※この記事は2019年8月8日に掲載されたものです。
CASE13 含み損4,000万円!【ご隠居型富裕層】の失敗例
富裕層が陥りやすい資産運用の失敗例第二弾の今回は、高金利通貨建て債券に投資する投資信託に高額を投じ、投資資産を16%も減らしてしまった、とある建設業元オーナーの失敗談。高金利通貨や商品への投資に潜むリスクについて見ていきましょう。
2億2,000万円が1億8,000万円に。どうしてこうなった?!
息子に会社を譲り、悠々自適の隠居生活を送っていた、元建設業オーナーのM氏。時間とお金に余裕があるため、銀行などの金融機関の担当者は、引退後も熱心に日参していました。情に厚いM氏は、長年の付き合いから断り切れず、自分個人の資産運用に踏み切りました。
購入したのは2013年当時、非常に高い分配金利回りで人気だった新興国債券に投資をする投資信託。「通貨選択型」と呼ばれる仕組みの商品で、米ドル建ての新興国国債を中心に投資をしつつ、他の新興国通貨への為替取引も組み合わせる、複雑な仕組みの商品でした。
M氏は、最も分配金額が高いと説明された「トルコリラコース」を選択。1万口あたり毎月150円の分配金が得られるもので、2013年秋ごろの基準価額はおよそ5,300円程度でした。150円×12カ月(1年分)=1,800円。つまり極端に言えば5,300円投資をすれば1年間で1,800円もらえる計算です。年率にして33%! この商品をM氏はなんと、1億5,000万円分もの高額分を購入したのです。
当時のトルコリラ建て10年物債券の金利は10%くらいと確かに高めでした。しかし、運用コストがかかる投資信託では、いかに高金利のトルコリラへ投資をしても、年間利回り33%を見込むのは不可能です。しかし、毎月振り込まれる分配金は、M氏にとって、引退後に減った収入を補ってくれるように思えました。そのため、肝心の投資元金が減少していく、という事実に気づくのが遅れてしまったのです。
分配金のみに視点を当てたM氏の投資はさらに過熱。2014年春には勧められるままに、7,000万円分を追加購入しました。しかし、追加購入直後の4月分から分配額は120円に減額。純資産残高は2014年秋をピークに急激に減少に転じ、2015年には分配額も80円、50円と連続して減額。2018年にはとうとう15円になってしまいました。ちなみに2019年の4月15日時点では基準価額は1,521円、分配金額は5円です。
毎月払い込まれる分配金は、実は、払い込んだ投資資金の大部分が返金されてきたようなものにすぎません。資産運用としての効果は薄いことに加え、約15%元本割れしていることは事実。1億5,000万円+7,000万円=2億2,000万円は、2018年時点の基準価額の評価では1億8,000万円まで減ってしまったのです。