今日の為替ウォーキング

今日の一言

トレーディングを20年やっていて習得したことがあるとすれば、それは不測の事態や不可能が次々と起こるということだ - リチャード・デニス

My Sharona

 新型コロナウイルス世界的流行の後、先進国では3つのインフレの波が発生した。

 第一の波は「需要主導型インフレ」といわれるもので、ロックダウンで外出や外食が禁止されたことで、家の中で時間を過ごす用に大型液晶テレビなどの家電を新しくしたり、在宅勤務をするための机や椅子などを買ったりする特需が引き起したインフレである。しかし、この需要主導型インフレは短期間で終了した。そもそもテレビやエアコン、洗濯機などの耐久消費財は何年も使い続けるもので、毎年新製品を欲しがる人はいない。ロックダウンの終了とともに液晶テレビの価格は高値の半額近くまで急落して、過去20年間で最悪のデフレ状況に陥っている。

 第二の波は「供給主導型インフレ」で、サプライチェーンの混乱や地政学リスクによるエネルギー価格や商品価格の上昇によって引き起こされた。しかしこのインフレもサプライチェーンの混乱が収まるにつれて、ディスインフレ(物価上昇率が低くなりインフレの進行が抑えられている状態)へと移行していった。

 そして、現在起きている第三の波が、利益主導型(マージン上乗せ型)インフレ」である。これは需給の不均衡が理由で起きるのではない。企業が原材料費高騰などを理由に値上げをするときにこっそりと、あるいは堂々と、大幅な利益(マージン)を上乗せすることによって発生したインフレである。企業は原材料や人件費高騰などの理由を掲げて「値上げは仕方ない」と消費者を説得するためのストーリーつくりが得意だが、そのほとんどはフェイクである。原材料が高騰しているというが、原油先物価格は下落している。人件費が高いというが、労働コスト(給料)の上昇率は物価上昇率に比べて緩やかなままだ。その差額はどこへいったか、明らかだ。

 中央銀行による利上げは景気を冷やし、最終的には利益率主導のインフレも抑制することになるだろう。しかしそこに至るまでの副作用も大きい。利上げという手段を使うよりも、値上げを受動的に受け入れないように消費者を説得する方が害も少ないだけでなく、より効果的かもしれない。便乗値上げに対抗するためにソーシャルメディアが果たすべき役割は大きい。

今週の注目経済指標

出所:楽天証券作成

今日の注目テクニカルレベル

出所:楽天証券作成

コーンチャート分析