生産者物価(PPI)の上昇は消費者物価(CPI)の「財」に波及する

 さらに、川中物価であるPPIの上昇は、川下物価であるCPI(消費者物価指数)に波及します。図表5にPPIとCPIの内訳である「財」の前年比を掲載しましたが、これを見ると両者がかなりリンクして変動していることか分かります。

<図表5 生産者物価指数と消費者物価指数>

(出所)BLS、楽天証券経済研究所作成

 この関係を利用して、図表4で示したPPIの推計値(図中の赤い点線)を前提にCPI「財」の先行きを推定したのが図表5の青い点線です。結果は一目瞭然。ISM製造業景況感指数の改善は、PPIの上振れを通じてCPI「財」の上昇につながり、今年末には前年比2%程度まで伸びを高める計算となります。

 なお、「サービス」の価格については、今年2月7日のレポートでプラス幅がなかなか縮小し難いことを、PCEデフレーターの推計によって紹介しましたが、CPI「サービス」でも基本的に傾向は同じです。それに加えて、せっかくゼロ%近辺に落ち着いていた「財」の価格まで上振れるようなことになれば、FRBは利下げ転換どころではなくなる可能性があります。

 というわけで、以上見てきた通り、マネタリーベースの拡大、ISM製造業景況感指数の循環的な改善は、生産者物価や消費者物価を上振れさせる兆候である可能性が高く、そうした動きが顕在化していけば、一部から聞かれる「次は利下げではなく、利上げになるのでは」との見方が現実味を帯びてくることになります。

 引き続き各種マクロ経済変数を警戒しながらウオッチしていく必要がありそうです。