日経平均、中東緊迫化や半導体株安で4月後半から下げ幅広げる

 直近1カ月(3月18日~4月22日)の日経平均株価(225種)は終値ベースで5.8%の下落となりました。期間中前半は買いが先行、3月22日には高値4万1,087円を付けましたが、その後は軟化し、4月中旬以降は下落ピッチが速まる状況になっています。

 とりわけ、4月19日には1,011円安となり、2021年2月26日以来の下げ幅を記録しました。4月19日には一時、3万6,733円まで下落し、2月9日以来の3万7,000円割れとなっています。なお、この期間(3月15日~4月19日)のニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均の騰落率は1.7%の下落でした。

 3月19日には日本銀行金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除が正式に発表されました。事前に政策修正を行うとの観測が強まっていたこともあり、正式発表後に為替相場がドル高・円安方向に向かったことで、株式市場には短期的なあく抜け感が台頭する形となりました。

 さらに、20日にはFRB(米連邦準備制度理事会)がFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果を発表。予想通り5会合連続での政策据え置きを決定しましたが、金融当局者が想定以上のハト派姿勢を示したため、年内の利下げ期待が再度強まる展開となり、日本株にとっても追加の支援材料となりました。

 その後、3月年度末にかけては利食い売りが優勢となって上値が重くなりました。ちなみに、日経平均株価(225種)の配当権利落ち分は約264円となったようです。

 新年度に入り、4月1日には年度替わりに伴う機関投資家の益出し売りで大きく値を下げましたが、その後も、良好な経済指標が相次いだことから米国の早期利下げ期待が大きく後退する状況となり、戻りの鈍い動きが続きました。

 さらに、足元では、中東情勢の悪化に対する警戒感、蘭ASMLや台湾TSMCの決算発表をきっかけとした半導体株安の流れの強まりを背景にして、下げ幅が広がる状況となってきています。

 個別ではこの期間、半導体関連の下げが目立ち、アドバンテスト(6857)レーザーテック(6920)SCREENホールディングス(7735)東京エレクトロン(8035)など主力どころがそろって10%以上の下落となっています。

 米SOX指数(半導体株指数)の下げに連動する形となりましたが、台湾TSMCが半導体業界の先行き見通しを下方修正したことが下げに拍車をかけたようです。そのほか、米利下げ先送り観測を背景に、SHIFT(3697)ラクス(3923)Sansan(4443)メドレー(4480)など、いわゆる中小型グロースの代表銘柄もそろって大きく下落しています。

 日経平均株価(225種)のウエートが大きいソフトバンクグループ(9984)ファーストリテイリング(9983)が10%以上の大幅安となったことも、指数の大幅安につながった形です。半面、北海道電力(9509)東京電力ホールディングス(9501)など電力株の上昇が目立ちましたが、これは原発再稼働期待や生成AI向けの電力需要拡大期待などが材料視されたようです。

半導体調整長期化や米利下げ先送りリスク残るも、日本株は押し目買い好機迫る

 4月19日には、「イラン領内で複数の爆発音」「イスラエルがイランの標的を空爆したことを確認」などの報道が伝わり、株価下落を加速させる材料となりました。13日にはイランからイスラエルへの初めての直接攻撃が行われていたことからも、両国の全面戦争突入といった最悪シナリオなども意識されたとみられます。

 ただ、実際はイスラエルの攻撃は限定的なものにとどまっており、イラン指導部でもその後は静観を続けています。双方ともに本格衝突は避けたい考えとみられ、いったんこの問題は幕引きが図られる可能性が高いでしょう。一段の原油高リスクなども後退するため、株式市場の反発要因とはなりそうです。

 一方、もともと短期的な買われ過ぎ感が強かった半導体関連株の調整終了、本格反発にはやや時間を要する可能性があります。米国の利下げ期待が後退していることも、グロース株と位置付けられる半導体関連株には逆風となります。

 さらに、今後国内半導体関連株の決算発表が本格化しますが、世界的に注目度の高いASMLやTSMCの決算発表後の関連株の方向性を大きく変えることは難しく、むしろ、ネガティブな方向に反応しやすいと考えます。少なくても、5月23日ごろに予定されている米エヌビディアの決算発表まで、潮流は変わりにくいといえるでしょう。

