米FRB幹部「利下げ先送り、回数減が適切」と発言

 3月の外国為替市場のドル相場は、日本銀行の早期マイナス金利解除の思惑からドル安円高で始まり、上旬から中旬入りにかけて、1ドル=150円台から146円台へと円高が進みました。

 日銀の18,19日の金融政策決定会合で、マイナス金利解除など17年ぶりの利上げが決定されましたが、市場では今後も金融緩和環境が続くとの思惑が予想以上に強まりました。27日に一時151円97銭を付け、34年ぶりとなるドル高円安水準となり、3月の取引は151円台前半で終えました。

 4月に入り、日本政府による円買いの為替介入への警戒感から1ドル=152円は抑えられていますが、151円台の底堅い動きをしています。

 この日銀のタカ的(利上げ)ハト派(金融緩和継続)姿勢に対して、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)はハト的(年内利下げ示唆)タカ派(景気・物価の強気見通し)姿勢を維持しています。日銀のタカ的ハト派、FRBのハト的タカ派姿勢が変わらない限り円売り・ドル買い地合いは続き、ドルは4月も底堅い動きになりそうです。

 そして、3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で示された米経済の強気見通しと、年内3回の利下げ予想との整合性が維持される展開になるかどうかが鍵を握ります。米経済が堅調に推移した時でも、FRBは年3回の利下げの想定を維持するのかどうか注目です。今後の経済指標で明らかになってくると思われますが、もし、利下げ時期の後ろ倒しや利下げ回数が減る場合は、ドル買いに勢いが付き、円安・ドル高が長引く可能性があります。

 4月は、この日米それぞれの金融姿勢に変化があるかどうか見極める月になりそうです。3月末から4月初めにかけ、その変化をにおわすFRB幹部の発言や経済指標の発表が相次ぎました。

 まずFRBのウォラー理事が27日に、最近の期待外れの物価指標が利下げを遅らせる根拠になっているとの認識を示し、「全体の利下げ回数を減らすか、さらに利下げを先送りするのが適切だ」と述べています。ウォラー理事はFRB内でタカ派として知られますが、利下げが適切だとハト派寄りになっていたのですが、ややタカ派寄りに修正した発言でした。

 そしてFRBのパウエル議長もFOMC後の記者会見ではハト派寄りの発言をしていましたが、29日には「利下げを急ぐ必要はない」と述べています。最近の経済指標を受けて、FRB内で利下げ時期を慎重に検討する動きが出てきているのかもしれません。ただ、両者とも利下げそのものを否定しているわけではないようです。

 また、4月1日に発表された3月ISM(米サプライマネジメント協会)製造業景況指数が市場予想を上回る50.3となり、好不況の分かれ目となる50を2022年9月以来、1年半ぶりに上回りました。

 米国の製造業の生産が急回復し、新規受注が増加したことが指数上昇の背景にあるようです。生産回復が続くのであれば、利下げ時期は後ろ倒しになって、利下げ回数も減る可能性が浮上してきます。もしそうなれば、高い金利環境と円安地合いが長引く可能性が高まります。