1月の金融統計は予想以上に好調、景気安定化への期待高まる

 中国では国内金融機関による新規融資と、実体経済の流動性を示す中国独自の指標「社会融資総額」(広義の与信・流動性)が1月にいずれも前年同期比で増加し、市場予想を上回った。前年同月実績が高かったにもかかわらず、新規の融資指標はさらに上向き、「中国政府が安定成長重視の政策スタンスを維持する」とのマーケットの期待を後押しした。

 中国人民銀行の発表によると、国内金融機関による人民元建て貸付残高の月間増加額は1月に4兆9,200億元。12月に前年同月比16.4%減少した後、1月には同0.4%の増加に転じた。社会融資総額も1月に6兆5,000億元と、前年同月の6兆元をさらに上回り、歴史的高水準を記録した。このほか、銀行の総貸付残高は1月末に前年同期比10.4%増と、12月末の同10.6%増からやや減速。マネーサプライM2は前年同期比8.7%増と、12月末の同9.7%増から減速した。社会融資総額の残高は9.5%増と、12月末と同水準の伸びだった。

 1月の社会融資総額が力強い数字となったのは、主に社債やオフバランスシートの資金調達、外貨建て融資が上向いたため。債券利回りの低下を背景に、新規の社債発行による正味調達額は1月に4,835億元と前年同月の1,638億元から急増。オフバランスの融資は2,523億元と前年同月のマイナス144億元から大きく上向いた。また、人民元相場の安定を受け、新規の外貨建て融資は989億元と前年同月のマイナス131億元から改善した。

 一方、非金融部門向けの人民元貸出残高増加額や新規の政府債、エクイティーファイナンスはいずれも前年同月比で縮小。うち政府債は地方政府による特別債(主にインフラ建設向け)の起債ペースの鈍化で、1月に2,947億元と、前年同月の4,140億元を下回った。エクイティーファイナンスは株式市場の低迷で2023年7月から縮小傾向が続いている。

 1月の銀行貸付残高の増加額のうち、非金融セクター向けは4兆8,400億元(前年同月は4兆9,310億元)。中でも個人向けの新規融資は前年同月の2,570億元から、9,800億元に急増。コロナ禍前の水準をほぼ回復した。旧正月前の資金需要や、前年同月実績の低さにより、短期、中長期貸し付けともに大きく増えた。

 半面、企業向けの融資増加額は1月に3兆8,600億元と、非常に高水準にあった前年同月(4兆6,800億元)から縮小。短期、中長期ともに緩やかに縮小したが、BOCIは企業向け融資全般、特に中長期融資が過去の実績に比べ、かなり高水準で推移したと指摘している。

 全体的に見ると、政府金融当局が円滑な資金供給を促している環境下で、1月の新規融資は相対的に堅調だった。BOCIはこれが市場の信頼感の向上につながり、1-3月期の経済成長にも寄与するとの見方。低インフレと内需の不足を考慮すれば、政府の金融政策スタンスは当面、緩和的であり続けるとし、さらなる政策金利の引き下げや、インフラ投資・製造業投資・不動産開発投資を支えるための構造的な金融政策ツールの活用に動く可能性に言及している。