日経平均は長期的に上昇基調、下がったら押し目買いのチャンス

――日経平均の今後の見通しは?

 日経平均は当面4万円台に乗せては跳ね返されることを繰り返すと思います。これまでも2万円台、3万円台に乗せた時ももみ合いが続くレンジ相場がしばらく続きました。5,000円くらい下落する調整もありました。今回も半年くらいはもみ合いが続き、5,000円くらいの調整は十分あり得ると思います。

 もちろん米国株が大きく崩れたら、下落幅が5,000円よりさらに膨らむ可能性もあります。

 ただ、5,000円や6,000円くらいの調整だったら、日本株にエントリーしやすくなります。押し目があると投資をしていない個人の方も投資の世界に入ってくると思います。そうした調整を越えれば、次は5万円を目指す相場になっていくと思います。日本株に関しては順張りのスタンスを持っていたらいいし、大きく下がったら押し目買いのチャンスです。

図:日経平均株価(225種)の推移

――日本株の急上昇を支えたのは海外投資家ですが、日本株が海外から魅力的に映るのはなぜでしょうか?

 日本市場は流動性が大きいし、市場規模もそれなりにあります。これまで割安に放置された銘柄もあり、円安で買いやすくなっていることもポイントです。

 東京証券取引所による市場改革も好材料です。東証は「資本コストや株価を意識した経営」を昨年3月から上場企業に呼び掛けていますが、コーポレートガバナンス(企業統治)が良くなって、株価やEPS(1株当たり純利益)の上昇という形で成果が表れてきています。株主還元を促す動きも生まれ、昨年の自社株買いは9兆円を超える規模にまで大きくなりました。 

 ただ、日本株で上がっているのは大型株とバリュー(割安)株です。日本の場合は半導体以外のグロース株は厳しい状況です。新興株や中小型株は海外投資家の目に触れにくく、株価はなかなか上向いていません。個々の企業の業績や成長性の問題というより資本の流動性の問題です。日経平均やTOPIX採用銘柄の方に買いが入りやすい構造です。

――エミンさんは、日経平均は2050年には30万円になると発信してきました。改めて日経平均の長期的な見通しはどうでしょうか?

 日本株は一時的な調整はあっても、中長期では上がっていくと思います。米中の新冷戦で日本の地政学的な位置付けが変わってきました。半導体などの製造拠点が台湾から日本に移り、海外資本も中国から日本への投資に移行してきています。

 それにインフレで名目値が上がっていることも上昇要因となります。円安が速いペースで進めば、もっと早くに30万円に到達する可能性もあります。

――日本の近くには北朝鮮やロシア、中国など非民主主義的な国があります。台湾有事などが起きる地政学リスクもありますが、そのあたりのことは懸念材料にならないでしょうか?

 そうした地政学リスクは日本だけではありません。どの国にも存在しています。唯一ないと言っていいのは米国だけです。取り立てて日本のリスクを心配するほどではありません。

――日本経済は少子高齢化で労働力人口の減少がネックになります。AI(人工知能)や省人化への投資で、乗り越えられますか?

 AIといっても企業は設備投資をしないといけません。運転手が足りなければ自動運転の自動車を導入しないといけないし、政府は早く自動運転が普及するように音頭を取らないといけません。

――新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)も今年1月から始まりましたが、エミンさんは日本の個人投資家は本格的に買い向かっていないと指摘されています。日本人が日本株を買わないのはなぜでしょうか?

 日本株の買い越しは外国人中心で、日本の個人投資家はあまり買っていません。

 理由は日本株への信頼がないからだと思います。円安傾向が続いていて、米国株の方が円安分のもうけも得られるのでお得ということになります。円高に動いたり、米国株が下がったりして米国株が危険だと認識が広まれば、より日本株が注目されるかもしれません。