相続が発生した時に発生する税金は?

 ご家族やご親族がお亡くなりになり、相続が発生した時にかかる税金として真っ先に思いつくのが「相続税」です。

 相続税は、相続発生から10カ月後が期日となっており、それまでに相続税の申告、納税を済ませる必要があります。

 ただ、相続が発生しても相続税がかからないほどの財産しか有していなかった、というケースも多いと思います。その場合、当然ながら相続税の申告・納付は不要となります
(小規模宅地の特例により相続税額がゼロとなる場合など、相続税は発生しないものの申告が必要となるケースもあります)。

 もう一つ、相続が発生した際に申告・納税を行わないといけないものがあります。それが所得税の「準確定申告」です。準確定申告とは、亡くなった方の所得税の確定申告(個人で事業を行っていた方がなくなった場合は、消費税の確定申告も)のことです。

 亡くなった方に代わり、相続人の方が所得税の計算を行い、申告・納税を行います。通常の確定申告では、1月1日~12月31日の1年間の所得が対象となりますが、準確定申告の場合は1月1日~相続発生日までの所得が対象です。

相続税よりもはるかに早く期日が到来する「準確定申告」

 相続税は、基礎控除額を超える相続財産がなければ発生しませんので、課税対象外となることが多いです。

 しかし準確定申告は、相続が発生した年の所得がある程度以上あれば、申告・納税が必要です。相続税が発生しないからといって所得税の準確定申告も不要、とは限りませんし、所得税の準確定申告が免除されることはありません。なぜなら、相続税と所得税は異なる税金だからです。

 準確定申告の期限は、「相続の開始があったことを知った日」から4カ月以内となっています。ただし、1月1日~3月15日の間に亡くなった場合は、前年分、当年分とも、準確定申告書の提出は「相続の開始があったことを知った日」から4カ月以内となります。

 実はこの「4カ月」というのが、皆さんが想定しているよりはるかに早く訪れるということをお伝えしておきたいと思います。

 筆者は相続税申告業務も数多く行っていますが、相続税申告の依頼が来るのは、相続が発生してから2~3カ月後くらいが多いです。

 もし相続発生から3カ月後に相続時申告業務の依頼が入ったとしたら、相続税の申告までには7カ月あります。

 しかし準確定申告の期日は相続発生後4カ月以内ですから、相続発生から3カ月後であれば、そこから1カ月以内に準確定申告の要否を調査し、必要となれば準確定申告を行わなければなりません。実際、準確定申告の期日まで時間がほとんどなく、大慌てでお客さまへ資料を準備してもらう…、ということもよくあるのです。

準確定申告を期日内に提出しないと…

 準確定申告は「相続の開始があったことを知った日」から4カ月以内という期限がありますが、この期限を過ぎてしまうと、無申告加算税、延滞税といったペナルティが課されてしまいます。

 税の知識がないと、準確定申告が必要であることに気づかずに4カ月が過ぎてしまうこともあるでしょうが、「準確定申告が必要と知らなかった」といった主張は通りませんので注意しましょう。

 なお、計算の結果、所得税が納付ではなく還付となる場合は、期日内に提出しなくてもペナルティは発生しません。

準確定申告が必要かどうかをまずは調べよう

 まずは、亡くなった方の準確定申告が必要かどうかを調べましょう。ヒントとなるのが、亡くなった方が生前に毎年確定申告をしていたかどうかです。

 もし事業所得、不動産所得などがあり、生前の確定申告書をみても毎年納付税額が発生しているのであれば、準確定申告が必要なことが多いです。

 相続税申告の依頼を税理士にしているのであれば、税理士がこのあたりの事情を相続人の方にヒアリングし、各種資料を準備いただいた上で準確定申告の要否を判断しますので、漏れが生じることは基本的にありません。

 しかしそうではない場合は、準確定申告を知らなければ、必要な申告・納税を失念し、その結果後々ペナルティが生じてしまう恐れもあります。

 ご家族、ご親族の方がお亡くなりになり、ご自身が相続人の立場となった場合は、相続税の発生の有無とともに、準確定申告の要否についてもできるだけ早く確認した上で、必要な手続きを取るようにしてください。

 次回は、準確定申告の際に気を付けるべき点や誤りやすい点などにつきご説明します。