クイズの正解:償還まで保有した日本国債と邦銀の普通・定期預金、定期積金

 厳密に言うと、「この世に完全な確定利回り商品はない」となります。ただし、このクイズは、「日本国は破綻しない」ことを前提としています。

 欧米の投資理論において、「リスクフリー・レート(リスクなし利回り)」という概念があります。「10年国債利回り」をリスクフリー・レートとするのが一般的です。欧米先進国において、「国は破綻しない」【注】という前提に基づいて、新発10年物国債利回りを「リスクフリー・レート」と呼んでいます。

【注】「国は破綻しない」前提
 実際には国は破綻することがあります。対外負債の大きい新興国では、国債のデフォルト(債務不履行)が起こることもあります。アルゼンチン国債は2001年にデフォルトを起こしました。日本については、第二次世界大戦後に国債のデフォルトを起こしています。ただし、現在の日本の国債については、デフォルトとなるリスクは極めて低いと判断します。

 正解は、【7】と【10】です。

 日本国は破綻しない前提ですから、日本の10年国債に投資して、償還期限の10年間、持ち切るならば、確定利回りとなります。

 また、日本国内に本店がある銀行や信用金庫、信用組合などで、利息が付く普通預金、定期預金、定期積金など、1人1金融機関当たり合わせて元本1,000万円までとその利息は、預金保険によって保護されるので、確定利回りです。

 ただし、預金保険の対象となる金融機関の海外支店、外国銀行の在日支店、政府系金融機関は対象外です。外貨預金や譲渡性預金、無記名預金、他人・架空名義預金なども預金保険の対象となりません。

 以下は、確定利回りではなく、予想利回りとなります。

【1】NTT(日本電信電話)(9432)株の配当利回り

 株の配当利回りは確定利回りではありません。業績が悪化して減配になると、利回りが低下し、株価が下がることがあります。

【2】米国の通信会社AT&T株の配当利回り

 米国株の配当利回りも確定利回りではありません。NTTと同様、株価は上がったり下がったりすることがあります。また、為替が円高になると、為替差損が生じることもあります。

【3】イオンリート投資法人(3292)の分配金利回り

 価格が上がることも下がることも、分配金が増えることも減ることもあります。

【4】毎月分配型投資信託の分配金利回り

 毎月分配型投信の分配金は、利益から払われているとは限りません。利益が出ていない時には「元本払戻金」から分配金を出します。元本を取り崩すだけの分配金もあるので、毎月分配型投信の利回りは、確定利回りではありません。元本払戻金の分配が多いファンドでは、長期的に基準価額が低下していくことが多くなっています。

【5】日本の電力会社が発行した社債

 発行企業が破綻すると元本が戻ってこないこともあります。確定利回りではありません。

【6】新発10年物日本国債に投資して償還を待たずに3年後に売却

 投資してから売却するまでの3年で、長期金利が大きく上昇していると、長期国債は値下がりします。3年後に売却すると、金利上昇によって、売却損が出ることもあります。逆に、長期金利が大きく低下していれば、売却益が出ることもあります。

【8】新発10年物米国国債

 米国も破綻(デフォルト)は想定しません。外国国債は、表面利率は固定されていますが、円建てで換算した場合に為替差損益を含めた利回りは変動する可能性があります。投資している10年間に、円高が進むと、償還金を受け取った時に、円換算額が減少します。つまり、米国株投資には、円高によって元本が目減りするリスクがあります。

【9】新発10年物ブラジル国債

 ブラジル国債への投資にも為替リスクがあります。対ブラジルレアルで、円高が進むと、為替差損が発生します。

理解できるリスクを負って利回りを確保する

 リスクフリー・レートを上回る利回りの債券には、なんらかのリスクがあります。円建て債券について言うと、リスクフリー・レートが約1%なので、それを上回るレートの債券には、なんらかのリスクがあります。そのリスクの内容を理解し、負う価値のあるリスクか判断する必要があります。「債券なのだから安全」という考えで思考停止に陥るべきではありません。

 問題に出した、NTT株(予想配当利回り3.4%)や、AT&T株(予想配当利回り6.7%)、イオンリート投資法人(予想分配金利回り5.0%)は、確定利回りではなく、元本割れリスクがありますが、それを理解した上で、長期的な資産形成のために分散投資していく価値が高いと私は判断しています。