トランプ前大統領の「返り咲き」を市場はどう織り込むのか

 米国市場ではS&P500種指数(S&P500)が2024年に入ってから今週12日まで17回にわたり過去最高値(終値)を更新しました。業種別にみると、最近1カ月は「素材」、「エネルギー」、「金融」、「公益事業」、「資本財サービス」などに属するバリュー株のリターンが「IT(情報技術)」を上回り、循環物色がみられる点が特徴となっています(3月13日)。

 パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が前週の議会証言で「経済が予想通りに進展すれば、2024年のある時点で利下げを開始するのが適切になるだろう」と述べたことも市場の支えとなっています。ただ、昨年秋以降のS&P500は上昇ピッチが速かったため、利益確定売りが先行する場面も警戒されます。

 こうした中、3月5日の「スーパーチューズデー」(共和党と民主党それぞれの予備選・党員集会集中日)を終え、民主党ではバイデン現大統領が指名を確実にし、共和党ではニッキー・ヘイリー氏(前国連大使)が撤退を表明したことでトランプ前大統領(以下トランプ氏)が指名を確実にしています。

「もしトラ」(もしトランプ氏が当選したら)リスクが「ほぼトラ」(ほぼトランプ氏当選の見込み)リスクに変化し、株式市場への影響を不安視する投資家もいるようです。

 しかしながら、図表1が示すとおり、1970年以降に「現職大統領が再選を目指して失敗した(再選されなかった)年」は4回ありましたが、米国株式(S&P500)は暦年平均で16.8%上昇してきた実績が検証できます。

 また、実際にトランプ氏が大統領を務めた2017年から2020年までの4年間でS&P500は67.8%上昇した経緯があります(年平均騰落率は+16.9%でした)。バイデン大統領再選失敗(=トランプ氏の返り咲き)がもたらす市場へのリスクを過度に不安視すべきではない点にも留意したいと思います。

<図表1>「現職大統領・再選失敗年」でも米国株は堅調に終わった

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成