ガラス価格は4月に上昇も需給バランスは脆弱、長期的には最終需要の回復がカギ

 太陽光発電用ガラスの価格は4月にようやく上向いたが、主に在庫の増大が響き、バリューチェーンの大半で採算性が悪化した。BOCIはガラスに関しても受注の減速と段階的な生産力の拡大を背景に、在庫調整のミニサイクルが4月で途切れる可能性を指摘。ポリシリコンや統合モジュールの生産者は現金損失を抑えるため、短期的に設備稼働率を抑制せざるを得なくなる可能性があるとした。長期的には、稼働中・建設中の生産能力を全て消化するには、最終需要の回復が前提になるとの見方。太陽光発電セクターに対して中立的なレーティングを維持し、個別では福莱特ガラス(06865)、晶科能源控股(ジンコソーラー:米JKS)の株価の先行きに中立見通しを維持した。太陽光用ガラスメーカー信義光能(00968)に関しては、従来の強気見通しを中立的に引き下げた。

 中国シリコン業協会(CSIA)によれば、N型のポリシリコン価格は今週、1kg当たり60元の大台を上抜けたが、P型は数週間前に比べて19%下落した。在庫水準が膨らむ中、ウエハーメーカーはよほど安価でない限り、新規の発注に消極的。太陽光発電チェーンの主要企業は現状、そろって赤字経営を強いられている。

 BOCIによれば、高コスト企業は短期的に生産調整を迫られる可能性がある。ポリシリコン、ウエハー、モジュールの価格は大半の企業(mg-Si=ケイ化マグネシウムなどのサプライヤーも同様)で現金コストに近い水準にあり、下落余地は限定的とみられる。

 うちガラス価格は3月の急ピッチの在庫調整(5週間で31%削減)を背景に、ようやく上向きに転じ、価格の上昇を実現させた例外的なケースとなったが、BOCIは二つのリスクを指摘している。うち一つは、4月の1平方メートル当たり1.5-2.0元の値上げは全体像を反映しておらず、前面ガラスのみの数字。背面ガラス価格は同1.0元低下し、全体の平均値上げ幅は同0.5元に届かなかった。ただ、フロートガラスによる背面ガラス市場への侵食を防ぐと同時に、迅速な在庫調整による平均価格の緩やかな上昇を実現させるという意味で、有効な戦略と言えるという。もう一つのリスクは、3月の在庫調整が実需を反映していないこと。モジュールメーカーが先行きの価格上昇観測を受け、ガラス在庫を補充した可能性が示されており、4月には同在庫の縮小ペースが鈍化、あるいは増加に転じる見込み。ソーダ灰や天然ガスなどの調達コストの低下もあり、5月にはガラス価格が再び下落に転じる可能性がある。

 太陽光発電ガラス価格に対する楽観見通しは投資家だけでなく、業界関係者にも広がったが、3月に稼働を開始した生産施設は日産計4,400トン規模(世界生産量の約4%)と、15カ月ぶりの高水準。建設中の施設も多く、BOCIは今後、需給バランスが容易に悪化する可能性を指摘。太陽光発電の需要見通しが不透明な中、現在の関連銘柄のバリュエーションはリスク・リワード比の視点から、ほぼ適正水準にあるとしている。