 米国の6月利下げ期待は大きく低下しており、利下げ開始時期の先送りや年内2回程度の利下げにとどまるとの見方は織り込まれつつあります。

 ただ、年初からの原油相場の上昇、足元でも上振れが続く経済指標からは、さらなる利下げペースの鈍化も今後は考慮する必要があります。過度なドル安円高反転のリスク軽減にはつながりますが、米国株安による日本株への悪影響がやや大きいとみます。

 日経平均株価(225種)は高値からの下落率が一時10%を超えており、26週移動平均線乖離(かいり)率などをみても、過度な高値警戒感は大きく後退しつつあります。十分に押し目買い妙味のタイミングに入っているといえるでしょう。

 もともと、2024年3月期の決算発表は、ガイダンスリスクなどが警戒されやすくリスク要因と考えていたので、今後本格化する決算発表を通過することで、あく抜け感なども強まるとみられます。半導体株調整長期化の可能性、米利下げ先送りの可能性などを考慮すると、ハイテク系よりも内需系、グロース株よりもバリュー株などがより投資対象としては妙味と考えられます。

 とりわけ、配当権利落ちに伴う処分売りも一巡したとみられる高配当利回り銘柄などに、あらためて注目したいところです。ちなみに、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)などによる長期投資であれば、半導体株に関しても買い好機と捉えられるでしょう。

 長期的にみると半導体関連株の全体相場に対するアウトパフォーム傾向に変化はないとみられるためです。とりわけ、積み立て型の投資であれば、安く買える好機が続く状況になっているとも指摘できます。

出遅れ高配当利回り株の復活に期待、決算発表本格化で

 米国の利下げ期待の高まり、半導体関連株への期待感などが、ここ1年間の大幅な株価上昇を演出してきましたが、現在では、米国の利下げ先送り観測が強まり、半導体関連株にも上値追い一服ムードが生じつつあります。

 一方で、日経平均株価(225種)は足元の大幅調整で過熱感が後退し、押し目買いの好機となっている状況です。こうした中、2023年以降の株式市場で出遅れていた銘柄の復活に注目したいと考えます。

 とりわけ、バリュー優位の状況にもなってくるとみられるため、出遅れの高配当利回り銘柄を選定しています。2025年3月期のガイダンスが示される決算発表が、こうした銘柄群のリバウンドの契機につながると考えます。

 4.0%以上の配当利回り(2024年3月期ベース)がある銘柄の中で、2023年3月末比で株価が15%以上下落している銘柄、かつ、2025年3月期の経常利益コンセンサスが2ケタ増益の銘柄をスクリーニングしています。なお、コンセンサス予想は楽天証券の国内株式情報から見ることができます。

(表)株価復活期待の高配当利回り銘柄

コード 銘柄名 配当利回り
(%)
4月22日終値
(円)
時価総額
(億円)
株価騰落率
(%)
5938 LIXIL 5.04 1,786.0 5,129 ▲17.96
4503 アステラス製薬 4.74 1,476.0 26,710 ▲21.61
4061 デンカ 4.39 2,277.5 2,016 ▲16.73
6412 平和 4.09 1,955.0 1,951 ▲25.64
2181 パーソルHD 4.03 214.9 5,011 ▲19.03
注:配当利回りはコンセンサス予想
注:株価騰落率は2023年3月末比

銘柄選定の要件

  1. 配当利回り(市場コンセンサス)が4.0%以上(4月22日現在)
  2. 時価総額が1,000億円以上
  3. 2023年3月末比株価下落率が15%以上
  4. 2025年3月期コンセンサス経常増益率が10%以上
  5. 3月期本決算

厳選・高配当銘柄(5銘柄)

1 LIXIL(5938・東証プライム)

 2011年にトステム、INAX、新日軽、サンウエーブ工業、東洋エクステリアの5社が統合して誕生した国内最大手の住宅設備機器メーカーです。トイレ、洗面化粧台、浴室、キッチンなどのウォーターテクノロジー事業(LWT)、窓や玄関ドア、エクステリア製品、インテリア建材などのハウジングテクノロジー事業(LHT)を展開します。

 世界150カ国以上で事業展開、ショールーム数は16市場116拠点(2023年3月末現在)に上ります。GROHE、American Standardといった世界的ブランドも傘下に収めています。

