が付かない有料サービスである「プレミアム」は、売上高33.51億ユーロ(前年比20.8%増)、売上総利益10.51億ユーロ(同33.2%増)と好調でした。今1Q比でも一桁増収増益となりました。

 プレミアム会員数が、今1Q2.39億人から今2Q2.46億人に増えたことが業績に寄与しました。また、過去12カ月間にアメリカを含む主要市場で行った2回の値上げ、音楽ストリーミングだけでなく、オーディオブックとポッドキャストをメニューに加え、コンテンツも増やしたことも寄与しました。

 プレミアムの売上総利益率は今1Q30.2%から今2Q31.4%と上昇しました。2023年12月期は各四半期とも28.5~29.1%でしたが、今期に入って30%台に乗りました。今後は売上総利益率の上昇がつづくかどうかがスポティファイの業績を見るうえでのポイントになります。

 無料広告型(広告付きの無料ストリーミングサービス)は、売上高4.56億ユーロ(同12.9%増)、売上総利益0.61億ユーロ(前年同期は0.23億ユーロの赤字)となりました。無料広告型マンスリーアクティブユーザー数(MAU)は伸びが鈍化していますが、MAUの数が大きいため、広告売上高の増加が続いていると思われます。

 スポティファイは2023年12月期に3回の人員削減を実施しました(2023年1月約600人、6月約200、12月約1,500人)。これによって、研究開発費、販管費ともに2024年12月期は減少しています。研究開発費の前年比は、今1Q10.6%減、研究開発費を含む販管費は同9.3%減、今2Qは同じく16.3%減、16.5%減と減少しました。この販管費の減少はプレミアム売上高の増加とともに今1Qからの黒字化の大きな要因です。

表9 スポティファイ・テクノロジーの業績

株価 369.20ドル(2024年9月27日)
時価総額 73,825百万ドル(2024年9月27日)
発行済株数 206.120百万株(完全希薄化後、Diluted)
発行済株数 199.959百万株(完全希薄化前、Basic)
1ユーロ= 1.1130ドル(2024/9/27)
単位:百万ユーロ、ドル、%、倍
出所:会社資料より楽天証券作成。
注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
注2:EPSは完全希薄化後(Diluted)発行済株数で計算。ただし、時価総額は完全希薄化前(Basic)で計算。
注3:会社予想は予想レンジの平均値。

表10 スポティファイ:セグメント別業績(四半期)

単位:100万ユーロ
出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ5 スポティファイ・テクノロジーのマンスリーアクティブユーザー数

単位:100万人、出所:会社資料より楽天証券作成

3.2024年12月期、2025年12月期とも業績好調が予想される

 会社側の今3Q業績ガイダンスは、売上高40億ユーロ(前年比19.2%増)、売上総利益率30.2%(今2Qは29.2%)、営業利益4.05億ユーロ(同12.66倍)です。全体のMAU見通しは6.39億人、プレミアム会員数は2.51億人と順調に伸びる見通しです。

 プレミアムサービスは主にアメリカ、ヨーロッパ等の先進国、無料広告型サービスは主に新興国にユーザーが多いです。プレミアムサービスの会員数、今2Q2.46億人は、アメリカ3.4億人、EU4.5億人、日本1.2億人等の先進国の人口約9億人と比較すると、まだ伸びる余地があると思われます。

 これらを勘案し、楽天証券ではスポティファイの2024年12月期を売上高157億ユーロ(前年比18.5%増)、営業利益12.80億ユーロ(前期は4.46億ユーロの赤字)、2025年12月期を売上高182億ユーロ(同15.9%増)、営業利益21億ユーロ(同64.1%増)と予想します。

 2024年12月期、2025年12月期と業績好調が続くと予想されます。

表11 スポティファイ:セグメント別業績(通期)

単位:100万ユーロ
出所:会社資料より楽天証券作成、予想は楽天証券

4.今後6~12カ月間の目標株価は500ドルとする

 スポティファイ・テクノロジーの今後6~12カ月間の目標株価を500ドルとします。

 楽天証券の2025年12月期予想EPS9.61ドル(8.64ユーロ)に楽天証券の2025年12月期予想営業増益率64.1%に対して、競争相手が多いこと、アメリカ、ヨーロッパの景気に対する不確実性を考慮し、10~20%ディスカウントしPEG=0.8~0.9倍、想定PERを50~55倍としました。

 中長期で投資妙味を感じます。

本レポートに掲載した銘柄マイクロン・テクノロジー(MU、NASDAQ)スポティファイ・テクノロジー(SPOT、NYSE)