先週の株価上昇は日経平均の短期的な「揺らぎ」?

 ちなみに、TOPIX(東証株価指数)の日足チャートでもアイランド・リバーサルが出現しています。

図4 TOPIX(日足)とMACDの動き(2024年7月12日時点)

出所:MARKETSPEEDIIを元に筆者作成

 ただし、目立っているのは、2,900p水準でのもみ合いを経て高値を更新していることと、3月から4月にかけて形成した「トリプル・トップ」における「ネックライン」の攻防戦の方です。

 株価が勢いよく上昇し、あれよという間に最高値を更新していた日経平均とは異なり、TOPIXについては、着実に高値を更新していた印象です。

 こうした日経平均とTOPIXの値動きの違いは「NT倍率」の推移を見ても感じ取れます。

図5 NT倍率の推移(2024年7月12日時点)

出所:MARKETSPEEDIIデータを元に筆者作成

 NT倍率は「日経平均÷TOPIX」で計算され、数値が大きいほど日経平均が優位、反対に小さくなるほどTOPIXが優位となります。

 日経平均は7月に入ってからの上昇が目立っていましたが、図5を見ると、7月2日の14.03倍から、日経平均が4万2,000円台に乗せた11日には14.42倍まで上昇し、12日の急落で14.23倍に縮小した格好であることが分かります。

 図2や図3でも確認したように、この時期の売買があまり盛り上がっていなかったことを踏まえると、「短期筋を中心に日経平均の値動きが揺らいでいただけ」と見ることもできそうです。そんな時に出現したアイランド・リバーサルは、サインとしては説得力に欠ける面があります。

今週の相場環境は様子見が中心か?

 今週の国内株市場は、週初の15日(月)が祝日で4営業日となります。経済指標では6月分の全国消費者物価指数、企業決算ではディスコ(6146)などが注目されそうなものの、全体的にイベントや材料が少なく、基本的に海外市場の動向に合わせて反応していく展開が見込まれます。

 米国市場では、16日(火)の6月小売売上高をはじめ、17日(水)には米地区連銀経済報告(ベージュブック)が公表されます。

 企業決算においては、ゴールドマン・サックス(GS)モルガンスタンレー(MS)といった大手金融機関、消費財のジョンソン・アンド・ジョンソン(J&J)(JNJ)、そして、半導体関連企業のASMLホールディング(ASML)TSMC(TSM、台湾、NYSE ADR)など、注目企業の発表が相次ぎます。

 さらに、中国では、4-6月期のGDPと6月分の経済指標が15日(月)にまとめて発表され、また、この日からは中長期的な経済政策の方針が示されることが多いとされる「3中全会」も開催されます。

 これまで見てきたように、先週の日経平均は4万2,000円台まで駆け上がり、TOPIXも1989年12月の株価を超える場面があるなど、「相場の強さ」を見せつける動きとなりました。しかし、これからは決算シーズンが本格化していくため、相場の「勢い」で上昇してきた株価に対して「高いのか、安いのか」という視点が加わることになります。

 企業業績が最近までの株価上昇を正当化できるかが焦点になってきますので、今回のキーワードとなったアイランド・リバーサルが天井となるのかの答えは、決算の動向がカギを握ることになり、それまでの日本株は今週も含めて積極的に動きにくくなるかもしれません。

 また、米国市場では、「9月利下げ開始」シナリオが確実視されるのに伴って、米金利の低下や為替市場のドル高修正などの変化も出始めています。さらに、先週末にトランプ氏銃撃事件が発生し、その影響や情勢次第では、米国市場で「ほぼトラ」相場を再び織り込むような動きも想定され、日本株が影響を受ける可能性があります。

 このように、外部環境が慌ただしくなる中で、先週までの株価上昇の流れを継続することができるのかが試されることになりそうです。