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著者の愛宕 信康が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
日銀は予想通り6月に国債買入れ減額を決定~開始を7月に先送りした理由とは~

日銀は予想通り国債買入れの減額を決定~筆者の9月利上げ見通しは変わらず~

 日本銀行は6月13、14日の両日に開催したMPM(金融政策決定会合)で、政策金利を据え置く一方、国債買入れを減額する方針を決定しました。6月中に日銀金融市場局が開催する「債券市場参加者会合」で市場参加者からの意見を聴取した上で、7月MPM(30、31日)において今後1~2年の具体的な計画を発表する予定です。

 今回、国債買入れ減額を決めたのは、声明文に「金融市場において長期金利がより自由な形で形成されるよう」とあるように、あくまで市場機能の正常化が理由であって、決して円安対応ではありません。従って、7月に具体的な計画が決定された後、淡々とそれが実行されていくことになると予想されます。

 なお、国債買入れ減額の開始をあえて7月にずらした日銀の慎重スタンスを踏まえると、それと利上げを同時に行うことは考え難く、追加利上げは9月という筆者の見通しに変更はありません。自動車認証不正問題の帰趨や8月15日に発表される4-6月期実質GDP(国内総生産)がプラス成長になるか確認した上で、追加利上げの是非が適切に判断されるとみています。

減額開始を7月に持ち越した理由(1)~「相応の規模」を織り込ませるため~

 しかし、なぜ7月まで決定を持ち越したのでしょうか。植田和男総裁は記者会見で、「減額する以上、相応の規模となるというふうに考えています」と、まるで円安をけん制するかのような発言をしましたが、実はこれ、為替うんぬんというより、実際に比較的大きな規模の減額幅になることを示唆したものではないかと捉えています。

 そもそも「債券市場参加者会合」で市場参加者の意見を聞いてから減額ペースを決めると言っておきながら、なぜ「相応の規模」と言えるのでしょうか。為替市場へのけん制というだけなら、あまりに無責任と言わざるを得ません。他の8人の政策委員からしてみれば、なぜ議論する前からそんなことが言えるのかと、憤りを覚えるはずです。

 一つ考えられる点としては、国債買入れをある程度減らしても、長期金利はそれほど跳ね上がらないという事実があります。試算結果は後ほど紹介しますが、日銀も当然、どのくらい減額すればどのくらい長期金利が上昇するか試算しているはずで、植田総裁の頭の中にも比較的大きめの減額幅があるのではないかとみています。

 そうでなければ「相応の規模」などという言葉は出てこないはずです。

 ただ、いきなり大きめの減額規模を打ち出せば、1998年12月の「運用部ショック」のような金利ショックが起きるリスクがゼロではありません。慎重を期して「債券市場参加者会合」を開催し、国債買入れの減額幅が相応に大きくなることを事前に織り込ませながら、同時に少なくとも7月MPMまで、為替市場に警戒感を抱かせることを狙ったのではないかとみています。