毎週金曜日午後掲載
本レポートに掲載した銘柄:東京エレクトロン(8035、東証プライム)、アマゾン・ドット・コム(AMZN、NASDAQ)
東京エレクトロン
1.2024年3月期3Qは、0.9%減収、15.4%営業増益
東京エレクトロンの2024年3月期3Q(2023年10-12月期、以下今3Q)は、売上高4,636.62億円(前年比0.9%減)、営業利益1,324.60億円(同15.4%増)となりました。今1Qを底として業績は着実に回復、再成長へ向かっています。
アプリケーション別に見ると、中国向けのDRAMと成熟ロジック半導体用前工程装置の出荷が会社側の予想以上に活発でした。また、HBM向けを中心とするDRAM向けも好調でした。HBMの量産に不可欠なウェハボンディング/デボンディング装置は東京エレクトロンが過半数のトップシェアを得ていますが、HBM量産のための受注が急拡大しており、会社側想定の2倍以上の引き合いがあります。
地域別には、中国向けが今1Q1,539億円、今2Q1,829億円、今3Q2,172億円と増加が続いています。台湾向けは同639億円→399億円→463億円と回復しました。また、日本向けは同295億円→412億円→574億円と増加しました。一方、韓国向けは同767億円→674億円→582億円と高水準ながら減少しました。
表1 東京エレクトロンの業績
グラフ1 東京エレクトロンの売上高と営業利益
表2 半導体製造装置のアプリケーション別売上構成比と売上高(新規装置のみ)
表3 東京エレクトロン:半導体製造装置の地域別売上高
2.会社側は2024年3月期業績予想を上方修正した
今3Qまでの実績を見て、会社側は2024年3月期業績予想を前回の売上高1兆7,300億円、営業利益4,010億円から、今回は売上高1兆8,300億円(前年比17.2%減)、営業利益4,450億円(同28.0%減)へ上方修正しました。特に会社予想以上に中国向けの好調が続いていることが会社予想の上方修正の要因です。楽天証券では、当初より2024年3月期通期での会社予想の上方修正を予想していましたが、楽天証券予想以上の上方修正となったため、楽天証券でも2024年3月期は会社予想と同じ予想とします。
また、来期2025年3月期も会社側は中国向けが堅調に推移すると予想しています。これは中国において半導体自給率を高める動きがあるためです。HBM等のDRAM向けの投資も、WFE(Wafer Fab Equipment、前工程製造装置)では2024年暦年に前年比30~40%増と会社側は予想しています。NAND向けは、NANDの在庫調整の進展で2024年暦年の設備投資は横ばいの見通しですが2025年暦年には増加すると会社側は見ています。
一方で、ロジック/ファウンドリ向け(インテルのようなIDM(Integrated Device Manufacturer、設計、生産、マーケティング、販売を一貫して行う半導体メーカー)とTSMCのようなファウンドリ(半導体受託生産業者)向け)はAIサーバーが牽引役となるものの、AI半導体の生産ラインに余力があるため、2024年暦年の設備投資は微増で、本格回復は2025年暦年と会社側は見ています。会社側のWFE市場の見方を表5に示します。
ただし、私が見るところAIサーバーの需要が活況なので、楽天証券では2024年にもAI半導体向け設備投資が増える可能性があると予想します。
このような見方から、楽天証券では2025年3月期を売上高2兆3,000億円(前年比25.7%増)、営業利益6,400億円(同43.8%増)と予想します。前回予想から上方修正します。
表4 半導体製造装置のアプリケーション別売上構成比と売上高(新規装置のみ)(年度ベース)
表5 WFE(Wafer Fab Equipment、前工程製造装置)市場
3.今後6~12カ月間の目標株価を3万3,000円から4万6,000円に引き上げる
東京エレクトロンの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の3万3,000円から4万6,000円に引き上げます。楽天証券の2025年3月期予想EPS(1株当たり利益)1,044.7円に、2025年3月期の楽天証券予想営業増益率43.8%、想定PEG=1.0倍前後として想定PER(株価収益率)40~45倍をあてはめました。
引き続き中長期で投資妙味を感じます。