長期低迷の元凶「まことしやかな悲観論」
足元、プラチナと同じ貴金属の金(ゴールド)は史上最高値水準で推移しています。それに追随し、銀も記録的な高値圏で推移しています。パラジウムはコロナショック後に一時、記録的な高値に達する高騰劇を演じました。四つの貴金属のうちプラチナだけが、急騰していません。このことはプラチナが固有の要因で急騰できなかったことを示しています。
プラチナはこの10年弱、長期低迷状態にありました。なぜ、プラチナは低迷していたのでしょうか。以下の図の通り、2015年に発覚した「フォルクスワーゲン問題」を機に、多くの金融関係者や投資家の間で、プラチナに関するまことしやかな悲観論が膨れ上がったことが、最も大きな理由だったと筆者は考えています。
図:プラチナの需要内訳とフォルクスワーゲン問題
2015年9月、ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン社が違法な装置を使って排ガス浄化装置のテストを不正にくぐり抜けていたことが明らかになりました。これにより、同社の主力車種であるディーゼル車を否定する動きが強まり、同車の排ガス浄化装置に使われるプラチナの需要が激減する、プラチナ価格が急落するなどといった、まことしやかな悲観論が膨れ上がりました。
後述しますが、プラチナの自動車排ガス浄化装置向けの需要は急減しませんでした。しかし、プラチナ相場は長期低迷を強いられました。まことしやかな悲観論が、悲劇を生んだのです。ですが今、悲劇が生んだプラチナの「長期低迷」という特徴が、株式や株式に連動する投資信託・ETFをメインに運用する投資家を「横揺れ」から守る可能性が浮上しつつあるのです。