年内1ドル=160円まで円安進行も、米金融政策だけ見ればいい

――日銀のマイナス金利解除などの決定後、結果的に円安に振れました。通常は円金利が上がることは円高材料になりやすいですが、円安是正の狙いも感じられなかったでしょうか?

 日銀はマイナス金利を解除しても緩和的な金融環境が続くと今回の会合前から丁寧に地ならしをしてきました。円安を是正したいのではなくて円高にならないようにしたとしかみえません。

 日銀の政策修正は、為替相場のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)からすると、ノイズレベルのものだと思っています。為替相場の先行きを分析する上では、米国の金融政策の動きを見ていればいいと思います。

 為替相場が決定内容の公表が、円安に振れたのは日銀のメッセージを正直に受け取ったからだと思います。為替はうそをつきませんから。

――円相場の水準は今後どのくらいになると思いますか?

 為替は具体的なレートよりも、方向性を見た方がいいです。円安の方向は変わりません。米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)が今年、利下げする回数はせいぜい2、3回くらいです。日銀が大きく政策修正をしないことはほぼ確定しているので、日米の金利差が本格的に縮小することはありません。ずっと円安だと思っています。

――円相場はここ2年ほど、1ドル=151円台後半まで円安ドル高が進んでは円高に転じることを繰り返してきました。日銀のマイナス金利解除決定後に再び151円台後半まで円安に振れましたが、今年はこれよりもっと進みますか?

 今の水準からだと年内に1ドル=160円くらいまで円安になると思っています。ただ、米国株が10%や20%値下がりしたら、逆にドルが急速に下落するリスクがあります。

 そのため、1ドル=150円よりも円安になってから米国株投資をするのは為替リスクが大きいと思います。その場合、為替ヘッジをしていない個人投資家は大打撃を食らってしまいます。ショート(売り)ポジションを持っているならいいですが、機関投資家と違って、個人投資家は為替ヘッジをしていないので、リスクが大きいです。

図:円相場の推移

――円キャリートレードの巻き戻しが起きて円高になる心配はないでしょうか?

 日本の事情でというより、世界経済で大きなリスクオフとなるショックが起きないと、キャリートレードが巻き戻されて円高になるということにはならないと思います。