崩れる「利上げ→金融タイト化→雇用悪化→景気後退」という過去のパターン
このように、マネーの観点から見るとすでに金融緩和に転じている可能性があるわけですが、そうなると「利上げ→金融環境のタイト化→雇用悪化→景気後退」という過去のパターンが成立しない可能性が、我々が想像する以上に高まっているのかもしれません。
米国で正式に景気循環日付を決めているのはNBER(全米経済研究所)ですが、そのホームページを見ると、景気後退を判定する際に雇用と所得を重視していることが明記されています。その下で、上記のパターンが生まれているわけですが、それは銀行貸出態度(シニア・ローン・オフィサー・サーベイ)と失業率の関係を見れば明らかです(図表2)。
図を見ると、金融環境がタイト化した後、しばらくして失業率が大幅に悪化し、そのタイミングで景気後退に陥っていることが見て取れます。
<図表2 米銀の貸出態度および失業率と景気後退>
しかし、今回の利上げ局面では、2023年半ばにかけて銀行貸出態度が大幅にタイト化したにもかかわらず失業率は大幅には悪化しておらず、そうこうしているうちに銀行貸出態度は2023年10月調査から緩和に転じています。
このまま銀行貸出態度が緩和していけば、「金融環境のタイト化→失業率の大幅上昇→景気後退」という過去のパターンとは全く違う絵が出来上がることになります。5月上旬に発表される4月のシニア・ローン・オフィサー・サーベイが注目されます。