通貨当局の防衛ラインは1ドル=152円?介入なら円急騰も
現在の為替相場は、1ドル=151円台で足踏みしている状況です。日本政府の通貨政策の実務を取り仕切る財務省の神田真人財務官が3月に現在の円安進行は「投機的」と指摘し、「あらゆる手段の準備はできている」と強い姿勢でけん制しました。
27日には、財務省、金融庁、日銀による三者会合が開催され、市場では一段と為替介入への警戒感が高まりました。ただ、こうした通貨当局による実際の円買いを伴わない口先介入だけでは円高への方向転換は難しそうです。
しかし、2022年9月に実施された為替介入の流れを振り返ると、1ドル=152円を超えると、実弾が出てくるかもしれないため、警戒する必要はありそうです。
参考として、2022年9月22日のドル売り・円買い介入を振り返ってみます。9月7日に1ドル=144円99円銭を付けた後の8日に三者会合が開催され、神田財務官が「(為替介入などの対応は)スタンバイな状態だ」と警告していたこともあり、介入警戒感から9日には141円台へ円高になりました。
しかし、21日のFOMCで米金利見通しが上方修正されたことから再び円売りが強まり、日銀が22日の金融政策決定会合後に金融緩和維持の強い姿勢を示したことから、145円90銭を付けました。その直後、円買い介入が実施され140円台に円は急騰しました。これらの動きから8日の三者会合で1ドル=145円台乗せで円買い介入が協議されたことが推測できます。
鈴木俊一財務相は現在の1ドル=151円台の為替水準について、「具体的な防衛ラインはない」と明言していますが、今回も三者会合で1ドル=152円の防衛ラインが協議された可能性も推測できるため、152円台に乗せた場合の円買い介入は警戒する必要がありそうです。
しかし、介入の実弾が出ても日米の金融環境が変わらない限り、再び円安となり、介入警戒感から円安進行のスピードが緩やかになっても根強い円売り意欲は続くことが予想されます。
2022年9月は、結局1ドル=144円台でその月を終えています。10月には、再び円安となり、152円台手前まで円安が進んだところで、2回目の円買い介入が実施されました。
この10月21日の介入金額は5.6兆円で、一日あたりの規模としては1991年4月以降の円買い介入で最大でした。この介入で1ドル=145円台の円高となりましたが、149円台に戻ったため、週明けの24日にも円買い介入が実施され、145円台の円高になりました。しかし、再び1ドル=149円台に戻り、148円台で10月を終えています。
その後、米国の要因(物価鈍化が鮮明、利上げペースの鈍化示唆)によって、2023年1月には127円台まで円高に傾きましたが、その年の10月には、日米金融政策の違いが意識され再び1ドル=151円台の円安になりました。
これらの動きから2022年の介入の教訓として留意しておくことは、
- 通過当局は防衛ラインを否定しているが、やはり設定している可能性があり、三者会合後には特に警戒する必要がある。今回は1ドル=151円台で三者会合が開催されているため、152円が防衛ラインとなる可能性が推測される。
- 大規模介入、連続介入、介入の有無を明らかにしない覆面介入(2、3回目は公表せず)を実施していることには留意。特に覆面介入は、市場を疑心暗鬼にさせるため、動きづらい相場が続く可能性がある。
- 介入による効果は、瞬間的には5円から6円の円高であり、効果の持続期間も短い。
- 円安地合いを生み出している日米金融環境が変わらない限り、円安地合いが続く可能性が大きい。
現在、1ドル=151円台で足踏みしていますが、早晩、152円は超えそうな気配です。152円を超えた後に円買い介入があった場合の対応は以上のような点を考慮して準備しておく必要がありそうです。