出遅れ高配当利回り株の復活に期待、決算発表本格化で

 米国の利下げ期待の高まり、半導体関連株への期待感などが、ここ1年間の大幅な株価上昇を演出してきましたが、現在では、米国の利下げ先送り観測が強まり、半導体関連株にも上値追い一服ムードが生じつつあります。

 一方で、日経平均株価(225種)は足元の大幅調整で過熱感が後退し、押し目買いの好機となっている状況です。こうした中、2023年以降の株式市場で出遅れていた銘柄の復活に注目したいと考えます。

 とりわけ、バリュー優位の状況にもなってくるとみられるため、出遅れの高配当利回り銘柄を選定しています。2025年3月期のガイダンスが示される決算発表が、こうした銘柄群のリバウンドの契機につながると考えます。

 4.0%以上の配当利回り(2024年3月期ベース)がある銘柄の中で、2023年3月末比で株価が15%以上下落している銘柄、かつ、2025年3月期の経常利益コンセンサスが2ケタ増益の銘柄をスクリーニングしています。なお、コンセンサス予想は楽天証券の国内株式情報から見ることができます。

(表)株価復活期待の高配当利回り銘柄

コード 銘柄名 配当利回り
(%)
4月22日終値
(円)
時価総額
(億円)
株価騰落率
(%)
5938 LIXIL 5.04 1,786.0 5,129 ▲17.96
4503 アステラス製薬 4.74 1,476.0 26,710 ▲21.61
4061 デンカ 4.39 2,277.5 2,016 ▲16.73
6412 平和 4.09 1,955.0 1,951 ▲25.64
2181 パーソルHD 4.03 214.9 5,011 ▲19.03
注:配当利回りはコンセンサス予想
注:株価騰落率は2023年3月末比

銘柄選定の要件

  1. 配当利回り(市場コンセンサス)が4.0%以上(4月22日現在)
  2. 時価総額が1,000億円以上
  3. 2023年3月末比株価下落率が15%以上
  4. 2025年3月期コンセンサス経常増益率が10%以上
  5. 3月期本決算

厳選・高配当銘柄(5銘柄)

1 LIXIL(5938・東証プライム)

 2011年にトステム、INAX、新日軽、サンウエーブ工業、東洋エクステリアの5社が統合して誕生した国内最大手の住宅設備機器メーカーです。トイレ、洗面化粧台、浴室、キッチンなどのウォーターテクノロジー事業(LWT)、窓や玄関ドア、エクステリア製品、インテリア建材などのハウジングテクノロジー事業(LHT)を展開します。

 世界150カ国以上で事業展開、ショールーム数は16市場116拠点(2023年3月末現在)に上ります。GROHE、American Standardといった世界的ブランドも傘下に収めています。

 2024年4月22日に業績予想の下方修正を発表しています。2024年3月期事業利益は従来予想の400億円から230億円、前期比10.7%減と一転減益見通しに引き下げています。市場コンセンサスなども下回る水準にまでの下方修正となります。

 国内事業は価格改定効果の浸透や断熱リフォーム向け商材の売上増などによって計画通りである一方、海外事業は収益源となっている欧州市場を中心に、金利上昇やインフレを背景とした需要の低迷状況が続いているもようです。なお、年間配当金は前期比横ばいの90円計画を据え置いています。

 業績下方修正前の段階ですが、2025年3月期の事業利益コンセンサスは前期比5割増の460億円程度でありました。利益水準は切り下がる可能性が高まっていますが、大幅増益見通し自体には変化がないでしょう。国内窓事業は2024年の補助金申請が開始されて3月後半から受注が回復しています。

 海外事業では、早期に実施が予定されている欧州の利下げの効果に期待が持てます。新年度の業績回復期待が高いことから、織り込まれていた2024年3月期業績の下方修正が発表されたことで、悪材料出尽くし感は強い状況といえます。また、減配アナウンスがなかったことから、会社側の配当への意識も強いと感じられます。

2 アステラス製薬(4503・東証プライム)

 2005年に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併して誕生した国内第3位の医薬品メーカーです。前立腺がん治療剤「イクスタンジ」を筆頭に、泌尿器疾患、移植、がん領域で豊富な実績を有しています。

 開発初期から優先的に経営資源を投入する分野を特定し、それぞれで複数のプロジェクトを展開していく戦略を採っており、現在は「遺伝子治療」「がん免疫」「眼科」「筋肉」「ワクチン」などが注力分野となっているようです。2023年3月期の売上収益に占める研究開発費比率は18.2%で、業界平均を大きく上回っています。

 2024年3月期第3四半期(4-12月期)営業利益は741億円で前年同期比59.1%減となっています。イクスタンジや過活動ぼうこう治療剤ミラベグロンなどの売上がやや伸び悩んだほか、無形資産償却費や構造改革費用なども膨らみました。通期予想は第3四半期決算時に下方修正、営業利益は従来予想の1,230億円から830億円、前期比37.6%減に引き下げています。

 米国における血管運動神経症状治療薬ベオーバの処方箋が伸び悩んでいることが主因のようです。その後、4月12日には、減損損失約400億円の計上などで、さらに130億円にまで引き下げています。なお、年間配当金は前期比10円増の70円計画を据え置いています。

 2025年3月期営業利益のコンセンサスは2,300億円程度が想定されているようです。ベオーバの中期見通しは引き下げられる可能性がありますが、2025年3月期の売上拡大要因となります。

 また、尿路上皮がん治療薬パドセブ、加齢黄斑変性症治療剤アイザーヴェイ、胃がん治療薬ゾルベツキシマブなども順調に売り上げが拡大し、収益の押し上げ要因につながっていく見通しです。前年度に発生した減損の一巡も見込まれます。そのほか、アイザーヴェイの欧州の承認可否、ゾルベツキシマブのすい臓がん試験結果などが注目イベントとして控えています。