8年ぶりに到来した「金利がある世界」
「中銀ウイーク」とされた先週、日本銀行はマイナス金利政策の解除を決定しました。3月19日のことでした。翌営業日の21日には、「0〜0.1%程度で推移するよう促す」とした無担保コール翌日物金利は0.074%となり、以下の通り2016年3月以来のプラス圏に浮上しました。
図:無担保コール翌日物レートの推移(月末、2024年3月は21日の確報値) 単位:%
植田和男日銀総裁はマイナス金利解除の背景の一つに、賃金と物価の好循環が安定的・持続的に見通せる状況になったことを挙げました。マイナス金利政策などの景気回復を目的とした大規模な金融緩和は「その役割を果たした」とも述べました。こうしておよそ8年ぶりに「金利がある世界」が到来しました。
マイナス金利政策解除は、期待と不安の両面をもたらしています。マイナス金利政策解除は日本経済が回復していることの証であり好ましい、今後は市中のさまざまな金利が上向いて銀行などの金融機関の収益が改善しそう、物価高の一因である円安が是正されそう、などの期待が膨らみつつあります。
一方で、市中のさまざまな金利が上昇した場合は個人や企業の資金調達が難しくなってしまう、などの不安の声も聞かれます。今回の日銀のマイナス金利解除決定で、日本は今「悲喜こもごも」状態にあるといえます。
金利動向と関りが深いと考えられている金(ゴールド)相場の今後の価格動向において、とある思惑が浮上しています。マイナス金利解除によって円預金の妙味が増す期待が高まり、円建て金(ゴールド)を保有する妙味が相対的に低下するのではないか、という思惑です。
マイナス金利時代、金(ゴールド)は注目を集める機会を得ていました。金(ゴールド)が背負っている金利が付かないというデメリットが薄まるためです。しかしマイナス金利解除によって、薄まったデメリットが元に戻ってしまうのではないか、という思惑が浮上しています。今後、円建て金(ゴールド)を保有する妙味は低下してしまうのでしょうか。