今日の為替ウォーキング
今日の一言
元気をだせ。あしたには何もかも新しい競馬がはじまる
Baker Street
ECB(欧州中央銀行)は18日の定例理事会において政策金利を据え置くことを決定した。欧州のインフレ再燃の可能性があるため、追加の利下げを慎重に判断する必要があると考えたことが理由だ。しかし前回6月の会合ではECBは利下げをしている。その時点ではインフレが落ち着いていたからと言われているが、実際は経済状態よりもECB内の政治が理由だったようだ。6月に利下げすることをECB理事の面々がフォワードガイダンスとして強くアピールし続けたために、欧州の経済データは金利据え置きを示唆していたのに、引き下がることができなかったようだ。
利下げを早まったことだけが理由ではないが、今回7月の利下げは見送るしかなかった。このような政策変更を頻繁に繰り返せばECBそしてラガルド総裁に対する信頼は大きく損なわれることになる。ECBは6月に利下げをしたことで、逆に利上げできない状況に自らを追い込んでしまった。
中央銀行総裁が経済の専門家ではないことに問題があると指摘するエコノミストもいる。ラガルドECB総裁やパウエルFRB議長(二人とも法律家)は、経済的イデオロギー(信念)を持っていないから、不正確なスタッフの予測に頼ったり、独自の解釈や思惑を持つ委員からの意見に簡単に影響されたりしてしまうというのだ。
フランスの政治情勢もECBの政策に影響する可能性がある。フランスの下院議会選挙の第2回投票では、過半数に迫ると見られていた反ユーロ、反EU的な極右政党の国民連合(RN)が3位に押しやられ、左派連合のNFPが最大勢力へ躍り出る予想外の結果となった。
フランスでは憲法により1年間は新しい選挙が禁止されているため、少数派政府か、あるいは不安定な連立政権が誕生することになる。どの政党も議席の単独過半数を獲得しない「ハング・パーラメント」では、極端な政策の実行は困難だということが、短期的なユーロの安心材料となった。しかし同時にフランス政府が深刻な財政問題に対処する可能性も低くなる。これは中期的なユーロ不安材料である。
フランスの財政悪化は深刻だ。政府債務の対GDP(国内総生産)比率は110%を超え、EU(欧州連合)定める債務残高60%の2倍近くに膨れ上がっている。これは2010年代初めに起きたユーロ危機直前のイタリアの比率と同じ水準だ。しかし、債務削減に取り組むと宣言したマクロン大統領に議会を動かす力はもうない。今後どの政治勢力がどのように財政赤字問題に取り組むかは全く不透明な状況だ。
1年前にイタリア政府が予算案において財政赤字見込みを引き上げたことでイタリアの金利が急騰した。同じことが今後フランスで起きるリスクがある。格下げのリスク高まっている。そう考えるとユーロ高も限定的になりそうだ。