長期視点では円建て米国株式のパフォーマンスが優勢
米国株式市場を象徴するS&P500種指数は3月まで5カ月連続で上昇しました。図表1は米国株式(S&P500)、世界株式(MSCI世界株式指数)、日本株式(TOPIX(東証株価指数))の総収益指数(配当込みトータルリターン指数)の推移について1994年1月を100としてドルベースと円ベースで比較したものです。
米国株式(円)の総収益は約30年で27.0倍に伸びてきました(3月末)。これは、同じ期間における世界株式(円)の12.7倍、日本株式の2.8倍を大きく上回る市場実績です。時期により優劣が一時的に変わっても、S&P500がリスク(リターンのブレ)を加味した長期リターンではドルベースでも円ベースでも世界株式や日本株式に対して優勢だったことが分かります。
ただ、短期的には4月入りして米国株式は調整モードの兆しを見せています。
3月29日に発表された2月・PCEコア価格指数の前年同月比伸びは+2.8%と市場予想通りだったものの、ISM(全米供給管理協会)が1日に発表した3月の製造業PMI(購買担当者指数)は市場予想に反し好不況の分岐点(50)を上回り活動拡大を示しました。
パウエル議長などFRB(米連邦準備制度理事会)高官に「利下げを急ぐ必要はない」とややタカ派的な発言が相次ぎました。
先物市場が織り込んできた「早期利下げ期待」は後退し、債券市場の長期金利(10年国債利回り)は一時4.42%まで上昇。株式バリュエーション悪化(割高感)が意識され、テック系グロース株を中心に株価の重荷となりました。株式市場は、5日に発表される3月・米雇用統計と債券市場の反応(金利変動)を警戒する動きとなっています。
<図表1>長期視点では「円建て米国株式」のパフォーマンスが優勢