スーパー・マイクロ・コンピューター

1.空売りファンド「ヒンデンブルグ・リサーチ」がスーパー・マイクロ・コンピューターのレポートを公開した

 2024年8月27日付けで、空売りファンドの「ヒンデンブルグ・リサーチ(Hindenburg Research)」はスーパー・マイクロ・コンピューター(以下、スーパーマイクロ)に関するレポート(以下、ヒンデンブルグ・レポート)を公表しました。

 それによると、スーパーマイクロのAIサーバーには品質上の問題があり不良品率が高いこと、スーパーマイクロの顧客は、競合相手のデル・テクノロジーズ、HPエンタープライズのほうを評価していること、創業者でCEOの親族が経営する会社にサーバー製品を出荷し、あるいはそれらの会社から部品を調達しているが、それらのことを十分開示していないこと、不正輸出の疑いがあること、などが書かれています。スーパーマイクロの元営業部長などに対してインタビューした内容が多く記載されています。

 ただし、会計操作の疑いがあるという意味のことも書いていますが、私が読んだところではその証拠は書いていないと思われます。

2.スーパーマイクロは年次報告書(10K)の提出が遅れることを公表した

 8月28日にスーパーマイクロが出したプレスリリースによれば、2024年6月期の10K(年次報告書、日本の有価証券報告書に相当)の提出が遅れることを8月30日に通知する予定です(SECに対する遅延提出通知)。

 2024年6月期の10Kの中身が注目されます。例えば、ヒンデンブルグ・レポートにあるような会計処理に問題があるために提出が遅れたのか、過去の業績修正を含むものなのか、あるいは、事業活動が急拡大しているため、単純に10Kの作成が遅れたためなのか、10Kを確認する必要があります。

3.楽天証券の業績予想と目標株価を維持するが、投資する場合は会社側の反論と10Kを確認してからにしたい

 ヒンデンブルグ・レポートの中身については、確認しようがないため、会社側の反論を待ちたいと思います。同時に、10Kの中身を確認したいと思います。楽天証券の業績予想と今後6~12カ月間の目標株価850ドルは、現時点では変更しません。会計操作がなく、過去に品質問題を抱えていた場合でも、それが今は改善しているのであれば、今の株価は割安と判断できます。ただし、デル・テクノロジーズの2025年1月期2Q決算発表において、会社側はAIサーバー売上高を31億ドルと公表しました。スーパーマイクロに接近しており、競争が激しくなっているのは確かと思われます。

 再投資する場合は、スーパーマイクロのヒンデンブルグ・レポートに対する反論と10Kの中身を確認してからにしたいと思います。

表6 スーパー・マイクロ・コンピューターの業績

株価(NASDAQ) 448.82米ドル(2024年8月29日)
時価総額 28,818百万ドル(2024年8月29日)
発行済株数 64.208百万株(完全希薄化後、Diluted)
発行済株数 58.688百万株(完全希薄化前、Basic)
単位:百万ドル、ドル、%、倍
出所:会社資料より楽天証券作成。
注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
注2:EPSは完全希薄化後発行済み株式数で計算。ただし、時価総額は完全希薄化前発行済み株式数で計算。
注3:会社予想は予想レンジの平均値。

表7 サーバー各社のAIサーバー売上高

単位:億ドル
出所:スーパーマイクロは、会社資料、発言をもとにした楽天証券推定。デルは決算電話会議での会社側の発言による。

本レポートに掲載した銘柄エヌビディア(NVDA、NASDAQ)スーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI、NASDAQ)