OpenAIの動画生成AI「Sora」の恩恵銘柄、まずはハードインフラとアプリユーザー
米OpenAIによる「Text-To-Video」(テキストを動画に変換する)型の動画生成AI、「Sora」のリリースを受け、BOCIは「AIが2024年の最大の投資テーマになることを確信した」としている。Soraの動画生成能力は極めて高く、エンターテインメント用アプリケーションとして大きな可能性を秘める。OpenAI~エヌビディアのサプライチェーンにおいて、中国系上場企業の存在感は小さいが、Text-To-Videoのブレークスルーがハードウエア・インフラの需要増やエンドアプリケーションの活用を後押しし、膨大な投資機会をもたらすとみている。
SoraはPikaやRunwayのような既存のAIモデルを凌駕(りょうが)し、より長く(5秒に対して60秒)かつ高解像度の没入感のある動画を作り出す。また、異なるビデオアングルを自動生成し、3Dスペースにおける対象物の一貫性と周辺要素を含めた連続性を長く保持するという優れた能力を持つ。
Soraの登場による影響について、BOCIは動画、ゲーム、映画、広告などの業界がまず採用し、コンテンツ制作の生産性が大きく高まるとみる。AIの可能性はさらに広がり、企業のFOMO(SNSなどとつながらずに取り残されることへの恐れ)がAIインフラ投資の原動力になると予想。また、動画生成AIの次の段階では3D動画、あるいはインタラクティブ型3D動画に進化し、メタバースへの道を開く可能性を指摘している。
香港、本土株に目を向けると、初期段階ではまず、モデル開発者より、ハードウエア・インフラのサプライヤーやエンドアプリケーション・ユーザーに恩恵が及ぶとみる。うち香港・本土上場のハードインフラ・サプライヤーは、CoWoS(インターポーザ式の先進パッケージング技術)やHBM(3D積層メモリ技術の一種)関連ビジネスを手掛けるASMパシフィック(00522)、サーバーコネクタの鴻騰六零八八精密科技(06088)、AIサーバの受託開発製造(OEM/ODM)を手掛けるレノボグループ(00992)など。
一方、エンドアプリケーションのユーザーは、高品質のコンテンツを大量生産することで大きな恩恵を受ける見込み。主要銘柄にはゲーム最大手のテンセント(00700)、業界2位のネットイース(09999)のほか、キングソフト(03888)や、デジタルIP保護システムのヴォバイル・グループ(03738)などがある。
このほか、AIモデル開発者は百度(09888、米BIDU)やセンスタイム(00020)、科大訊飛(002230)など。ただ、高質のデータやAI CPUの不足、予算の制限に直面し、国産のハイレベルLLM(大規模言語モデル)はいまだ開発途上にある。中国国内でビジネスを展開する課金ユーザーの選択肢も、今のところ、ほぼOpenAI一択。BOCIは中国のLLM開発者にとっては、OpenAIのAI能力に追いつくことが2024年の最重要課題になると指摘している。