 2024年4月22日に業績予想の下方修正を発表しています。2024年3月期事業利益は従来予想の400億円から230億円、前期比10.7%減と一転減益見通しに引き下げています。市場コンセンサスなども下回る水準にまでの下方修正となります。

 国内事業は価格改定効果の浸透や断熱リフォーム向け商材の売上増などによって計画通りである一方、海外事業は収益源となっている欧州市場を中心に、金利上昇やインフレを背景とした需要の低迷状況が続いているもようです。なお、年間配当金は前期比横ばいの90円計画を据え置いています。

 業績下方修正前の段階ですが、2025年3月期の事業利益コンセンサスは前期比5割増の460億円程度でありました。利益水準は切り下がる可能性が高まっていますが、大幅増益見通し自体には変化がないでしょう。国内窓事業は2024年の補助金申請が開始されて3月後半から受注が回復しています。

 海外事業では、早期に実施が予定されている欧州の利下げの効果に期待が持てます。新年度の業績回復期待が高いことから、織り込まれていた2024年3月期業績の下方修正が発表されたことで、悪材料出尽くし感は強い状況といえます。また、減配アナウンスがなかったことから、会社側の配当への意識も強いと感じられます。

2 アステラス製薬(4503・東証プライム)

 2005年に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併して誕生した国内第3位の医薬品メーカーです。前立腺がん治療剤「イクスタンジ」を筆頭に、泌尿器疾患、移植、がん領域で豊富な実績を有しています。

 開発初期から優先的に経営資源を投入する分野を特定し、それぞれで複数のプロジェクトを展開していく戦略を採っており、現在は「遺伝子治療」「がん免疫」「眼科」「筋肉」「ワクチン」などが注力分野となっているようです。2023年3月期の売上収益に占める研究開発費比率は18.2%で、業界平均を大きく上回っています。

 2024年3月期第3四半期(4-12月期)営業利益は741億円で前年同期比59.1%減となっています。イクスタンジや過活動ぼうこう治療剤ミラベグロンなどの売上がやや伸び悩んだほか、無形資産償却費や構造改革費用なども膨らみました。通期予想は第3四半期決算時に下方修正、営業利益は従来予想の1,230億円から830億円、前期比37.6%減に引き下げています。

 米国における血管運動神経症状治療薬ベオーバの処方箋が伸び悩んでいることが主因のようです。その後、4月12日には、減損損失約400億円の計上などで、さらに130億円にまで引き下げています。なお、年間配当金は前期比10円増の70円計画を据え置いています。

 2025年3月期営業利益のコンセンサスは2,300億円程度が想定されているようです。ベオーバの中期見通しは引き下げられる可能性がありますが、2025年3月期の売上拡大要因となります。

 また、尿路上皮がん治療薬パドセブ、加齢黄斑変性症治療剤アイザーヴェイ、胃がん治療薬ゾルベツキシマブなども順調に売り上げが拡大し、収益の押し上げ要因につながっていく見通しです。前年度に発生した減損の一巡も見込まれます。そのほか、アイザーヴェイの欧州の承認可否、ゾルベツキシマブのすい臓がん試験結果などが注目イベントとして控えています。

3 デンカ(4061・東証プライム)

 インフルエンザワクチンや新型コロナウイルスの検査試薬などを扱うライフイノベーション部門、リチウムイオンバッテリー向け導電助剤や放熱材料・基板、機能性フィルムなどを扱う電子・先端プロダクツ部門、機能性エラストマーやインフラ強靭(きょうじん)化に必要な特殊混和材などを扱うエラストマー・インフラソリューション部門、スチレン系機能樹脂や食品包装用シートなどを扱うポリマーソリューション部門を展開する化学会社です。

 2024年2月には、海外子会社におけるノロウイルスワクチン開発中止を発表しています。

 2024年3月期第3四半期(4-12月期)営業利益は125億円で前年同期比51.8%減になりました。電子・先端プロダクツでは、民生向け需要減やアセチレンブラックの高圧ケーブル向け需要低調が響きました。エラストマー・インフラソリューションも、クロロプレンゴムの需要低調、米国子会社のコスト増などで大幅減益となっています。

 通期予想は従来の190億円から110億円、前期比66.0%減に下方修正しました。主力製品の需要が想定を下回っているほか、クロロプレンゴムが能登半島地震により一時操業停止となった影響も響くようです。なお、年間配当金は前期比横ばいの100円計画を据え置いています。

