2024年1-3月期に軒並み業績悪化、不動産投資の低迷で当面は供給過剰続く

 香港上場の本土セメント銘柄の2024年1-3月期決算は軒並み悪化し、大幅減益あるいは赤字拡大だった。4-6月期には季節要因による採算の改善が見込まれるが、構造的な収益性の改善は短期的には困難。BOCIは2024年の国内セメント需要が前年比で5%減ると予想し、不動産開発投資がさらに落ち込む事態となれば、一段の需要減もあり得るとした。一方の供給サイドでは、過剰設備が顕著。業界全体の設備稼働率の悪化にもかかわらず、新規ラインが相次ぎ稼働する。炭素排出削減に向けたカーボンクレジット取引が旧式設備を一部淘汰(とうた)する可能性があるとはいえ、今後2-3年はその効果もさほど見込めないとして、BOCIはセメント・セクター全体に対するレーティングを中立に引き下げた。個別ではカバー銘柄3社のうち中国建材(03323)だけに強気見通しを付与した。

 前年下期に見られた利幅縮小圧力が続く中、1-3月期にはセメント各社の採算が悪化した。すでに業況サイクルの底辺に近づいた可能性はあるものの、続く4-6月期も、季節要因以外の理由による採算性の改善には期待しにくい。

 2024年の国内セメント需要について、BOCIは前年比5%減を見込む。インフラ投資に関しては同6.5%増を予想しているが、この数字は前年実績(同8.2%増)に届かず、セメント需要に直結するとも限らない。半面、不動産開発投資に関するBOCIの予想は8.0%減(前年は9.6%減)。セメント需要と相関関係の高い新規住宅着工面積は、2023年に20.4%減少した後、2024年1-3月期には前年同期比27.8%の落ち込みを記録した。

 国内の分譲用住宅の成約面積は、1-3月期に前年同期比19.4%減。地方政府は相次ぎ、住宅購入支援策を強化しているものの、セメント・セクターに対する実質的なプラス効果には疑問符が付く。民営デベロッパーは総じて財務が悪化しており、たとえ物件販売を通じて現金化しても、次の開発プロジェクトより、債務の返済を優先する可能性が高い。

 供給面では業界の過剰設備が顕著。クリンカー(セメント材)年産能力が年末に18億3,000万トンに上る中、2023年の設備稼働率は59%だったが、ccement.comの情報によれば、2024年には新規生産ライン27本(総年産力4,000万トン)が稼働する予定という。

 一方、一般炭のスポット価格は1-3月期に10%下落した。ただ、市場競争が激化する中、コスト低減分を製品値下げに回した可能性が高く、セメント各社の利益率の改善につながったとは考えにくい。

 BOCIは1-3月期の業績悪化を受け、安徽コンチセメント(00914)と中国建材の利益見通しを下方修正した。2024年中の底打ちを見込みながらも、向こう2年間は緩やかな回復ペースにとどまると予想。現在株価のバリュエーションの割高感を指摘し、相対的に配当利回りが高い中国建材に対してのみ、強気の投資判断を付与した。安徽コンチセメントと華潤セメント(01313)の株価の先行きに関しては中立見通しを示している。