 2025年3月期営業利益は220億円程度がコンセンサスとなっているようです。半導体封止材に使われる球状シリカの出荷増などが期待できるとみられています。在庫評価減などの影響も軽減するとみられます。

 同社では、品質不正問題の発覚、米司法省からの環境関連訴訟提起、国内での配管破裂事故などが重なり、コンプライアンスに対する懸念が強まりました。そのため、株価は長期的な低迷状態が続き、割安感も強まっている状況にあります。足元では、クロロプレンモノマーの大幅な削減を求める米環境保護庁の新規制も不透明要因となりつつあります。

 ただ、クロロプレンモノマーは赤字が続いてきたプラントでもあり、今後の収益改善策はプラスに受けとめられる可能性もありそうです。

4 平和(6412・東証プライム)

 パチンコ・パチスロなど遊技機の大手企業です。子会社のPGMホールディングスではゴルフ場の保有・運営を行っており、ゴルフ事業も主力分野となっています。遊技機では「ゼロタイガー」「ビッグシューター」「CR黄門ちゃま2」「アントニオ猪木という名のパチスロ機」など多くのヒット作を投入してきました。

 2023年3月期のパチンコ機・パチスロ機販売台数は12万6,894台を数えます。一方、ゴルフ場数は2024年12月末現在で148となっています。PGMグループでは「PGMホテルリゾート沖縄」を2026年に開業予定ともなっています。

 2024年3月期第3四半期(4-12月期)営業利益は193億円で前年同期比31.4%減となっています。ゴルフ事業が大幅増益となっている一方、遊技機事業は主にパチンコ機の販売台数減少によって大幅減収減益となりました。第3四半期決算時に、通期営業利益予想は従来の300億円から226億円、前期比16.0%減に下方修正しています。

 パチンコ機需要の伸び悩みによる総販売台数の減少のほか、型式試験適合に時間を要したことで計画していた数機種の投入を来期に見送ったことも背景のようです。なお、年間配当金は前期比横ばいとなる80円計画を据え置いています。

 2025年3月期の営業利益コンセンサスは300億円程度とみられています。遅れていた新機種投入効果などでパチンコ機の販売が底打ちするとみられるほか、パチスロ機は2024年2月以降に投入した最新スマスロ機種の「Lパチスロガールズ&パンツァー最終章」「L南国育ち」などのフル寄与が見込めます。

 ゴルフ事業も「女性におすすめのゴルフ場」20コース選定やサポートプロが在籍する「withGolf」などの施策効果によって、順調に収益拡大が続くものと想定されます。

5 パーソルHD(2181・東証プライム)

 人材総合サービス業界の大手企業の一角です。人材派遣の「テンプスタッフ」創業でスタートし、「doda」ブランドの人材紹介や求人広告なども主力分野となります。

 国内派遣稼働スタッフ数は約12万6,000人(2023年12月1日現在)、国内求人数は約31万2,000件(2024年2月時点)、年間取引社数は約4万6,000件(2022年度実績)、海外サービス展開エリアは13エリア・187拠点(2024年2月時点)となっています。海外では特にアジア市場に強みを持っています。

 2024年3月期第3四半期(4-12月期)の営業利益は409億円で前年同期比4.7%減となっています。コロナ関連案件の剥落によるBPO事業の大幅減益が響く形となっています。通期営業利益予想は第3四半期決算時に下方修正、従来予想の545億円から490億円、前期比14.6%増に引き下げています。

 新型コロナ収束後の著しく過熱感のあった人材需要が落ち着きを取り戻しつつあり、人材紹介事業、人材派遣事業ともに一服感が見られているもようです。配当性向は調整後EPS(1株当たり利益)の50%を基準としていますが、従来計画の年間8.6円(株式分割考慮後)を据え置いています。

 2025年3月期営業利益コンセンサスは前期比10%前後の増益となっているようです。コロナ禍での成長スピードは今後鈍化するとみられますが、巡航速度の成長は続くものと考えられます。とりわけ、企業の賃上げ傾向が続く中で、価格転嫁の流れが人材市場にも波及してくればメリットとなります。

 また、転職市場は構造的な拡大が期待されており、この市場において高いブランド知名度を有する同社は、ボリュームゾーンの若年層を中心として、業界平均を上回る成長が続く可能性も高いでしょう。